エステル・デュフロのレビュー一覧
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ネタバレ今までなんとなくそうだろうと思っていたことが、実際のデータに照らすと実は間違っているということがこの本の中には多くでてきた。貿易はどの国にとってもメリットはもたらすわけではないし、移民は受け入れ国の雇用を奪うことはなく、常に賃金を下げるわけではない。移民は仕事があるからといってたくさんアメリカなどの国にやってくるわけでもない、など読んでいなかったら誤解したまま物事を考えてしまっていたので、なんとなく知っているというのは危ないと思った。全ての人間が人間らしく生きられるようにするという前提で考えることが、政策を考える上で重要だと思った。
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Posted by ブクログ
2019年ノーベル経済学賞受賞のインド系米国人とフランス人(おそらく夫婦)の著作。
様々な視点について最新の学説を紹介しながら、筆者qとしての見解を示している興味深い著作。特にUBIや格差是正などに強い想いがあるのだろうか、踏み込んだ提言が多かった。リベラル的な立場と言って良いと思う。
面白かった。再読したい。
以下、備忘的な学び事項。
国際貿易論: グローバルに貿易を行うことによってお互いの国が成長するという確かサミュエルソンの定理は、個別の産業のことに触れておらず、淘汰される産業への救済、他の成長産業への労働資本の移転が求められるが、必ずしも上手くいっていない事を最新の論説を紹介しながら解き明かす。トランプもあながち間違っていないということか?米国のラストベルトの荒廃も貿易による影響。ヒルビリーエレジーも紹介。
富の再分配: 米英の高所得者層の減税により所得格差が拡大した。昔は最大70%だった。レーガン、サッチャーの規制緩和、減税の功罪について紹介。筆者は否定的な立場。スウェーデンなどの北欧では、格差は拡大していない。UBIに対して賛成の立場。
人の選好は、社会的な立場などに影響される。トランプの出現の後に、公に人種差別する事を厭わない人が増える。共同体、村の繋がりが重視される社会では、協力し合うことが生活に必要。 -
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専門家の意見をどれくらい信用するか、というインターネット調査があり、1位は看護師で84%、最下位は政治家で5%だった。では経済学者はどれくらい信用されているだろう?
下から2番目、25%である。
経済に関係する政策には経済学者が必ず関与しているが、その結果としての社会の現状に、多くの人が不満を抱いているのだろう。
こういう社会では、分かりやすい政治家に人気が集まる。経済学者でも、分かりやすい経済施策で人気を集める人もいる。彼らの政策、市民に支持される政策は、往々にして良心的な経済学者の意見とは異なるものである。
人々から信用されていないかも知れないが、世の中には良い経済学もある。それはとても抑制的で、ベストな答えを与えてくれないが、誤った考え、偏見を正してくれる。例えば、移民を受け入れると失業が増えたり給与水準が下がったりするか?関税障壁をなくすと経済は成長するか?格差への影響は?
本書は、今の社会に重要な問題について、多くの経済学者の研究に基づき分かっていること、いないことを論じたものである。興味深いのは、経済学とは経済成長が善悪の基準と思っていたが、本書では人の幸せが究極目標として、施策の良し悪しを論じている点だ。後半からは特に、格差、所得の再配分、社会政策について、人に寄り添った論説が続く。
印象に残った一部を引用する。ある貧困撲滅団体のリーダーの言葉で「ここに来るまでの人生では、みんな施しをされてきた。誰も彼らには、君たちも社会に貢献してくれとは頼まなかったんだ」
一貫して言えるのは、幸せには尊厳が必要という極めて当たり前のことなのだが、実際に行われる政策で、どれだけこの観点が欠けているか…自分自身も、いつの間にか上から目線になっていないか、反省してみた。 -
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ネタバレ著者は二人のノーベル経済学賞受賞者。
原題は「Good Economics for Hard Times」とありますが、コロナ禍の今にあって、ちょうど米大統領選が佳境のころから読み始めたので、本書で取り上げられているテーマと、日々目にするニュースやSNSの投稿などとシンクロすることも多く、政治と経済の今についての理解を深めるには良書であったと思います。
経済成長
移民
自由貿易
地球温暖化
社会保障
格差
お金だけで解決しないことや、さまざまなトレードオフが生じること、マクロな経済モデルの想定通りには行動しない人や企業、そうした複雑系の中で、良い方向に向かうための本質とは何かを二人の経済学者が力説されています。
全体を読み通した上で、最後の最後にノーベル経済学賞受賞した経済学者が語る一文(最終章の最後の一文)がとても印象的でした。
”経済学は、経済学者にまかせておくには重要すぎるのである。” -
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開発経済学の研究者として2019年にノーベル経済学書を受賞したアビジット・V・バナジーとエステル・デュフロ夫妻が自身が長年研究してきた社会格差、人種差別(と個人の移ろいやすい嗜好性の問題)、移民、環境破壊、自由貿易などのテーマを一般人向けに平易にまとめた一冊。
テーマは数あれど通底しているのは、「一見、絶望ばかりに見える問題に対して、経済学が解決できる部分は確実にあり、希望を捨ててはいけない」という点である。真摯な研究者として、経済学を一つのツールとして、確実な課題解決に結びつけるための実践がまとめられており、ランダム化試験などの統計的手法をフルに活用しながら、本当に問題解決につながる政策を決定し、政治に反映させていくというプロセスの重要性を学べる良書。 -
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ネタバレ第1章 経済学の信頼性
職業の信用度で、一位は看護師、最下位は政治家、下から二番目は経済学者。
経済学は医学と同じで、これが正しいと断言できる者がない。
第2章 移民について
移民は自然災害や戦争で起きる。経済的インセンティブだけではあまり増えない。
マリエル難民事件=大量の移民があっても、雇用には悪影響を与えない、ことの実証。キューバからマイアミに大量の移民が押し寄せた事件。労働市場は、単純な需要と供給曲線の結論には従わない。
1,移民がお金を使うので、労働の需要も増える。
2,機械化の進行が遅れるため。
3、増えた労働者を効率的に活用するべく、生産工程を変える。
4,既存労働者の労働と競合せず、補完する。やりたがらない仕事をやってくれるおかげで、別の仕事ができるようになる。
移民のほうが野心と丈夫な身体がある。その2世は活躍する。ジェフベゾス、スティーブジョブス、フォード、など。
人を雇うことは、普通の仕入れとは違う。首にすることは簡単ではない。そのため、無作為には雇わない。ただやすければいい、ということではない。従って、受け入れ国の労働者をそのまま代替することはない。
高技能移民の場合のほうが、既存の労働者の代替になりやすい。プラスマイナス両面があり得る。
移民は大群にはならない。移民するにはコネクション、ネットワーク、人のつながりが必要。何もないとレモン市場のように、粗悪品だけが市場に残るように思われて移民に踏み切れない。
発展途上国では、インフラ整備や都市開発の予算が限られているため、一部だけが高い家賃になり、それ以外はスラム化する。都市化は、田園都市を目指しやすいため、規制をかけて高層アパートを作らせない。その結果、周辺にスラムが広がる。生まれ故郷は心地よく、助け合いがあるため、魅力的な仕事があるとわかっていても、都市に出てくる人数も限られている。農村部の人にとって都市は不確実性の塊。
家族の面倒を見て貰うため、わざと男の子に高い教育を受けさせないこともある。
どんな産業でも企業は群れる。群れた方が、宣伝、雇用などで有利。
強制的な移民政策がかつてはあった。都市部を有利にすることで労働力を確保しようとした。
慣れ親しんだ故郷を離れることは、ハードルが高いことである。 -
Posted by ブクログ
なぜ未熟練労働者の賃金が移民の流入で押し下げられないのか。
①新たな労働者の流入によって労働需要曲線が右へ移動するから。
なぜなら、その人々がお金を使うから。
その結果として賃金は押し上げられ、労働者の供給拡大の影響を打ち消す。
よって賃金水準も失業率も変化しない。
②機械化の進行を遅らせるから
③雇用主が流入した労働者を効率的に活用するべく、生産方式を再編成するから。
雇用主は企業内の賃金格差があまりにも大きくなることに否定的。
なぜなら労働者の不満が溜まり生産性が上がらないから。
だから賃金が安いからと言って移民に仕事が取って代わられる訳ではない。
高技能移民は賃金水準を押し下げる可能性が高い。
なぜなら外国出身の有資格者を相場より安い賃金で雇えるとなれば、企業はそっちを優先する
貿易は国民全員の生活水準を向上させるのか?
①国際貿易から得られる利益は、アメリカのような規模の大きな経済にとっては極めて小さい。
②規模の小さい経済や貧しい国にとっては貿易の利益は潜在的に大きいものの、市場解放を行なうだけでは問題は解決しない。
③貿易利益の再分配は口で言うほど簡単ではない。
減税により経済成長が起こる証拠はない。
とくに所得上位10パーセントに対する減税は効果ない
イノベーションは無からは生まれない。
経済的なインセンティブがないと生まれない
ヨーロッパが植民地を開拓していた時代に初期入植者の死亡率が高かった国は、今日でもうまくいっていない。
なぜなら、そのような国にはヨーロッパ人は入植せずに搾取的な植民地を建設し、強権的な制度を導入したから。
対照的に、植民地にならずほぼゼロからのスタートとなった国々(ニュージーランドやオーストラリア)ではヨーロッパ流の制度が構築され、それが近代資本主義の基礎となった。
入植者の死亡率が低く今日では事業環境の整った国は、そうでない国よりはるかに豊かになる。
産業集中度の高い部門ほど、労働分配率は下がっている。(増えた利益を株主に分配するため)
賃金がGDPと同じペースで増えない理由は産業集中の進行である程度説明がつく。