中村敦夫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
まさかラストで笑うことになるとは思わなかった。
自分も高校、大学、就職、どこかで失敗してそんな時に普通に暮らしていたら出会わないような優しさを与えられたらコロッといっちゃうかも……と怖くなった。
財産も全て手放して、自ら周囲の人々と縁を切って。それから気づいたってもう戻れないし、それが怖くてさらにのめり込んでいく。
宗教ってよくできたビジネスだなぁ。
そもそも、宗教の興りじたいが権力を欲した男が「神の言葉を聞いた」と言って政治を始めたことなのだから当然なのか?
でもきっと、信者からすれば私たちが学んで信じている科学の方が宗教なんだろうな。 -
Posted by ブクログ
⭐︎4.0
・未婚の信者を「シープ」と呼び、社会や家族から孤立させることで忠誠を誓わせ、団体の無賃労働者にさせる「敬霊協会」。協会に巻き込まれる若者とその家族、そして内部の者。様々な立場から見た協会の狡猾な"洗脳"の全貌が描かれている。
・今作は特に宗教団体の"中身"の描写が詳しくて新鮮だった。1人の若者を信者にするまでの過程や協会の内部の者それぞれの役割などが丁寧に描かれていて面白い。1人の信者に対しあらゆる役割の者が働きかけ、徹底的にマニュアル化された研修を経て少しずつ取り込んでいく。気付けば社会からも家族からも孤立し協会に身を捧げるしかなくなる。宗 -
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著者中村敦夫は、言わずと知れた「木枯し紋次郎」だが、役者にとどまらず、ジャーナリスト、テレビキャスター 政治家等、経歴は多彩である。著者については、だいぶ前に評論「さらば、欲望の国」(2004年、近代文芸社新書)を読み、生きる姿勢、文章力とも私は高く評価していたが、この小説の存在は最近まで知らなかった。
テーマは統一教会(作中では「国際キリスト敬礼協会」)。不倫調査、興信所の下請け等で食いつないでいる冴えない探偵牛島に、「人さらい」の依頼が来る。依頼人は水回り職人の松本で、妙な宗教団体に行ったまま戻らない息子を取り返してほしいという。金になりそうもないし、面倒なので、牛島は費用を過大に見積 -
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中村敦夫『狙われた羊』講談社文庫。
著者の中村敦夫は『木枯し紋次郎』で主役を演じた有名な俳優で、作家やキャスター、ジャーナリストでも活躍しており、統一教会と揉めた過去を持つ。
今現在、元首相の暗殺に端を発した政界と世間を騒がしているカルト宗教団体をテーマにした問題小説が、30年の時を経て文庫化。なかなかのリアリティ。30年前に統一教会のカルトとしての正体が暴露されていながら、何故に現在も存在しているのか……
もっぱら浮気調査ばかりをしていた自由ヶ丘探偵社の探偵、牛島は依頼人から怪しげな団体に取り込まれた息子を奪還して欲しいと頼まれる。
少しずつ調査を進め、団体の正体を知る牛島だったが… -
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Instagramで紹介されており、カルト宗教の洗脳と脱会に興味があったので読んでみました。
一番印象的だったのは、入信前にカルトの研修合宿(睡眠不足の疲労困憊状態で畳み掛けるように洗脳教育を受けた)に参加した大学生が、翌日大学に行くと教室全体が墓場のような雰囲気で教授も学生も死人のように感じる。といった場面。
研修場所で感じた生気、情熱、高揚が大学にはないと感じ、さらに入信へと傾いていくのですが…
こうやって都会に出てきた寂しい気持ちにつけこまれた若者が洗脳されちゃうんだなぁと実感したシーンでした。
宗教の説明シーンが長くて飛ばし飛ばし読みましたが、全然知らない世界の話だったので勉強にな -
Posted by ブクログ
非常におもしろかった。
インドネシアのことをあまり知らなかったので、
インドネシアの近代史がよく理解できた。
しかし、惜しいかな。
小説になりきれていない。
つまり、主人公の堂田が、あまりかっこ良くない
というか、活躍しきれていない。
ジャカルタの目 という テロリスト集団?
が、インドネシアの独立宣言の原本を盗むことから始まるが、
一方で ヤクザが連続的に大量に殺されるという事件があり、
怨恨があり、オヤの敵討ちがあり、
そして、日本の商社が利権がらみで暗躍したり
じつに 話題満載すぎて、焦点が絞れないところに、
途中で 飽きてしまうところがある。
影絵師が、重要な役割があるのに、
その