武田俊太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
副題にある通り、第一線で研究している著者が、ニュースなどで夢のコンピュータ、とか、万能感を煽る量子コンピュータに対し、そうではないよ、と実際的な解説をしてくれている本。Googleが最先端のスーパーコンピューターが1万年かかる問題を200秒で解いた等、巷のニュースに踊らされてはいけない、ということがよくわかりました。
そもそも量子コンピュータに限らず、コンピュータが苦手だったり、解けなかったりする問題もあるし、コンピュータの中でも量子コンピュータの方が有利な問題は、今のところ4つしかない、ということも初めて知りました。これから用途開発も必要ということなので、今ある量子コンピュータは「おもちゃみたいなもの」という解説にも納得。
「原理的に解ける」ことと「実際に解ける」ことは違う、という説明の際に出てきた組み合わせ最適問題や素因数分解は量子コンピュータが得意であることもよくわかりました。
著者は、量子コンピュータの代表的な4つの方式、すなわち超電導回路方式、イオン方式、半導体方式、光方式のうち、光方式を独自のアイデアで研究開発を進めているそうです。苦労して使った光回路の精度が足りなかったり、長い時間をかけて使った試作機が全く機能しなかったりと失敗もあるようですが、「工夫してモノ作りをしていくことに研究開発の醍醐味がある」というセリフには激しく同意します。現状、光量子コンピュータの実現にはまだまだ時間がかかりそうですが、デファクトスタンダードが海外勢に確立される前に、ぜひとも頑張っていただきたいと応援したくなる気持ちで本書を閉じました。 -
Posted by ブクログ
東大大学院で光量子コンピュータを開発してきている著者が量子コンピュータとその開発の現状を解説する書。
量子コンピュータとは、量子の波としての性質を使い、量子のたくさんの波を操り、波の「重ね合わせ具合」(大きさの比、振動のタイミングの差)をうまくコントロールしながら計算を行う「波を使った計算装置」だと紹介している。
量子コンピュータも現在のトランジスタコンピュータと同様に「0」と「1」というビットを使って計算する装置ですが、そのビットの処理が波の「重ね合わせ具合」のコントロールという極めてアナログ的な調整であることが量子コンピュータの根本的な課題であることがわかったような気がする。
目次
はじめに
第1章 量子コンピュータとは?
第2章 量子力学の最も美しい実験から探る量子コンピュータの招待
第3章 量子コンピュータの計算の仕組み
第4章 量子コンピュータはなぜ計算が早いか?
第5章 量子コンピュータの実現方法
第6章 光量子コンピュータ開発現場の最前線
あとがき
(内容紹介)抜粋
Googleが「量子超越性」の実証を発表するなど、量子コンピュータ周辺のニュースが世間を騒がせるようになってきました。一方で、華々しい話を強調しすぎるあまり、量子コンピュータに得体のしれないひみつ道具のようなイメージが広がり、実体をきちんと知りたい人にとって必要な情報はあまり提供されていません。
本書は現場を知り尽くした開発者が、詳しく知りたい読者に向けて、量子コンピュータもあくまで現代のコンピュータの考え方をベースに発展させたコンピュータの一種であることや、どこにどう量子の性質が使われてどういう場合に計算が速くなるのかなどを、かみくだいて解説します。また、現在実際に開発が進められている量子コンピュータについて、その種類や長所・短所、将来の展望などを述べます。 -
Posted by ブクログ
現在の量子コンピュータは、ミニチュア版のおもちゃ。
あらゆる計算が速くなるわけではない。特定の用途はめっぽう強い。最適化問題、素数分解、化学計算など。
必要な計算の階数が減らせる=規模が大きくなったとき、計算のスピードが速くなくても有利。このような問題は限られている。
数年では実用化されない。現在の量子コンピュータは、レゴブロックのおもちゃの自動車程度。必要なのはF1のレーシングカー。
ムーアの法則は限界に近づきつつある。トランジスタのサイズが10ナノメートルレベルになり、原子のサイズ0.1ナノメートルに近づくから。
コンピュータを1000台つなげても苦手な問題はたくさんある。原理的には解けるが、現実的には解けない問題がたくさんある。
ドイッチュは量子コンピュータの生みの親。量子力学の原理に従ったコンピュータの基礎理論をつくった。素因数分解を高速で解く方法が見つかった。グローバーの解法など。化学の計算も得意。
量子は2重スリットの実験で、粒でもあり波でもある振る舞いが分かる。量子の世界は確率的。量子コンピュータは、重ね合わせや干渉を利用して、同時に試すことで計算回数が減る。波の干渉をうまく生かせる問題には強い。
トランジスタは、NOTとANDという論理演算だけで手間暇かけて計算している。
量子コンピュータの種類
超伝導回路方式、イオン方式、半導体方式、光方式 -
Posted by ブクログ
量子コンピュータを初心者向けにわかりやすく解説した本
判り易い記述例
・4重スリット実験で量子力学の原理を使って「当たり」の隙間を探す方法
従来:ひとつひとつの隙間に順に電子を発射
量子力学:波のように4つの隙間を通りぬけると当たりの隙間だけ波が強め合って、どれが当たりの隙間かが1回で判る
・量子コンピュータの計算
従来:1個1個指示を出して、回路ごとに旗のパターンを切り替えるイメージ
量子:波全体の形を変化させていき最後の測定で1パターンが選ばれる
・グローバーの解法
従来:暗証番号をみつけるのに、全ての組み合わせ(N回)問い合わせが必要
量子:すべての候補を同時に調べ、当たりの組み合わせは量子版問い合わせマシンに何度も通すことで波が強めあうのでわかる。(√N回)
・ショアの解法(素因数分解)→ ここの説明は判りにくかった
WEBにて補足
もとの数Mより小さい数xのr乗をMで割った場合の余りが1になれば、
xのr乗 MOD M=1
xのr乗-1= αM
rが偶数であれば
(xのr/2乗ー1)×(xのr/2乗+1)=αM
よって 適当なxとrが見つかれば Mの約数が見つかる
このxとrを見つけるの量子フーリエ変換を使う
→やっぱり判りにくい -
Posted by ブクログ
量子コンピュータのしくみが概念として理解できた。重ね合わせ状態の波の性質のままの情報を扱い、波の状態のまま干渉させることで求めたい情報ついての波の状態だけを増幅させた後に情報観測することで、多数の可能性の中から求めたい情報を古典的コンピュータよりも少ない計算回数で得られるもので、素因数分解や最適化問題、新物質の働きのシミュレーションなどについて古典的コンピュータをはるかに上回る効率的な計算を行えることが期待されている。
しかし、まだ数十個程度の量子ビットしか実現できておらず、100万~1億個の量子ビットが必要と言われている実用化にはまだ何度も技術的ブレークスルーが必要になる。 -
Posted by ブクログ
日本の量子コンピュータ開発の最前線に立つ著者による一般向け概説本。量子コンピュータと聞くと何やら幾何級数的に計算が速い微小な装置を想像してしまうが、著者は研究者としてのリアリスティックな立場から、量子コンピュータに何が期待できるのか、その開発状況はどのような段階にあるのかについて、そのような先入観を排する手助けをしてくれる。ただ、書題にあるような「本当にわかる」という水準にまで初学者が到達できるかについては、やや疑わしいものがあるのではないかと思う。
量子コンピュータは複数あるパターンの中から特定の条件に合致するものを抽出する「グローバーの解法」を得意とするが、そこで二重スリット実験の光子の振る舞いのような「重ね合わせ状態」を利用している。多数の波(パターン)が並列する重ね合わせ状態を演算処理し、それらをうまく干渉させることにより特定の条件に合致する結果を取り出しているというのだ。つまり多数の波を同時並列的に扱うのだが、結果の測定の際にシュレーディンガーの猫よろしく答えがひとつに収斂してしまうため、これだけで計算は速くなるわけではない。重ね合わせ状態を「うまく干渉させ」、答えが選ばれる確率を高め処理効率を高めているのだ。ただ、この「うまく干渉させる」というのがさほど詳しく説明されていないため、それがまるで「初めから答えがわかっていて、それに合致するパターンのみが抽出されやすいようシステムをデザインする」かのように読めてしまう。もちろんそんなはずはなく、おそらく本書147ページで簡単に言及のある「ランダウアーの原理」が関与しており、情報を保存する代わりに波を変化させることで正答に対する応答をスタンドアウトさせていることはなんとなく理解できるのだが、具体的なプロセスがうまくイメージできずややフラストレーションを感じた。
後半の著者の研究現場についての記述も、研究者としての熱い思いが伝わってくるものの理解が追いつかずややもどかしく感じた。ただ、世界の後塵を拝するこの分野において、フロンティアに立ちながら奮闘する著者の研究が大きな成果につながることを心から願いたいと思う。 -
Posted by ブクログ
現代コンピュータの仕組み、進歩の状況から解説し、量子力学の概要、量子コンピュータの仕組み、開発の現状をわかりやすく解説。
ゼロからわかる量子コンピュータ。
◯コンピュータとは「数字の計算を何かしらの物理現象に置き換えて解く道具」
・現代のコンピュータは電気的なスイッチであるトランジスタのON/OFF
・量子コンピュータは量子力学の物理現象「重ね合わせ」を使って解く
・トランジスタの1単位のサイズは10nmと、原子サイズ0.1nmに近づき限界
◯量子コンピュータで計算が高速化されるものは、今のところ素因数分解、最適化問題等、いくつかの限定的な解法のみ(他は現代のコンピュータと同じ)