カレン・ディオンヌのレビュー一覧
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ネタバレ長期間少女を誘拐監禁した罪で服役していた囚人が脱獄し逃走。
誘拐監禁されていた間に生まれた娘のヘレナは、過去を封印して生きてきたが、父親が自らの家族と生活を脅かしに来るものと分かり、対決することを決意する。
アメリカの原野で繰り広げられる追跡劇と息を呑むアクション…と思って手に取ったが、そっち側の描写は意外と少なく、文明をほぼ知らずに育っていった主人公の少女時代の描写と、ネイティブアメリカンの文化を踏襲して生活するが、歪んだエゴで主人公の母(誘拐された少女)や主人公に暴力をふるうトチ狂った父親の生き様、苦しみ抜いて生きた母親の人生、父親から逃げ切った後の文明生活と苦労などを複層的に描いていく -
Posted by ブクログ
ある女の子が沼地に誘拐された。彼女は誘拐した男の子を産み、育てた。
その女の子が主人公の母だ。
物語は、主人公の父親が刑務所から脱獄したというニュースを聞いたところから始まる。主人公は娘二人を持つ母親。夫も子供たちも、自分の父親が沼の王と呼ばれた犯罪者であることを知らない。
父親は自然の中で暮らすすべに長け、それを主人公に教えていた。
警察に任されていたら、父親を捕らえることはできない。捕らえることができるのは、私だ。主人公はそう決意する。
主人公の回想シーンと、父親を追跡する現在が混在するのだが。
主人公の一人称で語られる世界の情報の豊かさがすごい。かつてどのように暮らして -
Posted by ブクログ
ネタバレ被害者のその後を描いた作品(ルームとか、棺の女とか)が好きで結構読んでるのですが、少し毛色が違って、被害者の娘さんのお話。ややオオカミに育てられた子ども系の要素あり。
ヘレンがリアリティがあって、本当に存在するこんな背景を持つ人かと思うほど。両親に対する冷静な評価と、拭いきれないこもごもが丁寧に描かれていて、キリキリしながら読みました。
父親が母親を(逆も同じだけど)軽んじている家庭で子どもが育つことの怖さがさらっと描かれていてゾワっとしました。それでも幼いヘレンが良いと思うことをしようとする逃走の場面がとても良い。クライマックスよりも心に残る。
それにしてもこれは、もはや犬小説。。自然と -
Posted by ブクログ
挿入話のアンデルセン童話「沼の王の娘」は、アンデルセンらしく一癖も二癖も読みようによって変わる、およそ“童話”らしくない物語。
その物語を副旋律として作家は現代の問題点を「束縛という最強の暴力の中から生まれた娘」の話を創作した。
ネイティブアメリカンのような生活を描き、あたかもアイデンティティの相違を理由としているように見えても、実は一人の男のエゴから生まれた悲劇であることを描き忘れてはいない。
生まれた娘は、与えられた環境の中でしか判断できないことから当然に善悪の理解は世間と相違する。前半の「ふりかえり」は、そういった意味からとても重要な悲劇の描写。
物語の後半に入り、大切な家族を持ったこ -
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ある誘拐犯が脱走して
そのニュースを聞いた女は
「この犯人を止めることができるのは
自分だけだ」と思う。
彼女はその犯人に誘拐された女性から生まれ育てられた娘だった…
娘は父親の狩りを開始する。
読む前に期待していたのはディーヴァーの様なスリラーで、帯にも「衝撃の〜」とある。
読んでみると二つの場面が切り替わりながら進む
現在:誘拐犯の父親を狩る
過去:父母と生活していた頃
そして章の頭で物語のモチーフであるアンデルセンの「沼の王の娘」の一編が挟み込まれる。
ハラハラする要素はあるけど、過去の"生活"誘拐犯と誘拐の被害者の娘の奇妙な親子の関係性の描写が間に挟まることで、 -
Posted by ブクログ
設定が凄すぎる。凶悪犯の父が刑務官二人を殺害の上脱獄した。娘は家族を避難させ、父を狩るために、原始の森へ帰ってゆく。かつて父に教えられ、父を超えた、あの狩りの技術を駆使して。そういう設定である。
12年前。ヒロインのヘレナは父に誘拐監禁された母とともに森の中の父による幽閉生活から脱出し、父は終身刑を課され重警備刑務所で獄中にあった。その父が脱獄したのだ。
ぼくとしてはワイルドなアメリカ・カナダ国境の山の奥で、父と娘の壮絶な闘いがずっと演じられる作品を思い描いていた。C・J・ボックスの『鷹の王』が描いたネイト・ロマノスキーの凄まじい闘いのように。サバイバル技術に長けていた映画『ラン