栢木清吾のレビュー一覧

  • 創元世界史ライブラリー フィッシュ・アンド・チップスの歴史 英国の食と移民

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    ネタバレ

    なんとなく衝動買いした、小説でもノンフィクションでもない、普通に学術書に近い、フィッシュアンドチップスの本。
    別に自分はフィッシュアンドチップスに詳しいわけでも興味があるわけでも、食べるのが好きなわけでもないので、じゃあなんで買ったんだと言われそうだが、「フィッシュアンドチップスの歴史」という本があるという事実だけでなんかおもろいやん?イギリスのソウルフードだと言うのは知ってるが、なんでそうなったんだ?みたいなのを考えるとちょっと気になるやん?
    まあ、実際そんなじっくり考えて買ったわけではなく、本当に衝動買いだったわけだが。

    そしてこういう学術書は当たり前だが、内容は難しくて読みにくいというのが多いが、この本はなんか案外読みやすかった。…いや、もしかするとあんまり真面目に学ぶ気がなくて結構読み飛ばしたから、読みやすかったと思い込んでいるだけという可能性は結構大きい。

    で、フィッシュアンドチップス、古代からイギリスで食べられてきたからソウルフードかと思ったら、実は19世紀からと、だいぶ新しいソウルフードらしい。
    そもそもフライドフィッシュとフライドポテト自体もその頃登場し、19世紀末あたりにじわじわとセット販売されるようになったとか。

    そのあたりに発明された料理と言うよりは、結局、銃・病原菌・鉄で読んだような気がする、物事は単に一つの原因があるわけじゃなくて様々な要因が複雑に絡み合ってるんだよ的な話がこれにももちろん適用される。
    まずジャガイモが重要な食材になったのも、値段が安くて栽培が簡単で、且つ鉄道の発達というタイミングもあり、魚は以前は干物でしか流通できなかったのが、冷蔵技術と輸送技術の向上で生のまま運ばれるようになり…
    そんなこんなあってようやくフィッシュアンドチップスという文化が生まれると。

    あとは、魚も芋も安く、他の材料も安いので労働者向けに大人気になり、700席もあるレストランとかもできたが、やはり基本はみんな持ち帰って家で食べてたとのこと。安いご飯として買って帰るわけだな。

    結局20世紀に入ってからはマクドやKFCなどのチェーン店の影響や、ほかのレストランやスーパーで普通にフィッシュアンドチップスが提供され始めたりで、専門店はどんどん減り始めたらしい。減ったと言っても昔に比べれば、なのでフィッシュアンドチップスの衰退、というわけではなく、人気は変わらず高いが。ほかの選択肢も増えたということか。

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    2026年08月31日
  • 創元世界史ライブラリー フィッシュ・アンド・チップスの歴史 英国の食と移民

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    安価に簡単に食べれる外食だったフィッシュアンドチップス。中華とかインド料理とかあってもイギリスでは人気らしい。
    じゃがいもと魚が鉄道・船・氷で手に入りやすくなって、元々ユダヤ人の料理でで魚を揚げる料理があったからフィッシュ&チップスが誕生した。
    でも魚の匂いがすごかったらしい。臭気を排出する技術でなんとかなったけど。

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    2025年09月15日
  • よい移民 現代イギリスを生きる21人の物語

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    世界を知りたいと思っている人は読むべき。
    有色人種と言われる南アジア(インド、パキスタン、その中の下層カーストだった身分に生まれた人)、中国(オリエントと言われてる日本含むインドから東側の民族)、アフリカ(アフリカ人はみんな肌が黒いわけではない。白人に間違えられるけどルーツや信条など中身がアフリカ民族な人、ケニア、ナイジェリア、ルワンダ、ジンバブエの人は明らかに異なる性質を持つ。ひとくくりにアフリカ系と言えない多様性がありアイデンティティも複雑である)。など、世界でマイノリティとして生きたことがない私にとっては全てが新鮮だった。

    世界最強と言われる日本のパスポートを幸運にも持っている私にはその特権の意味がわかっていなかった、毎回イミグレを通るたびにハラハラドキドキしなくてはいけない人だっている。

    自分のツールには誇りを持ちたいけど、西洋社会に行き始めた身からするとなんとなく違和感を感じてしまう葛藤も辛い。

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    2024年09月25日
  • よい移民 現代イギリスを生きる21人の物語

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    ほんとに引き込まれてしまうものから、へえ、で終わるものまで。でも、どれも読まなかったら出会わなかった視点ばかり。今の私の類推からは向こう側なことも多いけれど。

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    2019年11月17日
  • よい移民 現代イギリスを生きる21人の物語

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    総勢21人のBAME(Black,Asian,Minority Ethnic)の「移民」と「人種」をテーマとするエッセイをまとめたアンソロジー。

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    2019年10月25日
  • よい移民 現代イギリスを生きる21人の物語

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    ページを捲るたびに小さな傷ができていくような感覚。
    瘡蓋になってもその上からまた傷が付く。
    それを彼らは日々の生活の中で感じているんだろうし、私も国外へ出ればそうなってしまうんだろうなと思った。

    編者前書きの「有色人には、やることなすことすべてに人種が関わってきます。なぜなら、普遍的な経験とは白人のものだからです。」にハッとした。
    そして、だからこの本は私の(そして全ての有色人種の)本なのだ思った。
    それぞれのエッセイの完成度が高いので付箋をぺたぺた貼りながら読んでいたら2週間もかかってしまった!
    きっと手放せそうにない。

    リトル・マーメイドのキャスティングに怒る人達が噴出する日本はこの本を人生の課題図書にした方が良い。
    何故自分の肌は白いと言えるのか。
    何故白の仲間入りをしていると勘違いするのか。
    映画界における有色人種の話もしてるので是非読んで欲しい。

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    2023年07月09日
  • 創元世界史ライブラリー フィッシュ・アンド・チップスの歴史 英国の食と移民

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    フィッシュ&チップスと産業革命の関わりが分かったりと歴史に深く関わっていてなかなか読みごたえがあった!!

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    2022年01月11日
  • 創元世界史ライブラリー フィッシュ・アンド・チップスの歴史 英国の食と移民

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    美味しいフィッシュ&チップスになかなか巡り会えない。かと言ってこのまま引き退るのも癪に触る。そんな中ギリシャ系の著者が歴史を紐解くと聞き、美味しい出会いにも期待してみることにした。(ここでも「食べる」より「読む」を優先…)

    起源–発展–イギリスらしさ–エスニシティ–フィッシュ&チップスの意味…と、これ一冊で充分じゃね?と思わしめるほどの専門書ぶり。

    揚げた魚とじゃがいもがいつ・どこから登場してくるのか。文献を辿る旅もなかなかに忍耐を要したけど、調理風景とか(美味しいかは別にして)ちょこっと味見したくなることもあったり。古くからそれらしい料理はあったらしく、ディケンズの時代に本格化し始めたっぽい。早い段階で専用の調理機器が開発されたり第一次世界大戦時には各地に専門店が存在していたという(!)

    外来のチェーン店に押された時期はあっても、今日まで根強い人気を誇っているのが日本の寿司をちょっぴり思い起こさせる。

    ・元は労働者階級向け(2ペンスで買えた時代もあったとか)
    ・元祖持ち帰り料理
    ・お店は基本的に家族経営

    どこを取っても気位は高くないし、そりゃ嫌でも身近になる。「今や国民食」と明言されているし。

    「フライド・フィッシュ」の出どころがユダヤ文化だったのは意外すぎた。(あくまで自分が受けた印象だけど)ユダヤ人をフライド・フィッシュを揚げたにおいがすると囃し立てたくせに、後々になって国民食だと何食わぬ顔でいられるのが不思議でならない…食べられればそれで良いってものなのか。そう考えると、ルーツを辿ることは決して間違いでも無駄足でもないと信じていられる。

    そんな紆余曲折を踏まえられた栢木氏(訳者)による「やり取り」は、自分もこうして本当の意味で食を理解できるようになりたいと思ったものだ。美味しい出会いには(やっぱり)食べていかないと行き着かないから、この先も臆せず探求していきたい。巡り会えたその時は、本書での出会いを思い返そう。


    ※漢字に横文字のルビを振る書き方は邪魔くさかったかな汗(「市民農園/アロットメント」etc.)

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    2022年01月04日
  • よい移民 現代イギリスを生きる21人の物語

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    いろんなバックグラウンドを持つ人の、イギリスで「移民」として体験したこと、それについての考えをエッセイ式にまとめた一冊。
    白人がマジョリティの中で、黒人のあるべき姿に当惑する様子や、宗教的な服装を含めた見た目でいかに人が判断されるか、モデルマイノリティになるべきという圧力など、文の中だけだが少しイギリスの現状がわかった。
    Positive discrimination も本当に白人が心からやっているのか疑問に思った。
    同時に、メーガン妃の結婚の際に王室が取った対応についても想起された。

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    2021年07月17日
  • よい移民 現代イギリスを生きる21人の物語

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    イギリスってそうなんだ、では終われない。移民、とくくられてもひとりひとりに物語がある。そして、それはきっと日本でもたくさんの思いが、ひろわれることもなく漂っているのではないかな。

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    2021年06月19日
  • 創元世界史ライブラリー フィッシュ・アンド・チップスの歴史 英国の食と移民

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    「イギリス料理はまずい」とはいったいいつ頃から言われるようになったのでしょうか。
    観光旅行程度ですが実際にイギリスに行ってみた感想としては、味が大雑把な料理が多いのはアメリカと大差ないという感じ。そこそこ高いホテルのディナーは十分おいしかったし、イングリッシュブレックファーストだって好きだった。だいたいアフタヌーンティーとかなら日本でももてはやされているのに?

    巻末のあとがきで「イギリス料理はまずいでしょう」と聞かれた訳者は次のように答えています。

    「ロンドンで食べる飲茶やカレーは日本よりおいしいと思いますし、ジャマイカとかレバノンとか日本ではなかなか出会えない地域の料理も食べられますから、食は豊かですよ」。すると相手は次のように反論したのである。「でも、それって移民の食べもので、別にイギリス料理じゃないですよね?」この発言には「移民」という外来の要素と明確に区分されうる純粋無垢な「イギリス」の食文化が存在するという発想が透けて見える。しかし、そんなものを想定することが果たして可能なのだろうか?

    そんなイギリス料理のなかでも「唯一おいしい」とされるフィッシュ・アンド・チップス。
    『フィッシュ・アンド・チップスの歴史』というタイトルだけでもう十分におもしろそうですが、実際にとてもおもしろかったです。

    「イギリスらしい」料理とされるフィッシュ・アンド・チップスだけど、そのルーツをたどるとユダヤ人のフライドフッシュであり、労働者の食べものとして消費される一方で、嘲笑される対象でもあった。
    中国料理やフライドチキン、マクドナルドなど「持ち帰り料理(なぜかこの本ではテイクアウトとはいわない)」が増えることで、フィッシュ・アンド・チップスは「イギリスらしい」料理としてナショナル・アイデンティティと結びつけられるようになる。
    フィッシュ・アンド・チップス店の多くは家族経営の小さな店であり、フライヤーはユダヤ人にはじまり、スコットランドのイタリア人、ギリシア系キプロス人と移民たちであった。

    というのが大筋なんですが、ディケンズの小説から当時の新聞記事、『フィッシュ・アンド・チップス美食ガイド』から機関誌『フィッシュ・フライヤーズ・レヴュー』などなど、膨大な資料を駆使して、フィッシュ・アンド・チップスにイギリスの移民たちの歴史を読み取っていくのが最高におもしろい。

    フィッシュ・アンド・チップスひとつとっても、移民たち、労働者たちへの差別意識が見え隠れするという事実!

    訳者あとがきにもあるように「日本におけるラーメン」とか、「国民食」なんて言われてるものの歴史をたどってみればいろいろ見えてくるものがありそうです。


    以下、引用。

    魚食の歴史は人類の歴史と同じぐらい古いようであるが、一九世紀に鉄道が登場し、保存を可能にする冷蔵技術が発展するまで、生の魚を日常的に食べることができたのは、海岸地域か河川の近くに住んでいる人々だけだった。

    ユダヤ教徒とキリスト教徒にとって、魚を食べることには宗教的な意味合いがあった。

    金曜日に魚を食べるという決め事は、ヨーロッパとイギリスでの魚需要を維持する上で重要な役割を果たしていた。

    ローマ・カトリック教会は肉食を断つ日を設定し、特に休日と四旬節の肉食を禁じた。しかし、さまざまな理由から魚はその規則から除外されていた。
    「『冷たい』食べものを口にすることは許された。魚は水に由来するということで、水鳥やクジラと同じく冷たい食べものとみなされ、肉は温かい食べものと考えられたのである。」

    それ(ジャガイモ)を最初に取り入れたのはアイルランド人だったようである。この理由としては、「ジャガイモがそこの土壌と気候と生活条件に驚くほどうまく適合した」という事実以外にも、アイルランドの農民にとってそれが「失業、貧困、人口過剰、土地所有熱という社会的疫病に対するせめてもの防衛手段として」機能していたという事実が挙げられる。

    第一次世界大戦直前の時期、フィッシュ・アンド・チップスは、イギリスのトロール船による漁獲高のニ〇パーセントと、イギリスで育てられたジャガイモのおそらく一〇パーセントを吸収していたと考えられる。

    「こうした店のおかげで、多くの労働者の妻たちは六ペンスという安さでたっぷり六人前、ときには八人前の腹を満たす食事を用意でき」、また「調理にかかる出費と手間」も節約できていたのである。

    ニ〇世紀の初めには、ジャガイモの皮むき器と細切り器も買えるようになった。

    『フィッシュ・フライヤーとその商売』
    開業の前提になる業界規模と商機、適当な立地選び、店の間取り、調理機器、ジャガイモや魚の選び方はもちろん、塩、酢、エンドウ豆といった「フライドフッシュを売る商売に必要となる副次的な材料」の選び方。

    「チップスを揚げることをひとつの技芸(アート)と考えなければなら」ず、
    「フライドポテトチップスの出来と色味を均一に揃えることの重要性は、どれほど強調してもしすぎることはない」。

    フライドフッシュが人々の意識に上るようになった頃、それはイギリスのユダヤ人コミュニティと結びつけられた。より具体的には、フライドフッシュのにおいは、ヴィクトリア朝イギリスのユダヤ人の多くが暮らしていた都心周辺の低所得地域(インナー・シティ)、特にロンドンのイーストエンドにあったゲットーのにおいになった。だが一九世紀が進み、フライドフッシュとチップスが組み合わされると、この料理は労働者階級と結びつけられるようになった。このことはディケンズ作品中の数行の文や、この主題についてメイヒューが書いたより長い文章、それからしばしばフィッシュ・アンド・チップスの健康上の脅威を取り上げた新聞記事にはっきり見て取れる。ニ〇世紀の後半には、この料理は「イギリスらしさ」と結びつけられるようになった。

    『ウィガン波止場への道』のなかの一九三〇年代の経済不況とその余波について述べるくだりで、オーウェルは「三十ペンスでは肉はたいして買えないが、フィッシュ・アンド・チップスならたくさん買える」と指摘している。その一方で、第二次大戦後に書かれたエッセイでは、フィッシュ・アンド・チップスを「労働者階級のなかの最も貧しい連中がいつも夕食にしているもの」と形容しているのである。

    たとえばビートルズも取材を受けており、「僕たちの成功もこの手軽な食べものがあってこそ」と発言している。ジョン・レノンは、「僕らはしょっちゅうフィッシュ・アンド・チップスの店に通っていた」と語っている。

    そもそも、その料理を構成する二つの要素がどこから来たのかを調べれば、それらの起源がイギリスの外にあることが分かる。チップスはフランスからイギリスに入ってきた可能性がある。他方の魚の衣揚げ(バタードフィッシュ)はユダヤ人がもたらしたもので、その歴史はおそらく近代初期にまで遡れる。一九世紀の大半の期間、フライドフッシュはユダヤ人たちの食べものとして知られていた。それどころか、ヴィクトリア朝時代のイギリスには、ユダヤ人はフライドフッシュのにおいがするという悪辣な反ユダヤ主義のステレオタイプが流布していた。

    エスニック・マイノリティとの関わりは、フィッシュ・アンド・チップスの重要な側面である。揚げ物の仕事はつねに社会階層の最底辺に置かれたため、一番最近来た一番身分の低い者に受け継がれていった。一〇世紀後半のロンドンのイーストエンドでは多くの大陸出身のユダヤ人がこの商売をしていた。その後、イタリア人がこの仕事に就いた。第二次世界大戦が終わると、特にロンドンとコベントリーでキプロス人の参入が見られた。より最近では中国人と、そこまでの規模ではないが、インド人やパキスタン人のフライヤーが進出してきた。

    映画『ぼくの国、パパの国』(ダミアン・オドネル監督、一九九九年)
    その店を所有するのは、ローマ・カトリック教徒のアイルランド系イギリス人女性と結婚したパキスタン移民のザヒア・「ジョージ」・カーンである。
    面白いことに、フランスで公開された際、同作のタイトルは『フィッシュ・アンド・チップス』に変更された。二つの文化のあいだで生きることに伴うさまざまな問題を扱っている映画のテーマは、フィッシュ・アンド・チップスのエスニックな複雑性を見事に暗示している。

    フィッシュ・アンド・チップスはかつて反ユダヤ主義的なステレオタイプを体現したかもしれない。しかし、それはユダヤ人の食べものから貧民の食べものに、最後にはイギリス人の食べものへと変化したのだった。それゆえフィッシュ・アンド・チップスは、そうしたステレオタイプを解体する道筋を示してもいるのである。

    「ロンドンで食べる飲茶やカレーは日本よりおいしいと思いますし、ジャマイカとかレバノンとか日本ではなかなか出会えない地域の料理も食べられますから、食は豊かですよ」。すると相手は次のように反論したのである。「でも、それって移民の食べもので、別にイギリス料理じゃないですよね?」この発言には「移民」という外来の要素と明確に区分されうる純粋無垢な「イギリス」の食文化が存在するという発想が透けて見える。しかし、そんなものを想定することが果たして可能なのだろうか?

    たとえば、ニューヨークの食文化を東欧系ユダヤ移民がもたらしたベーグルなしに、ベルリンのナイトライフをトルコ移民が発明したドネルケバブなしに考えることはできないはずだ。そしてこれは、日本で長らく「国民食」として親しまれてきたラーメンの歴史を、中国大陸や台湾の出身者たちの存在抜きに語ることは不可能であり、餃子の普及の歴史を辿ろうとすれば「満州」への移民と引き揚げの問題に遡らねばならのと同じことである。

    ディケンズ『オリバー・ツイスト』
    ラリー・ザッカーマン『じゃがいもが世界を救ったーポテトの文化史』青土社

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    2021年01月14日
  • 創元世界史ライブラリー フィッシュ・アンド・チップスの歴史 英国の食と移民

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    どの魚だったんだかどうやってみんなわかるんだろうと思いながら(二人でハドックと鱈とチップスを頼んだがハドックと鱈の違いはいつもほんとにわかりにくかった)ともかくおなかにたまって、胸もいっぱいになって、ビールが欲しくなる。
    ユダヤ的なものがそれだけ嫌われていたこと、なんだかんだ言ってかなり外国人が混じりこんでいる国だったこと、貧富の差は階層差になってお互いに?否定的なイメージを持っていたこと、なんだかんだ言って豊かになってきたこと。
    外国人観光客が一番身近に試せるイギリスらしい食べ物だったのだよね。やはり。

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    2020年12月09日
  • 創元世界史ライブラリー フィッシュ・アンド・チップスの歴史 英国の食と移民

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    19世紀ユダヤ人の揚げ魚とフランスのジャガイモ揚げが、冷蔵技術や鉄道、近代化による都市化などの影響で成立し、下層民や移民の商売となり、ついにはイギリスの国民食として世界に広がった。
    切り裂きジャックの時代にも数多くのユダヤ人とフィッシュ&チップス屋があったことだろう。
    食の歴史という以上に、移民とそれぞれの食文化の受容や融合に眼を向けさせられる。

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    2026年08月23日
  • 創元世界史ライブラリー フィッシュ・アンド・チップスの歴史 英国の食と移民

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    フィッシュ・アンド・チップスがイングランドの国民食になった経緯をまとめ、その意味を考察する一冊。

    もともとフライドフィッシュはユダヤ人と結びついた存在で、その臭いを含めて貧しさを示すもので、差別とも結びついて語られていたものだという。
    それがジャガイモの普及、「チップス」の誕生と相まって「フィッシュ・アンド・チップス」として融合し、さらには自他ともにイングランドの国民食とみなされるようになった。

    とりたてて珍しい材料ではないし、ユダヤ人がいるのも特別なことではなかったのに、なぜイングランドでそれが起こったかといえば、(本書ではそうと明言していないが)産業革命の影響のようだ。
    ・鉄道の発達で新鮮な魚介が広く流通するようになった
    ・自ら調理しない労働者階級が数多く生活するエリアができた
    ・続々と入国する移民たちにとってハードルの低い独立業種だった(インド料理、中華料理が後続する)
    といったことだ。

    大筋では納得できるのだが、細部の検証は私には粗く見える。
    そこを追究するよりも、その次のステップとして、エスニシティの問題を論じることに著者の関心は向いている。現在の英国の社会を語る意味合いではそうなるのも理解するし、そもそもそれが著者にとっては「本題」なのかもしれないが。

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    2026年07月11日
  • よい移民 現代イギリスを生きる21人の物語

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    21人多様な視点からの話で興味深い。

    アフリカの中でも多様性があり、インドの中でも多様な層があって、肌の色で区分することのナンセンスさがよくわかる。

    自分という存在をルーツや宗教観、育ってきた環境や言語から深く考察する…誰もがどこかではマイノリティ。マイノリティの立場になると色んな視点が身につく。

    翻訳だからかちょっと文章が読みづらいが面白かった。

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    2023年11月30日
  • よい移民 現代イギリスを生きる21人の物語

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    「よい」「わるい」はいつも他人が決める。

    70年代以降に英国で生まれた移民2世・3世の著名なクリエイター21人が、自己存在の意味や葛藤、社会の偏見などを繊細かつ巧みに表現し、大きな反響を呼んだ話題の書が日本語版で登場。J・K・ローリング推薦。

    ★日本語版推薦
    移民のひとたちは”よい移民”、つまりモデル・マイノリティでなければならないのだろうか。求められている役割を演じなければ”悪い移民”なのか? 人種も境遇もさまざまな本音の声たちに耳を傾けながら、考え込んでしまっていた。受け入れるとはどういうことか。アジア人であるとはどういうことか。どちらの立場からしても、わたしたちは当事者だ。
    ――谷崎由依(作家、翻訳家)

    多様なルーツを持つ人々が暮らすイギリスという国。その日常に深く深く染み込んだ無知と差別、そしていつまでも逃れられない葛藤と戸惑い。「黒人」であることで何かを期待される。「東アジア人」であることで何かを期待される。メディアの上ではステレオタイプが繰り返され、おなじみの「悪いイメージ」を払拭するために「よい移民」として振る舞おうとする子どもたちがいる。なぜ無色透明であることは「白人」だけに許された特権なのか。イギリスで「インド系」であること、「中国系」として生きることは一体何を意味するのか。『よい移民』に収められた21の言葉は、「都合の“よい移民”」に対する既存の安直なイメージを裏切るだろう。突飛な何かが書かれている、ということではない。21人の「移民」たちが描いた日常と感情の揺れ動きが、社会の根っこにある嫌なもの、緊張感、哀しみを驚くほど鮮明に炙り出している。
    ――望月優大(ライター/ニッポン複雑紀行編集長)

    ★主な目次
    編者まえがき
    ナマステ(ニケシュ・シュクラ)
    黒人になるためのガイド(ヴァレイッゾ)
    私の名前は私の名前 (シメーヌ・スレイマン)
    黄色 (ヴェラ・チョック)
    ケンドー・ナガサキと私(ダニエル・ヨーク・ロー)
    機会の窓 (ハイムシュ・パテル)
    ニシュ・クマールは困惑するイスラム教徒か?(ニシュ・クマール)
    テレビに映る黒人像と自分なりの「黒さ」 (レニ・エド=ロッジ)
    「よい」移民を越えて(ウェイ・ミン・カム)
    「そんなのだめだよ! お話は白人についてじゃないと」(ダレン・チェティ)
    帰郷の途について(キエラン・イェイツ)
    国旗(ココ・カーン)
    アフリカに切り込む――黒人向けの床屋と男の話(イヌア・エラムス)
    どこから来たか、どこで着ているか――移民と英国ファッション(サブリナ・マフーズ)
    空港とオーディション(リズ・アーメッド)
    カースト主義の永続(サラ・サヒム)
    シェード(サリーナ・ゴッデン)
    テロリストの妻(ミス・L)
    トークニズムについて我々が語るときに語ること(ビム・アドワンミ)
    死は多頭の怪物(ヴィナイ・パテル)
    感謝知らずの国(ムサ・オクウォンガ)
    訳者あとがき

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    2021年08月07日
  • よい移民 現代イギリスを生きる21人の物語

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    イギリスって人種のるつぼだよね。そういう問いをよく聞く。英国市民はダイバーシティを皆が理解している、かというと答えはそう簡単ではない。
    本書はアジアやらインドやらアフリカ、移民をルーツに持つ英国人が感じるイギリス社会を描く。共通して行間から読み取れるのは、多くの人が生粋の英国人との間に見えそうで見えない壁を感じていること。その壁に対してどこかしら不満を抱きつつも、イギリスの社会システムに順応して生きていること。とにかく忍耐強い。
    横道に逸れるが、鉄道が突然キャンセルになって乗客が駅で立ち往生することが頻繁にある。駅員に文句の一つでも叫びそうなところ、ここの人は静かに次の行動を粛々と探す。個人的なクレーム感情を表すのは品が無いとでも言わんばかりに。
    自分に降りかかる災難を「雨ニモマケズ風ニモマケズ」とやり過ごすのが英国流なのかもしれない。

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    2020年04月12日
  • よい移民 現代イギリスを生きる21人の物語

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    身内や知り合いに沢山同じ立場がいる一個人としては、自分に引き寄せて読めた作品なのだが、ほとんどの日本人には、他人事じゃないかな。

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    2020年01月24日