椎名美智のレビュー一覧
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大変面白かった。会社の営業があまりにもさせていただくメールばかりを書くものだから手に取ってみた。
敬意漸減の考え方や実例、新しい敬語の5分類、言葉の近接化作用と遠隔化作用、これだけでも大変勉強になった。適切なさせていただくの使い方に関しても納得。確かに謙譲語がない時など便利な場面があるのは認める。そしてなぜ自分がさせていただくが好きじゃないのかについてもよく分析できた。「させていただく」は「私ってちゃんと人と丁寧に話すことのできる人間でしょ」と言うポーズを示す自己愛的な敬語なのかもしれない、って記述があってめちゃ腑に落ちた。これが違和感の一部なんだろな。使われすぎな点、定型的な表現な点、と合 -
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身の回りに溢れた「させていただく」を敬語の変化、意識の変化から探る本。統計もしっかりしています。言葉は常に移ろいゆくものですがこの言葉もまたその過程にあるのだなと感じました。面白くためになる本です。おすすめ。
「させていただく」も敬意漸減が生じているとしたら次にくる敬語はどのようになるのか?その点についてはこの本では問題提起のみです。わたしの予想では再度「いたします」が復権するのでは?と考えています。文字数も少なくスマートなので「いたします」が増えて欲しいなあという願望もあります。
芸能人は受賞すると「受賞させていただきました」と言いますがこれは「名誉ある賞を頂きました」の方がスマート。そ -
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■「敬語の欠陥」とは謙譲語がなかったり、へりくだった表現が作れなかったりすること。具体的には「帰る、使う、参加する、変更する」などのように「お…する」を使って謙譲語が作れない場合があること。そのようなとき動詞に「させていただく」をつけるとへりくだる言葉が作れる。
■「させていただく」を平和に使うためには2つの使用上の注意点がある。
①謙譲形のある動詞はそれを使うこと
②へりくだる必要のないところで使わないこと
③なるべく繰り返しを避けること
■敬語は以前は「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の三つに分類されていたが、今はそこに「丁重語」「美化語」が加わり五つに分類されている。
■敬語には敬意が込めら -
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違和感を覚える人も多い「○○させていただく」について(自分も場面によっては強く違和感を覚える)、語用論の観点から分析している本。
著者が以前に出版した学術書の内容を非専門家向けに噛み砕いて解説しているため、内容の妥当性を保ちつつ、非常に読みやすい。
敬語に遠隔性と近接性があって、これらの調節の自由度が高いために「させていただく」の人気があることや、「させて」と「いただく」が統合的に運用されており、その後に続く語の多様性が損なわれていくことが平板的な表現を招き、特に働き盛りの世代からの人気が少ないこと、そもそも全ての敬語は「敬意の漸減」を免れ得ないことなど、興味深い分析結果がたくさん披露され -
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敬語に含まれている敬意が使われるうちに少しずつすり減っていく「敬意漸減の法則」というのがあるそうだ。
敬意が減っていくその法則により、言葉は敬意を付け足すように形を変えていくようだ。
そして、このことは今に始まったことではなく、江戸時代から明治時代にかけても敬意のインフレーションは起こっていたそうだ。また、戦中から戦後になった時にも起こっている。それは社会構造の変化が動因になっているのではないかと著者は推測している。
つまり、身分制度がなくなって、相手にどのように接したらいいのかわからなくなり、それゆえ「させていただく」を使ったのではないかという。
また「させていただく」という言葉の違和感には -
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「させていただく」使用の理由や歴史的経緯について。著者はこの言葉について中立的あるいはやや肯定的な立場で説明している。文法とか元々の意味から言葉遣いを考えるというよりは、今よく使われているのは理由があるからだ、という立場。させていただくというのを、文法的に謙譲語だと言うのでなく、使われ方からもはや丁重語だと分類している。
敬意漸減というのは初めて聞いたけれど、納得感が大きかった。かつては適切だった敬語が、時代とともに敬意がすり減って、失礼に聞こえるようになる。自分自身、「させていただく」を使うのは、敬語を使っているはずだけど何となく失礼に聞こえる気がする、というときに「敬語の上乗せ」として使 -
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ネタバレ「させていただく」の使い方
~日本語と敬語のゆくえ~
著者:椎名美智(法政大学文学部英文学科教授)
発行:2022年1月10日
角川新書
「今日限り、仕事を辞めさせていただきます」と文字で書かれると、今はニュアンスが分からない。例えば、日本語には本来ない「!」をつけて、「仕事を辞めさせていただきます!」とすると、言い争いでもして、怒って辞めてやると啖呵を切ったニュアンスが伝わるし、「仕事を辞めさせていただきます・・・」となると、逆に重大なミスでもして責任取って辞職する雰囲気にとれる。
「させていただく」は、「させる」という使役動詞に、「いただく」という謙譲語が引っ付いた言葉。だから、本来 -
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1990年代から拡大した「させていただく」という敬語。
それがどのような背景で広がったのか、言語的に何を意味するのかを追った本。
「『させていただく』の語用論」という本を新書むけにリライトしたものであるようだ。
私にとって勉強になったのは、敬語の体系の整理。
いわゆる伝統的な敬語の体系(尊敬・謙譲・丁重・丁寧・美化)に加え、授受動詞(やる、くれる、もらうのやりもらい動詞)により、相手との距離をコントロールするというところだ。
ただ、伝統的な敬語が、身分の差を前提にしていて、授受動詞の方は現代のその場限りの上下関係の表現に即しているというのは、実感としてわからない。
そのやりもらいの動詞、 -
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よく耳にし、意識せずに使用している「させていただく」という表現と背後にある敬意漸減という語の宿命と、それに対応する話者の対応としての敬意のインフレ。
「させていただく」の本来的な意味の要素であった使役性、恩恵性、必須性が、使用とともに任意的なものになり、その最先端がおのののかの「しっかり整わせていただいた。最高!」。そして文末表現調整に見える、「させていただく」の敬意漸減の兆し。まさに変化の只中にある「させていただく」についての言語学者のライブレポートとしておもしろかった。終盤は言語の社会学的な視点の印象。Brrown&Levinsonのポライトネスの概念より、そのもとになったGoff -
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ゆる言語学ラジオのさせていただく回の監修をされた椎名美智先生の著作。
なぜさせていただくは嫌われているにもかかわらず、ずっと使い続けられているのか?という問いは、言われてみれば確かに不思議だなと感じる。
自分もさせていただくは違和感を感じるので出来るだけ違う言葉で表現しようとするも、させていただくでしか敬意を表せないことが多く結局1日1回以上は使っているといえる。
そういう点でも我々は「させていただく」を便利に使っているし、「させていただく」により絶妙な距離感を保っているはすが、使われすぎることで、気遣いをやりとりしていたはずが、慇懃無礼になっている。
元々は「いたします」でよかったもの -
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中身は語用学という言語学分野の観点からの真面目な敬語論で、なぜ「させていただく」が便利に多用されるようになったかを解き明かしていく(決して「させていただく」の「使い方」の本ではない)。著者の考察には結構「なるほど」でした。
また、日本語の敬語分類がかつての3種(尊敬語、謙譲語、丁寧語)から最近は5種とされているのも初めて知りました。
なお、著者は「させていただく」の多用については中立的な立場ですが、私自身は普段から「なるべく「『させていただく』を使わないで表現できないか」を意識しています。笑 (「させていただく」の多用はちょっと芸がないので) -
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●=引用
●1990年代に「させていただく」の使用が拡大してきた背景には、もちろん「させていただく」が使いやすいという積極的な理由もありますが、それまで使われていた「いたします」「お~する」「させてくださる」「さしあげる」に敬意漸減が起こり、使いにくくなったという消極的な理由もあります。図8が示すように、敬意不足に苛まれた人たちが、そうした表現の代わりに「させていただく」を使い始めたというわけです。
●どういうことかというと、あなたへの意識や配慮を示すと、あなたに触れることになるので、普通だとあなたへの経緯はすり減ります。しかし、「させていただく」は主語が一人称であなたに触れないので、あなた -
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読まさせていただきました。
確かに『させていただきます』はよく使わさせていただいております。いつもありがとうございます。
どうも1990年代に『させていただきます』ブームが到来したとの事で、私が社会人成り立ての頃にはその一大ブームメントの真っ只中であった訳でして、そりゃあ全く違和感なく使わせていただいた訳ですよねー。
で、『無事大学を卒業させていただきました。』ん?違和感覚えませんか?大学は必要単位取って、卒論通れば無事卒業しますが、何か大学からのお目溢しをいただいて、また大学側から寛大なお許しをいただいて卒業させてもらったイメージを持ってしまいます。
ただ、今はこれでいいんですよ。も -
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ネタバレ今の学生は、仮定、否定、疑問を使って婉曲に問う習慣が身についている。
フワちゃん、ローラさん、のため口キャラは作られたキャラだということを知っている。毒舌キャラも同じ。
突っ込んだ後は関係修復を図る。
宮澤りえが1992年に「貴花田関と結婚させていただきます」させていただくが増加し始めたころ。
「させていただく」はへりくだった表現ができなくて困ったときの特効薬。
謙譲形があるときは使わないこと。へりくだる必要がないところで使わない、繰り返しを避ける。
新しい敬語=尊敬語、謙譲語、丁寧語、丁重語、美化語の5つ。
敬語とタメ語で距離感を捜査している。
1990年ごろから増えているが、きっかけ -
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『させていただく』について敬語の歴史的変遷、多用されることによる違和感など分析した書籍。私自身、『させていただく』の多用が気になる方で、なるべく使用したくないと思っていた。ただ多用される理由が、それまでの敬語が敬意漸減という避けられない変化にあること、謙虚な自分を示すためであることと記されており納得した。前者は言葉の変化として自然な流れだと思うが、後者の理由は今の生き方を反映しているようで、息が詰まるようだなと思った。人はインターネット、SNSの普及などから多くの恩恵を受けているが、一方で精神的には相当大きな変化を強いられていて生き辛くなっているような気がする。
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「させていただく」new wordかと思いきや、1871年の落語のその使用が確認されていると言う。
しかし1990年代に使用が増加したのは確か。
聞くたびに違和感を持っていたのだが、大学教授がコーパスを使用した「させていただく」等の使用例と多くの人から取ったアンケート結果から、その言葉の使用について深く解析をしていることから、やはり一般的にも気になる語用法だったのかがわかる。
面白いのが、言葉から人間関係の変化を理解しようとする試み。
本書によると、敬語が相手に対してより自分の丁寧さを示す表現へと変化していると言う。
「させていただく」は「させる」(許可)と「もらう」(恩恵)の敬語形「いただく