高崎俊夫のレビュー一覧

  • 目的をもたない意志 増補版 ――山川方夫エッセイ・コレクション

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    山川方夫のエッセイ集。ここには30代で没した作家の永遠の若さが封じ込められていると言ってよい。しかし、その「若さ」は「未熟さ」とは異なる。『三田文学』の編集長を務め、江藤淳や曽野綾子などの才能を世に送り出した山川は、すでに20代のころから文学のその先を見通すことのできる、新鋭でありながら老練な作家でありプロデューサーであった。

    山川は高名な日本画家の息子として、裕福な家庭に育った。「神話」というエッセイで、戦前に鎌倉へ「36年型ビュイック」で叔父の家族と一緒にドライブに行き、8ミリでホームビデオを撮った時のエピソードが語られている。山川は、「その日、叔父の8ミリの目が私を狙い続けたことへの恐

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    2025年06月28日
  • わが封殺せしリリシズム

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    大島渚が様々な人について語ったエッセイ集。ギャラが決まってないのにオファーを受けてくれたデビット・ボウイ、突然の寺山修司との別れ、脳出血で倒れた後、ビートたけしから送られた来た絵に添えられた一言。この辺りのエピソードが胸にグッと来た。

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    2024年07月24日
  • むしろ幻想が明快なのである ――虫明亜呂無レトロスペクティブ

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    スポーツ評論をはじめ、映画、音楽、文芸など幅広いジャンルをテーマに上質で官能的な文章を書いた異才、虫明亜呂無。戦前の職業野球への追想、岩下志麻や太地喜和子の軽妙なスケッチ、栄光と悲劇のランナー円谷幸吉・人見絹枝の美しいポルトレ、荒井由実やエゴン・シーレや『ベルばら』などを軽妙に取り上げるコラム、巨匠内田吐夢監督の撮影現場レポート……単行本未収録作や代表作から精選した珠玉のエッセイコレクション。

    名前は知っていたが、著作を読むのは初めて。人見絹枝、円谷孝吉の評伝と内田吐夢の撮影現場ルポが読みであり。「恋」をリバイバルで観たのはいつだったか。

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    2023年09月30日
  • 目的をもたない意志 増補版 ――山川方夫エッセイ・コレクション

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    夭折の作家・山川方夫のエッセイ集。タイトル「目的をもたない意志」は映画批評を集めた第三章の章題でもある。ミケランジェロ・アントニオーニ「情事」、アラン・レネ「ヒロシマ・モン・アムール」、増村保造「妻は告白する」といった、1960年前後の作品を奔放に論じている。自分は映画評論家ではないのだからと、難解な文章ではあるが気兼ねなく書いているのが心地よい。
    芸術映画論だけでなく、怪獣映画好きであるが故の「キングコング対ゴジラ」批判も興味深い。

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    2025年10月01日