前野ひろみちのレビュー一覧
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ネタバレ――
きんてつ、の発音よ。
だいたい大きな駅のあたまには「近鉄」と付いているんだけれど、概ね主要な街ではその「近鉄」は発音されないで、逆にJRの方にわざわざ付いてない「JR」ってー冠詞を付けるのが習わしになっている。子供のころからそのことに疑問を感じていたオレは多分根っからの体制派なんだろう。
いやー、傑作である。ちょっと奈良について調べる機会があったのでここぞとばかりに読んでみたのだけれど、ほんとに。
モチーフの使いかたも、削り出しの方法も見せかたも抜群で、技術的なのは間違いないのだけれど…それ以上にちょっとしたワーディングとか、展開のさせかたとか言葉の飛躍がすっぽりとハ -
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ジャンルの振れ幅が凄い。
青春かと思ったら歴史、かと思えば説話集、さらには自叙伝。
奈良かと思ったらベトナム、あるいは中東、やっぱり奈良。
一見無茶苦茶、実際無茶苦茶なのだが、全てが高純度のまま混ざり合いつつ一体感を形成してる。
読んでいてとにかくリズムが良くて引っ掛かりがない。
もっと読みたいのだが、4作の短編しかないからこその高密度にも思うので悩ましい。
解説や対談、発売時の帯にもあるように、森見登美彦氏に似たものを感じる人は多いようで、私もその例外ではなかった。
私は奈良のことを殆ど知らないが、読んでいるうちに私も奈良の中に溶けてしまうような、不思議な感覚を得られる、短いながらも贅沢な作 -
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「奈良というところは地上でもっとも月に近い場所なのかもしれない」
その一文に、わたしはひどく共感した。
わたし自身、奈良の空に昇る月に惹かれて、この地に住むことになったようなものだから。
自叙伝とも自作自演ともわからないこの四作は、すべて現実と虚構の境目が曖昧模糊としている。
阿呆だった鹿はとつぜん神性をあらわにするし、蘇我入鹿はロケットランチャーをぶっ放す。
一作一作もそうだけれど、一冊としても「完成された現実のような嘘のような世界」が広がっている。
これは短編集などではなく、これ一冊がひとつの物語だ。
奈良はまことに不思議な土地だと思う。
畑を耕す気楽さで、数十センチ。そのすぐ下 -
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住んでる町の沿線がタイトルだったので購入。
作家の前野ひろみちさんのご実家は奈良の畳屋さんで
畳屋の後を継ぐより小説家を志した。
その時に書かれた作品なのだろう。
短編4作は、奈良を中心に書かれている。
男子にありがちは日常を少し風変りに描いた「佐伯さんと男子たち」
「ランボー怒りの改新」は少し難しくて途中で挫折しました。
男性には面白いかも?と思いました。
少し昔話チックで伏線が楽しい「ナラビアンナイト」
小説家を志し、実家の畳屋を出て一人暮らしをし、
そこで出会った佐伯さんと共に小説に没頭した生活を
書き綴った「近鉄と満月」
意外な展開が用意されていて、とても読みごたえがあった。 -
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突如現れた奈良の鬼才。野生のベテラン作家。実は、夜は短い京都の作家!?
などなど、事前情報の真否は置いておいて、奈良を舞台に幻想と妄想となんだかよくわからない歴史や某映画が入り混じる小説4編を、なんだか分からないまま、面白おかしく読みました。
そして、解説もなんだかよく分からない。
作者の正体(?)の物議から始まり、これだけ始終うさんくさが漂う本もないもんだなあ、と思いつつ、最後までノンストップで読める物語の運びや奈良の情景が脳裏に浮かぶ描写は、読書中ずっと心地がよい、理想の”本”だな。と感じます。
誉め言葉になっていないかもしれませんが、短編4つの区切りでさっくり読める上に、後半に行くに -
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初対面の人と森見登美彦の話で盛り上がった後、本作のことを教えてもらいました。知らないんですけど、この作家。唯一の著作なんですか。でも巻末には森見登美彦との対談付き!?
電車の中で本を読んでいる人は稀ですから、見かけると「何読んでるんですか」と聞きたい衝動に駆られます。もしも私がもうひとりいて、この本を読んでいる私を見かけたら、そのニタニタ具合が怪しすぎて「いったい何をお読みですか」とこらえきれずに聞いてしまうと思います。第1章の『佐伯さんと男子たち1993』はそんな感じ。
その佐伯さんが再登場する第4章の表題作に再びウキウキし、第2章の『ランボー 怒りの改新』では法興寺のフットボール大会に