椎名美智のレビュー一覧

  • 「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ

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    ●=引用

    ●1990年代に「させていただく」の使用が拡大してきた背景には、もちろん「させていただく」が使いやすいという積極的な理由もありますが、それまで使われていた「いたします」「お~する」「させてくださる」「さしあげる」に敬意漸減が起こり、使いにくくなったという消極的な理由もあります。図8が示すように、敬意不足に苛まれた人たちが、そうした表現の代わりに「させていただく」を使い始めたというわけです。
    ●どういうことかというと、あなたへの意識や配慮を示すと、あなたに触れることになるので、普通だとあなたへの経緯はすり減ります。しかし、「させていただく」は主語が一人称であなたに触れないので、あなたへの敬意が低下する敬意漸減の速度が抑制されます。逆に、主語が一人称だと自分に注目が当たり、普通は自分が尊大化して偉そうに聞こえるようになるのですが、「させていただく」には本動詞の部分にあなたへの配慮を示す意味合いが込められているので、自己尊大化のスピードが抑制されます。両方向の距離的ストラテジーを内包しているので、相手の敬意漸減と自己の尊大化のどちらが作用しても、その作用を相殺し、スピードを抑制する仕組みが働くのではないでしょうか。
    ●前にくる動詞の選択肢が多様化して距離感が調節できることは、話し手のインセンティブになっています。使う側は「させていただく」を敬意マーカーとして自分の丁寧さを演出するために使います。しかし、聞き手が気になるのはそこではなく、後ろの活用部分の固定化です。聞き手は「させていただきます」という言い切り形のため、コミュニケーションが自分に開かれていない印象を持つわけです。ここでも話し手の意図と聞き手の解釈が食い違っています。実際のコミュニケーションでは、そこに年齢差や社会的役割が関わってくるのですから、意味合いはもっと複雑になっているはずです。ここで考えているのは、話し手は丁寧に言ったつもりなのに、相手が失礼だと思うような場合のことです。
    ●「させていただく」の大ブレークは、日本語の敬語自体の変化、社会と自分との関係、自分と他者との関係の変化を反映したもので、そうした変化の最先端に位置している現象だといえます。「させていただく」という問題系は、日本語の敬語の変化、そこに作用する敬意漸減の法則、それに影響を与える社会の変化、自己と他者のあり方の変化、そうした因果関係の筋が複雑に絡み合った場なのです。
    ●敬語の歴史は「敬意漸減」と切り離して考えることはできません。①新敬語の導入→②敬意がすり減りぞんざいに聞こえる→③距離感の微調整による延命措置→④使えなくなる→⑤新語彙に交代(=①)というサイクルがずっと続いて今に至っています。「させていただく」は今、①から②の段階で、謙譲語から新・丁重語に変わっているところではないかと思います。③も少し入っています。「させていただく」に取って代わるのは、より距離感のある敬語なのではないかと思います。
    ●敬語とは、そもそも尊い他者に対して敬意を向けるものでした。それがいまや、人々は敬意を他者に向ける代わりに謙虚な自分を示すことにひたすら注力しています。その先にあるのは、自分の丁寧モードと普段着モードの切り替えだけでコミュニケーションがすませられる敬語の世界ではないでしょうか。現代日本語の敬語が行き着く先にあるのは、経緯が他者へ向かない敬語、他者を必要としない敬語かもしれません。

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    2023年01月21日
  • 「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ

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    読まさせていただきました。
    確かに『させていただきます』はよく使わさせていただいております。いつもありがとうございます。

    どうも1990年代に『させていただきます』ブームが到来したとの事で、私が社会人成り立ての頃にはその一大ブームメントの真っ只中であった訳でして、そりゃあ全く違和感なく使わせていただいた訳ですよねー。

    で、『無事大学を卒業させていただきました。』ん?違和感覚えませんか?大学は必要単位取って、卒論通れば無事卒業しますが、何か大学からのお目溢しをいただいて、また大学側から寛大なお許しをいただいて卒業させてもらったイメージを持ってしまいます。 

    ただ、今はこれでいいんですよ。もう『させていただきます』は相手に関係無く自分を丁寧に説明する言葉として成り立っているんですよ。

    この本では『させていただきます』を誤って使用するなよ、というスタンスてはなく、『させていただきます』がどいう歴史を辿り、どう評価されていったか、そして、敬語とは時代によって意味が変わっていくもので大変面白い、ほんとこの魔法の言葉は何て便利なんだよと、草生えると、だからお前ら上手く使えよと説明させていただいてるのを読ませていただいております。(何かおかしい

    アンケート等のくだりはだらけてしまいますが、敬語についてあらためて勉強させていただいた次第であります。ありがとうございまする。

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    2023年01月15日
  • 「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ

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    ネタバレ

    今の学生は、仮定、否定、疑問を使って婉曲に問う習慣が身についている。
    フワちゃん、ローラさん、のため口キャラは作られたキャラだということを知っている。毒舌キャラも同じ。
    突っ込んだ後は関係修復を図る。

    宮澤りえが1992年に「貴花田関と結婚させていただきます」させていただくが増加し始めたころ。
    「させていただく」はへりくだった表現ができなくて困ったときの特効薬。
    謙譲形があるときは使わないこと。へりくだる必要がないところで使わない、繰り返しを避ける。

    新しい敬語=尊敬語、謙譲語、丁寧語、丁重語、美化語の5つ。
    敬語とタメ語で距離感を捜査している。

    1990年ごろから増えているが、きっかけは難しい。
    敬意漸減の法則=同じ言葉でも敬意が減少する。貴様、「いたす」は丁重語だが、いまは格式ばった言い方なだけ。話し手が偉そうにすら聞こえる。

    江戸時代から明治になるころ敬意のインフレーションが起きた。江戸から明治になったときも同様。社会構造の変化がおきたとき。身分制度から解放されたとき。
    敬語の成人後採用=敬語は社会に出てから身につけるもの。中年層が一番違和感を感じた。

    させていただく、は絶妙の距離感がある。経緯漸減をうまく回避できる。
    青空文庫は、言語研究によく使われる。テキストになっている。
    お答えをさせていただきます、お答えを差し控えさせていただきます、両方の場面で使われている。相手の許可を得て話す、形が出来上がる。

    謙虚さと丁寧さをもとめて使う人が多い。相手への経緯ではない。むしろ丁重語。相手に敬意を向ける謙譲語ではない。自分を丁寧に示す品行の敬語。

    最新の使い方「しっかり整わせていただいた」おのののか。もはや他者がいらなくなった。=新丁重語。
    敬語は他者が必要なくなっている。

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    2022年12月16日
  • 「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ

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    『させていただく』について敬語の歴史的変遷、多用されることによる違和感など分析した書籍。私自身、『させていただく』の多用が気になる方で、なるべく使用したくないと思っていた。ただ多用される理由が、それまでの敬語が敬意漸減という避けられない変化にあること、謙虚な自分を示すためであることと記されており納得した。前者は言葉の変化として自然な流れだと思うが、後者の理由は今の生き方を反映しているようで、息が詰まるようだなと思った。人はインターネット、SNSの普及などから多くの恩恵を受けているが、一方で精神的には相当大きな変化を強いられていて生き辛くなっているような気がする。

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    2022年11月04日
  • 「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ

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    「させていただく」が汎用化している背景、さらには、敬語の主体のあり方が変わってきている分析、読んでいてなるほどと感じました。

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    2022年06月04日
  • 「させていただく」の語用論 人はなぜ使いたくなるのか

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    「させていただく」だけで1冊の本が出来上がることに驚く。
    筆者が長年研究している英語学の歴史社会語用語研究で培った方法論を用いてまとめられている由だが、あらゆる角度からの仮説検証に加え、他者の研究成果の引用などを駆使し、論理的かつ判りやすくまとめられている。

    第5章「2つの調査結果の考察」における5.3結語:「させていただく」という問題系への解で導きださされる結論にはなるほどと唸った。
    「させてくださる」から「させていただく」への変化の要因(第4章)と「させていただく」を使うことでの相手との距離感への変化に加え、「させていただく」は自分がへりくだっているという謙譲の感覚で使われており、「させていたただく」を新しい敬語であり「新丁重語」と名付けている。

    確かに、自分が「させていただく」を使うようになったのは、ビジネスの現場で社外の人に対するメール文面で粗相がないようにとへりくだって丁寧語を使わねばと思って書き出した記憶がある。

    この本を読んでいる最中に日本のメガバンクのwebサイトを見る機会があったが、「させていただく」の連発で思わず苦笑してしまった。

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    2022年05月29日
  • 「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ

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    コミュニケーションの変化が生んだということに納得できた。また、聞き手によって受け止め方は様々なので、余り気にしても仕方ないとも感じた。

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    2022年04月05日
  • 「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ

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    「させていただく」new wordかと思いきや、1871年の落語のその使用が確認されていると言う。
    しかし1990年代に使用が増加したのは確か。
    聞くたびに違和感を持っていたのだが、大学教授がコーパスを使用した「させていただく」等の使用例と多くの人から取ったアンケート結果から、その言葉の使用について深く解析をしていることから、やはり一般的にも気になる語用法だったのかがわかる。
    面白いのが、言葉から人間関係の変化を理解しようとする試み。
    本書によると、敬語が相手に対してより自分の丁寧さを示す表現へと変化していると言う。
    「させていただく」は「させる」(許可)と「もらう」(恩恵)の敬語形「いただく」からなる。先につく動詞(前接部)は多様性に富むが、聞き手が関与できるものかどうかで違和感の大きさに通じる。そして後の言葉はそれほどのバリエーションがなく、
    「させていただきます」と言う言い切り形が増加し定型化したので、場合によっては「俺に許可を求めとるんとちゃうんかい」と腹を立てるおっさんも出てくる。
    「させていただく」ブームは「丁寧な自己」で自分を守り、他者と繋がることを避けるコミュニケーションが増加している表れと言える。
    違和感を数式を用いて解くがごとく、みごとに説明してくれていると思うが、やや冗長すぎたかな。

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    2022年04月06日
  • 「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ

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    使われている理由はなんとなく分かっていた事だったけど、言葉というのは徐々に進化したり劣化したりするんだというデータがあり面白い。文法的な説明が沢山あり、苦手なのでこんがらがる

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    2022年03月04日