酒場御行のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ『そして、遺骸は嘶く』も凄まじい作品だったが、この作品の凄まじさも半端なかった。
正直うまく言葉にできなくて、凄いとしか言いようがないのがもどかしくある。
ミステリでありながら、人間の綺麗な部分も醜い部分も、愛情も憎しみも、孤独も怒りも丁寧に丁寧に描かれていて、読み進めるたびに酸欠を覚えるほど。
謎解き自体も面白いが、その感情表現が印象に強い。
淡々と描写しておきながら、こちらに伝えてくる感情が津波のようで。
押しつぶされないようにするには、こちらもそれなりの気力をもって立ち向かわざるを得なくて。
いい意味で非常に疲れる読書だった。
それだけ力強いのだ、この話。
その感情の波を逆方向に振り切 -
Posted by ブクログ
ネタバレキャスケットが届ける戦死者の遺品、それに関わる人たちの話のパターンが実に多種多様だった。
ストレートに泣ける死者の遺言。
死神なんぞに引き裂かれてたまるかと最期まで互いの想いを信じていた恋人たち。
捻じれた父子の関係性のその先は?
そして……キャスケットと彼の兄官の絆の物語。
最初はキャスケットが届けた戦死者とその家族や恋人の話の方に主軸が置かれていたけれど、後半は後書きにもあったようにキャスケット自身の話へシフトしていく。
戦時中のあることで「変わってしまった」兄官。
死という概念がその人をその人たらしめていたものの消失だというのであれば、今の兄官は果たして生きていると言えるのか。
そんな -
Posted by ブクログ
蔑称としてのライトノベル?ヘビーノベルですよ本作は。
主人公のベテラン兵士が、遺品を遺族に届ける亡くなった兵士4人の遺族へ遺品を届ける小説。死を遺族だけでなく、死んだ本人の両方の視線で捉えてており、登場人物達への描写が深い。
無駄のない計算された構成、設定、描写、最高の小説。
兵士本人だけでなく、銃後の家族を不幸に巻き込むも戦争の悲惨さを訴えつつ、亡くなった人の魂は影響を与えるというメッセージも鋭い作品であった。
女子受けする表紙からは想像以上のできない絶対に読むべき作品。
デーヴ・グロスマンの名作「戦争における人殺しの心理学」も参考にしているところがシブい。
著者の作品は今後もマークせね