八月革命説を提唱した学者として有名である。天皇機関説で有名な美濃部達吉の弟子であり、田上穣治(山内敏弘・長谷川正安の師匠)の兄弟弟子、芦部憲法で有名な芦部信喜(渋谷秀樹の師匠)・奥平康弘の師匠である。憲法学の巨匠であろう。
個人的に面白かったのは、裁判官の項目である。日本の最高裁判事は内閣の指名で
...続きを読む決定されるが、その行政の長は議会が選ぶ。これはアメリカの制度を真似ているが、アメリカの最高裁判事も行政の長が指名する。ただ違うところは、日本の行政の長は首相で議会で選ばれるが、アメリカは民選である。つまり行政に対する民意を伝える制度が、日本にはない。アメリカは大統領制だから、行政に対する民意を伝えることができる。結果的に最高裁判事に対する任免権もある、とみなすことができる(かつアメリカは、二重の危険が存在しない。)。
それの穴埋めのために、最高裁判事の国民審査がある。しかし、いまいち機能しているとは思えないが・・・。
また統帥権の項目も、興味深く読めた。戦前の日本の軍隊の制度は、プロシア憲法を準用したものとなっている。憲法によって(尤も明治憲法には内閣の項目はないし、輔弼するとなっているが国務大臣は各々が単独で天皇に対して責任を負っていると解釈されていた。)民選の首相をはじめとする指揮権にはふくさず、もっぱら天皇に対して責任を負っていた。かつ統帥権は不可侵領域とされ、軍人勅諭で「軍人は政治に関わるな」と云われたものの、ストップゴー事件やプラーゲ旋風、ロンドン軍縮会議の反故にしたことを皮切りに、次々と統帥権が拡張されてゆく。今の憲法は軍隊に関する条項はないが、文民統制が保障されているので、戦前のような状況にはならないではあろうが・・・。
なにはともあれ、古い本ではあるが読みやすい。憲法を学ぶ上では、欠かせない本であろう。