川平敏文のレビュー一覧
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序段の「つれづれなるままに」の「つれづれ」とは何か、というテーマを中心に据えて、徒然草の読まれ方が時代とともに変遷していく様を追いながら、現在主流となっている「つれづれ=退屈」という単一的な解釈に疑義を呈し、近い時期に作られた他の古典作品も紹介しつつ、優れた古典は多様な解釈が可能である点を明らかにしている。
正統派の解説書というよりは、教科書に載っているようなテーマからちょっと外れたようなもの、例えば恋の指南書の段とか、猫の化け物の段から読み取れる噺家との共通点などが紹介されていたりして、これはこれで結構面白かった。
「つれづれ」の言葉ひとつに対しても、大量の文献や解説書に誠実に当たっていることがよく分かり、まさに労作といえる一冊になっていると思う。 -
Posted by ブクログ
歴史もそうだが古典も解釈は日々変わる。徒然草の「つれづれ」の語の解釈を中心に著名な古典の位置付けがどのように変遷したかを追った一冊。
古典として日本人なら誰もが一度は学んだことのあるだろう「徒然草」。意味の確立されたかのような古典であっても実は解釈は時代により異なる。
「つれづれ」の解釈も孤独、寂寥、退屈と意味が広がるし、教科書には掲載されない恋の指南書的な章もあるという。単なる無常観とは異なる兼好法師の一面。実は兼好は太平記にも登場する。
最近の日本史ブーム、過去の歴史であっても解釈は日々変わっていく。古典についても同様。たぶん、兼好はそこまで深い意味もなくそこはかとなく書き記しただけであろうが、後世の学者はそこに教訓めいた物を求める。深く考えずに接する態度が本来の古典の鑑賞方法と個人的には思うのだが。
歴史と同様に古典も生きていることを実感した一冊でした。レベルが高く難しかったですが。 -
Posted by ブクログ
徳川吉宗につかえた朱子学の室鳩巣の生涯と人物像を、わかりやすく紹介している本です。
吉宗の文教政策をサポートすることになった鳩巣は、庶民のための道徳的訓戒をしるした『六論衍義』の和訳・編述にたずさわります。朱子学者として、道徳思想を正しくつたえたいと願う鳩巣と、幅広い人びとへの普及を重視する吉宗のあいだには、多少のへだたりがありました。また鳩巣は、吉宗の為政者としての能力を、家康になぞらえて高く評価していたものの、学問に対する吉宗の態度にかならずしも不満をいだいていなかったわけではありません。こうした両者の距離を明らかにしつつ、著者は鳩巣が学問にたずさわる者としての立場から、政治に対してどのようにかかわったのかということを検討しています。
また本書では、鳩巣の朱子学にもとづく思想についても論じられています。彼の最大のライヴァルは、彼とおなじく吉宗につかえながらも、朱子学を否定する立場を標榜していた荻生徂徠です。鳩巣は、林家や山崎闇斎、伊藤仁斎らに対しては批判を展開しているものの、徂徠の思想に立ち入ってその批判をおこなうことはありませんでしたが、赤穂浪士の討ち入り事件をめぐって、徂徠と対立します。また鳩巣の文学観にも、古文辞学をとなえた徂徠とその弟子たちとの大きなちがいがあったことを著者は解説しています。
最後に著者は、鳩巣の『駿台雑話』が戦前の教育のなかで大きな位置を占めていたにもかかわらず、戦後になってほとんど顧みられなくなったことに触れています。その理由として著者は、儒学的な道徳思想に対する評価が変化したこととともに、文学観においても近代的な発想がひろく受け入れられたことをあげています。