山高昭のレビュー一覧
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日経新聞に早川書房社長のコラムの連載があり、その中で著者のクラーク氏のことが触れてあったのを読んだら無性にクラークSFを読みたくなってしまいました。
未読の本書があったので読んでみる。
人類の月着陸船プロジェクトを詳細に描く本作はもちろんアポロ計画より前に発表されながらも実にリアルに描かれた、あり得たかもしれない宇宙計画だ。宇宙へのあこがれや地上の諸問題をほっぽらかしてなぜ宇宙へ行くのかといった観点を正面から描き清々しい。第二次対戦をのりこえて世界がむかうべき道が宇宙に広がっているとか、成層圏の外側に国境はないとか、今読めば赤面するくらい真っ直ぐに描く。月へ向かう多段式ロケットは原子力エンジンで、オーストラリアの砂漠に建設された長い斜路を核汚染物質を撒き散らしながら滑走していく。原子爆弾の諸問題がまだ尾を引いている最中でもこの設定だよ。だけどそれがなんだ!天の光は全てなんとかで描かれたような独りよがりの胸焼けするようなきもい妄想ではない。クラークには明確なビジョンがあるのだ。この2作あとに「幼年期の終わり」が発表される。クラークはやっぱり最初からクラークなんだね。このストレート感がたまらない。なんだかちからが湧いてくる。もう一回クラーク読み直すかな。
現実世界のアルテミス計画がコスパ優先のしょぼいプロジェクトに終わらないことをお祈りする。 -
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宇宙エレベーター建設をめぐるハードSFでありながらも、宗教や異星人とのファーストコンタクト、架空歴史ものの要素も盛り込まれた作品。
宇宙エレベーターの建設への理想的な場所が、3000年の歴史を持つ寺院が建つ霊山の山頂。ここで描かれる宗教と科学の対立。思索的な部分や抽象的な話が多くて、前半はかなり苦戦しました。なんとなく読み進めていたらいつの間にか、具体的な建設の話に移ってしまっていた印象で、自分の読み込みが追い付けなかったのがもったいない……
一方で宇宙エレベーターの描写や、異星人とのファーストコンタクトの歴史が語られる場面の壮大さがよかった。人間の技術では測れない異星人との出会いが人類にもたらした、宇宙への夢や憧れ、そして野望。また超技術を持った異星人が存在するとわかった時、人は宗教を、そして神をどうとらえ直すのか。壮大な思考実験を小説という形で、読者である自分にも突きつけられるような気がします。
そして徐々に実現が近づいてくる宇宙エレベーター。しかし、完成直前に大きなトラブルが起こり……
科学が進んだ世界での宗教の立ち位置や在り方が前半のテーマなら、後半は打って変わって極限の困難に挑む、科学とそして人間の可能性を信じるドラマの部分がより強く打ち出されます。ここも理論がしっかりとしていたり、宇宙エレベーターを頭に描くSF的な想像力は必要とされますが、老齢の技術者がたった一人で困難に挑む姿と、宇宙の描写は分からないながらも壮大かつ、心躍らせ胸熱くするものがありました。
そしてエピローグで物語はさらなる時代を、宇宙を超えて紡がれる。科学と宗教、そして宇宙エレベーターという壮大なテーマを締めくくる、しみじみと残るものでした。
自分の理解が足りず読み逃しているポイントも多々あるとは思うのですが、それを補ってあまりある魅力のある作品だったと思います。 -
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【由来】
・もちろん、出た時から知ってるし宇宙エレベーターだし。ハヤカワの電子書籍50%オフと、それで購入したSF2000レビュー本がトリガー。
【期待したもの】
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【要約】
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【ノート】
・面白かった。大体が一人の男が宇宙エレベーターをつくるのに打ち込むストーリーだが、最後が想像されるような大団円じゃない。ある意味、それを上回る未来讃歌。
・宇宙エレベーターは銀河英雄伝説だったり最近はGのレコンギスタ辺りで出てくるが、SFとしては本書が最初。しかも実際は宇宙工学や物理学の世界で最初のアイディアは提唱されたらしい。それを自分のものにして、ここまでのストーリーをつくる。しかも、細部のディテールは時代を感じさせないどころか、今の時代に読んで、ますます説得力を増しているってのはすごい。 -
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タイトルからすると、新しい世界をつくる機械、新しい世の中を作る機械、という感じがするので機械が主人公なのかと思った。
ところがそうではなく、未来の地球での科学者のお話である。
K理論という、わたしには理解もつかない難しい理論をうちたてた科学者と、それを実現化する装置を完成させた科学者は、その当時の社会情勢が交戦モードになっていることに違和感を覚え、政府機関での研究をやめてしまう。
ある自由機関で彼らの研究を行っていくが、政府が彼らに圧力をかけ始め、結局は政府からお金を引き出させて研究を続けることになる。
最終的に主人公のクリフォード博士が作り上げた装置は、衛星からピンポイントで爆撃できるもののK理論版。それがなぜ「創世記機械」なのか。わたしにはうまく説明できないので(^^;、興味のある方はぜひ読んでみてください。
この作品は1981年に日本で発売されているので、作者が執筆していたのは1970年代であろうと想像されます。つまり、1970年代の世界情勢を色濃く反映されているものになっています。
そう考えて読むと、当時のアメリカ人は「自由主義陣営」対「共産主義陣営」というまさしく「冷戦」が将来はもっと激化して、陣営ごとで戦争が起こると予想していたようです。
中国はインドへ侵攻するし、ソビエトは西と東で分裂して戦っているし、なかなか「未来予想図」として面白いものになっているので、そういう方面として読んでみても面白いですよ。
相変わらず日本はいまいち君として描かれているのが悲しいですが。 -
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2061年、それはハレー彗星が地球に最接近する年。医学の進歩により100歳を過ぎてなお矍鑠としたヘイウッド・フロイド博士は、ハレー彗星に着陸調査する宇宙船に賓客として招待され、未知の世界を楽しんでいた。しかし、そんな楽しい旅の途中で彼が接したのは、孫に当たるフロイド宇宙飛行士が搭乗する宇宙船が「禁断の星」エウロパに不時着したという知らせだった。自力でエウロパから脱出する術をもたない宇宙船を救うために、フロイド博士が採った奇策とは?
あの歴史的名作「2001年宇宙の旅」、その続編「2010年宇宙の旅」に繋がる"Space Odessey"シリーズの1作。シリーズのお約束として、モノリスもボーマン船長もHAL9000もばっちり登場します。
が、これ、別に"Space Odessey"シリーズに位置付けなくとも良いのでは。
SFとしては、普通に面白いです。でも、たぶん執筆当時のクラークとしては「ハレー彗星がらみで何か書きたい」ってだけだったんじゃないかなー、という思いがちょっとします。100歳越えた高齢のフロイド博士を無理に主人公に据える理由はないし、ボーマン船長(であったもの)が登場する理由もないし・・・繰り返しになりますが、SFとしては、普通に面白いんですよ。だから、独立した作品として書けばそれで済むのになー。看板を背負わせたがために、不当に評価が下がってしまう作品だとしたら、ちょっともったいない気がします。 -
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良かった。これこそ、クラーク作品だと思う。実はこれを読むのは2回目なんだけれど、それでも良かった。2001年宇宙の旅、2010年宇宙の旅と続いているシリーズもののような作品群なんだが、3つの中では特に2061年がよい。
クラークが好きであるところの、人類より高い知性を持った異星人がテーマとなっているんだが、この高次の知性を「遥かなる地球の歌」でみられるような哲学&宗教的な「神」とするのでもないし、「宇宙のランデヴー」のように隠しきってしまうわけでもない。高次の知性を、もっと人間くさく描いているという感じだ。
高次の知性に憧れるのはよく理解できる。これを第二の神としてあがめる気持ちも理解できる。不老不死ではないけれど、未来の人類と高次の知性というのはけっこう同一視される場合が多いのだが(キングギドラがはじめて登場したときに宇宙人はガンを直す薬で人類を釣った)、未来の人類が地球ベースであるのに対し、高次に知性は常に宇宙スケールだ。
2010年で木星を爆発させて新しい太陽を作ったその後が2061年の出だしであるわけなんだが(同時にこの新しい太陽が消えるのが2061年のおわりである)、その木星に存在する生命体を描く感じはアシモフを思わせるのがユニーク。
今回の2061年で、とにかく目新しいのは、人間は死ぬがその魂は別の次元で生き続ける(こんな言葉ではないがわかりやすいように私が翻訳した)という古来から有る概念だ。この概念を用いて、人類とそれより高い知性体、低い知性体を描いている。で、私が思ったのは、これってクラーク自身じゃないかなってこと。クラーク自身が、今より1秒でも先を見たいだろうに、寿命には限界がある。だから、魂はより高いところから未来を見ているんだと信じたいってな感じかなぁ。
他にも新しいのは、愛よりも正義や真実が大事であるという概念ね。これって好きだなぁ。愛が全てと言うような映画や本は私は苦手だから。
とにかく次の「3001年宇宙の旅」が楽しみだ。 -
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「神の鉄槌」では幻滅したが、こっちは良かったなぁ。1990年の作品だが、とても良かった。
筋書きは、タイタニック号を引き揚げるという近未来のSF。もちろん、これにまつわるさまざまなドラマが展開される。私には無駄と思える登場人物も沢山いるが、それはそれなりにクラークがいいたいことを代弁させる役割として許してしまえる感じ。
中身は非常にハード。ハードSFと言う言葉が一斉を風靡した頃の流れがここにある。日本では(今はどうしているんだろうか)堀晃氏等がハードSFをよく書いており、私も好きだ。ハードSFって明確な定義は知らないが、要するにひとつふたつの虚構(仮定)を除けば、かなり理論的な展開が存在することだと思う。
この作品ではマンデルブロー集合の話がある。数学に詳しくなくても、その魅力はパソコンなりでよく見る形だけに一般に知られているだろう(だから私も知っている)。タイタニック号の引き揚げという目でこれを見るとあまり面白くない(お決まりの結末)。
でも、それが大きな背景となっており、その背景の中でいろんなドラマなり論理的な楽しさがあるというのがクラークの雰囲気かな。地球から一気に宇宙空間に飛ぶエピローグのキレもいいと思うし、クラーク自身による25ページに及ぶ謝辞や資料、講演会記録なども読みごたえがある。
物語の中で引用するにもっともふさわしいところを私の言葉で少し書いてみる。
問題1:
2つの正四面体がある。この2つを放して置くとき、面の数は合計いくつか。
答え1:
8。(当たり前)
問題2:
2つの四面体のひとつの面をくっつけて1つの立体を作る。新しくできた立体の面の数はいくつか。
答え2:
6。(互いにくっついた面がひとつずつ消えるから、これも簡単)
問題3:
正四面体とピラミッドがある。この2つを放して置くとき、面の数は合計いくつか。
(正四面体の全面の三角形とピラミッドの側面の三角形は等大とする)
答え3:
9。
問題4:
正四面体とピラミッドのひとつの面(三角形)をくっつけて1つの立体を作る。
新しくできた立体の面の数はいくつか。
答え4:
7。
さて、答えの1~4の中に間違いがある。もちろん、トンチではない。これが頭の中で解る人がいれば私は感動する。私は絵を書いてようやく理解できた。とても面白いのでこの立体を作ろうかと思うほどだ。作品には直接関係ないが、面白い問題だったもので。 -
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人工知能がテーマの傑作
2028年。人工知能がどこまで進化するのかを確かめるため、隔離された環境である宇宙ステーションでの実験が実行に移された。
自分を守るという命題を与えられ、人を攻撃することを強いられる人工知能。やがてその攻撃は実験の想定範囲を超えてしまう。
あわやというとき、人工知能は自身と人の共通性を推論し、一気により高度な知能を開花させる。
登場人物に多少のインフレ感があるものの、無駄のないプロットに加えて序盤から中盤への爆発的なテンションアップ、序盤の伏線をラストで一気に開花させる小気味よさと読むものを飽きさせない。
いやぁ、おもしろい。映画にすればとても絵になる戦闘シーンが続出するし、3つのシーンが同時並行するクライマックスも緊張感があり映画向きだろうと思う。加えてエンディングが非常にきれいだ。
しかし、しかし、コンピュータが推論の無限関数の結果として知能をもつというのは私にはどうしてもピンとこない。それがどうしてもひっかって、熱中するまでには至らなかったのも事実。
現実の未来はどうなるのだろうか? 長生きして知りたいものだ。