刑部芳則のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
江戸時代の幕引きから明治にかけての激動の中、京の公家の動きと視点から捉えなおす異色の一冊である。個々の事象について、非常に細かく調べられたものになっている。これだけでも大きな研究の成果と言えるだろう。
室町時代後期から戦国時代にかけて窮乏を極めた公家は、江戸時代の秩序の中でひとつの安定をみて、それから200年以上もその状況を享受してきた。政治的な力を失った存在として記述されてきたものである。ところが、幕末の混乱期に至って、その存在が大きく表に出てきた。このことをどのように理解すればよいのか、それまでの経緯とのギャップ・落差が大きすぎて、感覚としてなかなか認識できないものではないだろうか。