宮沢俊義のレビュー一覧

  • 八月革命と国民主権主義 他五篇

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    宮沢俊義は自他ともに認めるケルゼニストである。ケルゼンの根本規範論は、法というものは、その中身がどうあれ「法は従うべきもの」(=根本規範)という前提がなければ成り立たないという、法学の前提としての論理的仮説である。八月革命は天皇主権という根本規範を国民主権という根本規範に取り替えたわけではない。「法は従うべきもの」という前提は天皇主権でも国民主権でも変わりないからだ。こう指摘する長谷部氏は、八月革命説はケルゼンの根本規範論で説明するのは難しいと言う。まさにその通りで、宮沢が依拠したのはケルゼンの根本規範論ではなく、その論敵シュミットの憲法制定権力論であると解するのが一般的である(石川健治氏など)。

    ならば宮沢はケルゼンからシュミットに鞍替えしたのかというとそうではない。宮沢は日本国憲法の成立を法学的に説明するためのテクニックとして、憲法制定権力論という論理を借用したに過ぎない。宮沢はシュミットが想定する憲法制定権者たる国民という概念もイデオロギー的仮構物だと考えていたはずだ。その意味で宮沢は根本規範の取り替えが可能であるかのような実体論的思考を残す不純な純粋法学者ケルゼンその人以上に純粋なケルゼニストである。宮沢をソフィストと呼べるとすればこの意味においてであろう。(長谷部氏は「国民代表の概念」において宮沢は国家や議会をフィクションと見做したが、国民までフィクションと見做したわけではないと考えているようでもあり、この点で評者の見方とはやや異なる。)

    自ら唱えた八月革命説を字義通りには信じていなかった宮沢俊義という人はフランス的エスプリを備えた才人だか、極めてシニカルな価値相対主義者である。宮沢の孫弟子にあたる長谷部氏も価値相対主義者だが、日本国憲法が拠って立つ「多様な価値観を抱く人々が自由で公平に生活する社会の枠組の創出」という立憲主義の理念にコミットする氏は価値相対主義者としては不純である。その不純性において宮沢のシニシズムを免れている。

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    2025年08月24日
  • 憲法講話

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    現代の憲法学の礎を築いた宮澤俊義による憲法学の手引書。私が学生時代に日本国憲法を概観するのに最初に完読した本だと思いますが、これを越えた概説書は未だに見た事ありません。そのくらい素晴らしい入門書です。

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    2013年01月10日
  • 憲法講話

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    ネタバレ

    八月革命説を提唱した学者として有名である。天皇機関説で有名な美濃部達吉の弟子であり、田上穣治(山内敏弘・長谷川正安の師匠)の兄弟弟子、芦部憲法で有名な芦部信喜(渋谷秀樹の師匠)・奥平康弘の師匠である。憲法学の巨匠であろう。

    個人的に面白かったのは、裁判官の項目である。日本の最高裁判事は内閣の指名で決定されるが、その行政の長は議会が選ぶ。これはアメリカの制度を真似ているが、アメリカの最高裁判事も行政の長が指名する。ただ違うところは、日本の行政の長は首相で議会で選ばれるが、アメリカは民選である。つまり行政に対する民意を伝える制度が、日本にはない。アメリカは大統領制だから、行政に対する民意を伝えることができる。結果的に最高裁判事に対する任免権もある、とみなすことができる(かつアメリカは、二重の危険が存在しない。)。
    それの穴埋めのために、最高裁判事の国民審査がある。しかし、いまいち機能しているとは思えないが・・・。

    また統帥権の項目も、興味深く読めた。戦前の日本の軍隊の制度は、プロシア憲法を準用したものとなっている。憲法によって(尤も明治憲法には内閣の項目はないし、輔弼するとなっているが国務大臣は各々が単独で天皇に対して責任を負っていると解釈されていた。)民選の首相をはじめとする指揮権にはふくさず、もっぱら天皇に対して責任を負っていた。かつ統帥権は不可侵領域とされ、軍人勅諭で「軍人は政治に関わるな」と云われたものの、ストップゴー事件やプラーゲ旋風、ロンドン軍縮会議の反故にしたことを皮切りに、次々と統帥権が拡張されてゆく。今の憲法は軍隊に関する条項はないが、文民統制が保障されているので、戦前のような状況にはならないではあろうが・・・。

    なにはともあれ、古い本ではあるが読みやすい。憲法を学ぶ上では、欠かせない本であろう。

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    2011年05月04日
  • 憲法講話

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     日本人の何%が,日本の知識人の何%が,
    この本に書かれたような意味で憲法や民主
    主義というものを理解しているだろうか。
    表現の自由,政教分離,学問の自由,法の
    下の平等といった11の話題について,他の
    国の例や明治憲法を引き合いに平易に解説
    している。初版は1967年だが,現在38刷を
    重ねているというのもうなずける。
    現在の憲法のありがたみ,日本の国としての(少なくとも今までの…)理想のあり方を
    知るのに格好の良書です。(2007年1月)

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    2009年10月04日
  • 転回期の政治

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    ネタバレ

    憲法を全体の基軸に民主制と独裁政、議会と政府の関係を対象とした日本の政治の変遷、当時の諸外国の政治的な状況分析を行なっている。難し過ぎず、示唆に富んでいる良著。ただ種々の政治問題に対して(おそらく時代背景から)躊躇と暗喩が見られるのでやや注意を要する

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    2021年07月18日
  • 転回期の政治

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    この本は1936(昭和11)年、2・26事件が起こった年に刊行された。内容を読むと、歴史教科書にあるほど言論の自由が弾圧されているようには思えない。現在でも同様な言論が展開されているように思える。歴史の真実を描くのは難しい。

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    2018年02月26日
  • 八月革命と国民主権主義 他五篇

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    友人からの勧めにより読んだ。

    日本の憲法学者が日本国憲法をどのように見ているかが理解できる。

    憲法学者がいかに言葉遊びにて通説を成り立たせているかを感じ取ることができた。

    憲法学者に要求することではないが、日本の伝統、歴史、国の体質を理解し、その中で憲法の位置づけを理解できれば大日本帝国憲法から日本国憲法の間で革命が起きたことなどどうでもいい議論である。

    日本は今も神の国であり、過去来政体は国民主権で成り立ってきた。
    それだけの話である。

    憲法学が何に役立っているのか不明である。

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    2026年04月12日
  • 憲法講話

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    元・東京大学法学部教授(憲法学)であった宮沢俊義(1899-1976)による一般向けの日本国憲法論。

    【構成】
    1 表現の自由をめぐって
    2 国家と宗教
    3 学問の自由と大学の自治
    4 法の下の平等
    5 生存権
    6 国民主権と天皇制
    7 参政権と選挙
    8 議会・政党・内閣
    9 裁判の役割
    10 軍の死と復活
    11 憲法改正
    <講演>神々の共存

    本書の1~10章は著者が雑誌『世界』に連載した「憲法講話」を編集したものであり、11章の憲法改正については書き下ろし。最後の「神々の共存」は憲法記念講演会(1962年5月3日)での講演からの採録である。

    著者の宮沢俊義は、東京帝国大学法学部においてかの美濃部達吉教授(本書と同名の著書を1912年に出版)の下で学び、「芦部憲法」の著者として知られる芦部信喜は宮沢の弟子にあたる。

    本書は憲法をめぐる諸学説を取り扱うのではなく、著者の理想とするところの憲法解釈を滔々とそしてわかりやすく述べている。中学や高校あたりで教えられている日本国憲法は概ね本書の主張に沿って教えられていることを考えれば、通説としての宮沢説の影響力は絶大なものであろう。彼の主張は、1945年の降伏直後から学会、論壇を席巻した進歩的な「理想主義」の憲法論として歴史的な意味を持つ。その反面で、憲法学という学問が十年一日どころか六十年一日の進歩もないように思えて仕方がないのだが、これは私だけの思いこみだろうか?

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    2011年06月20日