パオロジョルダーノのレビュー一覧
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pp.80-81
「科学に置ける聖なるものは真理である」(『シモーヌ・ベイユ選集III』冨原眞弓訳、みすず書房)哲学者のシモーヌ・ベイユはかつてそう書いた。しかし、複数の科学者が同じデータを分析し、同じモデルを共有し、正反対の結論に達する時、そのどれが真理だというのだろう。
今回の流行で僕たちは科学に失望した。ただ僕らは忘れているが、実は科学とは昔からそういうものだ。いやむしろ、科学とはそれ以外のかたちではありえないもので、疑問は科学にとって真理にもまして聖なるものなのだ。今の僕たちはそうしたことには関心が持てない。専門家同士が口角泡を飛ばす姿を、僕らは両親の喧嘩を眺める子どもたちのように下か -
Posted by ブクログ
コロナについて書かれたエッセイと言うことで、気になって買ってみた。筆者はイタリア在住のエッセイストと言うことで、その点も気になってはいた。
エッセイを読み始めてまず感じた事は、コロナが始まってまだ2年しか経っていないと言うのにこれが始まった当初のことがすごく懐かしく思えたことだ。 それだけ、このエッセイはコロナ当初の空気感をよく切り取って表現している。
ただ文章全体がエモいのではなく、筆者の趣味として数学があるからか、文章にはどこか理系的というかロジカルな雰囲気を感じた。
印象に残ったのは、人間の視点ではなくウィルスの視点で世界を見てみること。
人間による自然破壊の結果、ウィルスが自然 -
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ネタバレ今まさに起きている未曾有の出来事、コロナウィルスについて科学的視点からの説明があり、混沌としたものを少し理解できたように思えた。
またウィルスを取り巻く報道のあり方についても揶揄しており、モヤモヤしていたものが少しスッキリした。
動物がどんどん絶滅したり、自然破壊が進む中で、唯一発展し、大移動を常にしている人類がそもそもウィルスにとっては絶好の住処であるというのは、まさに目から鱗で印象的であった。
またコロナ禍をネガティヴばかりに見るのではなく、元に戻ってほしくないものリストを考えるなどこの機会を生かそうとしていたのは、参考にしたいと感じた。
withコロナとなり、はや2年。
人生で世界中 -
Posted by ブクログ
この本が出たのは、2020年4月。
まだまだもやもや時期なのに、的確な指摘だと思う。
コロナ禍で日常が中断された。
時間が止まったように。
コロナを止めるにはワクチンが必要。
中国武漢市の市場では様々な野生動物が生きたまま、互いに密接した状態で扱われていた。異種混合は病原体が伝染しやすい。この病原体がなぜ発生したのか?つきとめることは、重要な疫学のミッション。
秘密実験の研究室からアンプルがひとつ盗まれた説。
万里の長城は月から見えるという噂があるが、確かに巨大だが幅がひどく狭い。月から見えるはずがない。
フェイクニュースは広まりやすい。無数の憶測がさらに増えて不正確な思考の群れも無限に広がる -
Posted by ブクログ
ネタバレ心に消えない傷を負った少年と少女が惹かれあう、少年は天才的な数学の才能がある、というあらすじに加えてタイトルが素数たちの孤独。うまいなと思う。高尚な解釈をする事も出来るけど、個人的には『村上春樹+森博嗣÷2』という公式で良いかなと思った。
「孤独」とか「世界とうまくなじめない僕(私)」という世界観に加えて、数学の才能を持った少年が双子素数に二人をなぞらえ、「276088996665はアリーチェの数字」と二人の関係を数学に重ねる場面にキュンキュンした人は、絶対若かりし頃に「数字の中で、7だけが孤独ですもの」にキュンキュンした人だろうなと思う。大人になるとムズムズします。はい。この場面以外数学関係 -
Posted by ブクログ
双子素数を題材にしており、たびたびすれ違う様はあっても隣り合うことはない。まさに双子素数が無限に循環するがごとく、物語が切なく進められていくようであった。双子素数については多くの数論学者が無限に存在するだろうと予想しているが、数学上は未だ有限か無限かは解決されていない。この問題に対し、この小説は一つの答えを出しており、それが彼ら主人公2人が出した結論なのだと考えられる。ある意味、循環を断ち切った彼らは、「素数ではないもの」になれるのかもしれない。双子素数という題材を抜きにしたら陳腐になってしまうかもしれないが、今一度孤独について考えさせられたように思う。