ジェイソンレナルズのレビュー一覧
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ネタバレ兄ショーンを銃で殺されてしまったウィルは、掟に従って仇を討とうと考える。
そして、ショーンが隠していた拳銃を隠し持って、母に見つからないように、自宅のある8階から、こっそり下りのエレベーターに乗り込む。
誰にも会いたくない状況なのに乗り込んできた男はジロジロと自分を見る。
俺がわからないのか?わかりません。バックだった。ショーンの兄貴分。
なかなか次の階につかないエレベーター、次々と現れる、もう会えないはずだった人々。彼らとの会話から、ウィルはだんだんと自分のやろうとしている事の意味を考える。
詩の形式で語られる物語。読みやすいが、深く心に落ちていく言葉。
銃社会のアメリカの悲惨な現実とその犠 -
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麻薬や犯罪が日常化するアメリカ社会では、衝動に駆られ行動を起こしてしまう少年少女が多い。10代に向けて書かれたこの小説は、全文を詩で綴られている。
おととい兄のショーンが殺された。
アトピーにかかっている母さんのために石鹸を買いに出かけて…。
15歳のウィルは、兄が隠していた銃を箪笥から探し出しこっそり家を出た。
「泣くな。 密告はするな。
"掟"に従って犯人を探し殺すのだ!」
8階から動き出すエレベーター。
7、6、5…各階でドアが開く度に、乗ってくるのは二度と会えないはずの人たち。煙草の煙と軋む音の中で交わされる声、声、声。
密閉された空間とLobbyまでの1 -
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私の心はズタズタにされた。
家族を殺され、復讐をしてやると銃を手にすることから始まるであろう連鎖。
銃社会のアメリカが抱えている問題を子供の視点から、黒人のコミュニティの問題(貧しいあまりにドラッグの売人をやらざるを得ないことや、ドラッグに関わると芋づる式にギャングの問題に繋がること等)、それらを独特の詩の形式で炙り出す。
エレベーターに乗り込んでくる人たちが誰なのか。
一人一人の過去を辿っていくうちに視界が涙で滲む。
涙が止まらなくて、ページは濡れていった。
読んでいてなんとなく予想ができてしまうからこそ、心に重く響く悲劇の数々。
悲しかった。
大事な人を殺されたとしても、自分が怒りでどう -
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おととい兄のショーンが銃殺された。「掟」に従ってぼく(ウィル)は復讐する。ショーンの引き出しから銃を見つけ、ジーンズの腰に押し込む。殺したのはきっとリッグスだ。
アパートメントの8階からエレベーターに乗ると、7階から男が乗ってきた。それはショーンの兄貴分の亡パックだった。6階からは幼馴染の亡ダニが、5階からは亡マーク伯父さんが……。
各階で止まるエレベーターに乗り込んでくる身近な故人たちとの関わりを通して、短絡的な復讐の愚かさに気づいていく少年の物語。
*******ここからはネタバレ*******
横書きで、詩の形で綴られるこの物語は、情報が断片的でパズルを解くように真実が明 -
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兄を射殺された主人公が生まれて初めて銃を握りしめ、復讐を遂げるためにエレベーターに乗りこむ。地上階に降りるまでの間に、主人公は思いもよらない人たちとの再会をしていく。著者は詩人でもあるそうで、詩と小説の中間みたいなスタイル。独特な文章の配置や改行で、深い余韻と意味のつまった余白がそこかしこにある。銃撃が身近にある環境で育ったと思われる主人公は、憎しみの連鎖を止められるのか。物凄くスタイリッシュな映像とアイディアがあれば映画化とかできるんじゃないかって気がする。
誰かを溺死させることを
水が面白がっていないだなんて
どうしたら言い切れる?
(P.161) -
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ジェイソン・レナルズ『エレベーター』早川書房
『ベルリンは晴れているか』で大ファンになった深緑野分氏が推薦ということで全くの前知識無しに購入して読んでみました。てっきりクライムノベルかハードボイルドかと思っていましたが(おそらく翻訳の青木千鶴氏が『用心棒』も担当していたからそのイメージだと思いますが、なんなら『用心棒』を買ったつもりでいたかもしれない)、ページを繰ると良い意味で期待を裏切る驚き。
なんと全編ポエトリースタイル。
しかも下るエレベーターの中「だけ」という特殊設定。いるはずはない登場人物たち。非常にタイトな時間進行。
かといってトリッキーかというと全くそんなこともなく、ピン -
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ネタバレ何者かに射殺された兄の復讐を主人公がするために、銃を持ち、自宅を出てエレベーターに乗る、というのが簡単なあらすじです。どんな理由があろうと人を殺したら犯罪になりますが、兄弟、親など、愛する人達から受け継いだ掟の存在により、して当然だという気持ちで主人公はエレベーターに乗り、ロビーを目指して降下するわけです。しかし、ひとつ降りるたびに必ず誰かがエレベーターに乗り込んできて、主人公に介入してきます。その度に主人公は復讐について、改めて考えたり見つめ直したりします。こう見てみると、愛する人を殺した犯人を絶対に許さない気持ちを、何とかして抑えようとしているようにも見えてきます。作者が過去に友人を射殺さ
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ネタバレ愛する兄を殺された弟は、兄を殺した奴を殺すために、兄の銃を持って家を出てエレベーターに乗る。エレベーターが1階に着くまでの少年を詩で綴った物語。
アメリカの銃社会が限界に来ていることは、しょっちゅう起こる(コロンバインの頃は一つ一つを覚えていたが、この頃は起こりすぎて覚えていられないほどだ。)乱射事件でもわかっていたことだが、これを読むと、子どもですら簡単に銃が手に入るせいで、本来なら殴り合い位で済んだことが殺し合いになってしまう恐ろしさを実感した。
この本の登場人物達、といっても主人公がエレベーターで出会う人物は皆死んでいるのだが、全員社会の犠牲者といっていい。どうしてこれくらいのことで -
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ウィルの兄、ショーンが殺された。
街中で、誰かに拳銃で撃たれて。
ショーンはアトピー性皮膚炎の母親のために特別な石けんを売っている店に行かなければいけない。でも、その店のある地域を縄張りにしているリッグスといさかいがあって、リッグスはショーンをよく思っていない。ショーンはリッグスに撃たれたに違いないとウィルは考えた。
ウィルには守らなければならない掟があった。兄も、仲間もその掟を守っていた。
愛する者を奪われたなら、復讐をしなければならない、という掟だ。
ショーンの机の引き出しに入っていた拳銃を見つけたウィルはそれをズボンの後ろに刺して、自宅のある8階からエレベーターに乗った。
1階に着いて街