刑部芳則のレビュー一覧
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朝ドラ『エール』風俗考証の方による古関裕而評伝。古関さんの曲は昔藍川由美さんのアルバムで聴いてから旋律の美しさが耳に残りずっと気になっていました。
意外だったのは、古関さんには天才大物作曲家のイメージがありましたが、戦前(1930年代~1940年代初頭)に本格ブレイクするまでに実に時間を要していたことです。一応「船頭可愛いや」はヒットしていますが(朝ドラでも古関さんをモデルにした裕一青年がヒットを出すまでの不遇ぶりが描写されていました)、頁をめくってもめくってもなかなかブレイクしない! という状況が延々と続くので、その辺りは読んでいてなかなか辛かったです。
天才音楽家が、音楽の芸術性と大衆性と -
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2020年上半期朝の連ドラの主役古関裕而の評伝。筆者は番組の風俗考証を担当。発刊に至る運命を感じる。
さすがNHKの威力。同様な書籍が多く出版されている。ドラマにはまって辻田真佐憲の文春新書版に続き本書を読む。どちらも甲乙付け難い出来。自伝その他出典が同じだからだろう。また共に筆者が歴史学者であるし。若いのに良く知っている。
本書の筆者は本書の執筆のためという以前から歴史を流行歌で学んでいたという。確かに時代の空気を学ぶのに流行歌ほどふさわしいものはないだろう。
筆者の知識、趣味が先にあり、ドラマが後で付いてきたようである。
軍歌と応援歌の共通性、古関と古賀の比較などは慧眼。
この作者 -
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近代以降の女性の服装の変遷 。和装から洋装へ。
なかなか進まなかったのね。
今は卒業式でおなじみの袴が、和装と洋装とをつなぐ役割をしていたというのも面白い。
やっぱり、動きやすくても似合わないし高いし、ではなかなか浸透はしづらいんだな。
トリビアの泉で研究者が言ってたことがいい加減だと批判してあったりして可笑しい。確かに事実そうなら批判の通り。
あとがきを読んで、批判の勢いに納得。学会がほんとにこんな感じならハラ立つだろうな。
戦時下の標準服については、知らないことばかり。テレビで見る皆同じ格好は、制服ではなくて標準服…それに強く推されたモンペ…好きな服を好きに着られるのが当然と思っている -
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<目次>
第1章 幕末の海外渡航と洋服との出会い
第2章 欧化政策の裏と表
第3章 衣服改良運動
第4章 服装改善運動
第5章 昭和モダニズムの服装
第6章 国家総力戦と服装
第7章 洋服を着る時代の到来
終章
<内容>
家政史の研究者に真剣を振り落とした感じ(家政史研究者は痛くも痒くもないらしいが…)。著者の研究によれば、日本の洋装は、女学校の制服に起因し、徐々に彼女たちが大人になっていく過程で浸透していくようになった。第二次世界大戦時に、活動のしやすさもあり、普及が広まり、戦後は後戻りすることはなかった。という話らしい。関東大震災や日本橋白木屋の火事は、さほど関係のないとい -
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朝ドラの「エール」の時代考証も担当している著者による古関裕而の評伝。昭和という激動の時代背景とともに興味深く、かつ平易に叙述されている。
朝ドラのほうは現在ちょうど「紺碧の空」を作曲したところまで進んでいるが、史実にしたがうとこれから「船頭可愛や」のヒット、そして「大阪タイガースの歌(六甲颪)」「露営の歌」のヒットと続いていくことになる。
朝ドラで古関が作曲した数々の「戦時歌謡」のあたりをどう描くかは注目だが、この「戦時歌謡」こそ、古関が世に出るきっかけとなったと評価している。「戦時歌謡」とはいわゆる軍歌である。しかし、軍歌というと戦意高揚のために歌わされた感が強いが、著者は「戦時歌謡」と -
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「古関裕而の昭和史」(辻田真佐憲著・文春文庫)に続いて、こちら刑部芳則氏の「古関裕而」(中公文庫)も読んでみた。
刑部氏は1977年生まれで43歳だが、少年時代から平成の歌などは嗜好に合わず、日本史が好きなので、では昭和10年代に少年だった人たちはどんな歌を聴いていたのかな、という思いで中学3年の時に軍歌集CDを買ったところ1曲目にあった「露営の歌」を聴いて、なんて素晴らしい歌か、と衝撃を受けたというのだ。この、ある曲を聴いて「衝撃を受けた」という感覚は分かる。それは遥か昔の歌であっても衝撃を受けることはある。
さてこちらの本は古関裕而の主な楽曲を年代順に選び、その作曲するきっかけとなった -
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読み終えて思うのは、古関裕而という人はいかにも「日本人」だ。ただし、音楽について非常に高い能力を持っていた、そのことが彼を軍歌の世界に引き込みもした。それをもって戦争責任の議論を始めるならば、それは大部分の日本人の態度、知性と共通する論点になるだろうということだ。
音楽理論については、私の知識が不足しているので何とも言いようがないが、軍歌は歌詞を入れ替えればスポーツ応援歌として成立する、という指摘は面白かった。
読んでる途中でようやく気付いたのだが、私の卒業した小学校校歌の作曲者が古関裕而だった。そういえば、中学、高校の校歌はまったく記憶にないが、小学校の校歌の前半だけははっきり記憶してい -
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あまり取り上げられることのない、公家の立場から見た幕末維新史。
公家にも開国容認派、穏健尊攘派、即今尊攘派など、いろいろな立場の人がいて、様々なせめぎ合いがあったのだということ知り、興味深かった。
ただ、王政復古とともに、それまで表舞台から遠ざかっていた岩倉具視や三条実美が急激に台頭し、王政復古までは朝議等で中心となっていた摂家の人達などが表舞台から消えていく過程・内実がいまいちよくわからなかった。官位などを見ても、それまでの朝廷・公家社会の秩序がかなり転変しているが、大きな抵抗もなくそうなっていったのはどうしてなのだろうか。その点があまり得心できなかった。 -
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朝ドラで話題の作曲家の評伝。
著者は若手の日本近代史の研究者で、専門は軍服を中心とした洋装の歴史との由。
昭和の生まれとはいえ、この年代の人で古関メロディのファンだったという人は珍しいのではないか?
随所に、古関への愛があふれている♥のだ。
あ、でも、全体としては割とあっさり味。
それぞれのエピソードをもっと詳しく知りたいな、と思うところは多々ある。
ドラマは「紺碧の空」の成功を描いたところ。
それでヒット曲を連発できるようになったかといえば…まだまだ先は長いらしいことが、本書で「予習」できてしまった。
古関の生涯を、作った曲とともの、丁寧に跡付けている。
日中戦争下の時局に絡む歌謡曲や、戦