立地が悪いわけでもないのに新しい店が入っても、直ぐにつぶれちゃう場所ってみんなのまわりにもあると思うの。流行って無い訳じゃないのに、何故かいつの間にかなくなってる。そんな場所が。
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レイワ怪談シリーズ、早くも三冊目。私がこの本の雰囲気に慣れてきたのか、それとも怖い話ばかりだと対象年齢層には
...続きを読む怖すぎると判断されたのかだんだん怖さが少なくなっている印象。怪談に絡めた教訓話のようなものも出てきて、純粋に怖い話からはちょっと路線変更したのかもしれない。(児童書なので)
怪談本なので怖い話(上記では路線変更したのかといっていたが、怖い話の方が比率は圧倒的に高いのでご心配なく!)はあったので、その中からお気に入りの話をいくつかチョイス。 お気に入りの話は「つぶれる店」、「覗かれる」、「学級閉鎖」。
「つぶれる店」は、商店街に一か所だけ、なぜかどんな店舗が入ってもすぐに閉店してしまう場所をめぐる怖い話。 非常に活発な商店街に、たった一か所どのジャンルの店が入ってもすぐにつぶれてしまう場所があった。語り手の記憶をたどるだけでも、4~5回以上は店舗が入れ替わっており、その店舗全てが何か問題を起こしたり、変な噂があったりという話を聞かない店ばかり入れ替わる。むしろ流行っていたのに、突然何の前触れもなく閉店したりしていた。商店街の中にあるので、立地が悪い訳では無いのに何故だろう、と思案していると、不意に店舗の横側にある小窓に何かあるのを見つける。その内側でなにかうごめいている気がするのだ。気になって覗き込もうとすると、空き店舗の隣で店を構えている寿司屋の大将に、覗き込まない方がいいと止められた。怒られると思っていた語り手は、まるで自分を案ずるような止め方に、不審に思っていると、寿司屋の大将の口からこの空き店舗が抱える恐ろしい過去を知ることになる。 場所に関係する怪談、店舗や家屋に関係する怪談は本当に素晴らしい。場所にとどまった呪いというのか、穢れというのか一度そこでよくないことが起こると、その後にそこに滞在した人たちも一様にして不幸になったり、酷い目にあったりする。一番最初にその店舗で事を起こしてしまった店主に、何があったのかはわからないが、相当思い詰めての行動なのだろう。その後も、その場にマイナスの感情が留まり続けて、渦巻いてしまった結果全てを排斥する様な有り様になってしまったのだろう。 いまだにそこに留まり続ける者の胸中たるや。しかし、後から入ってきた人たちも、自分の店舗を持つと言う夢を胸に抱えてやってきたのだから、その者の胸中がいかにと言えど、理不尽極まりないのは変わり無い。
「覗かれる」は語り手の住むマンションで起きた怪異。語り手はいつも通りベランダで洗濯物を干していると妙な視線を感じた。そちらを見てみると、隣室のベランダの仕切りから男が目をかっと見開いてこちらをのぞいている。
常軌を逸している表情に、驚きながらも声をかけるが、反応はない。不審に思っていると、語り手は突然ある事実を思い出し、恐怖にかられ部屋へと急ぎ戻る。語り手の記憶が正しければ、隣は空き部屋だというのだ……。 安心できるはずの我が家に襲い掛かる恐怖体験。覗いていた男をめぐる話で、この覗いてきていた事件を皮切りに、次々と怖いことが起こり続ける。覗いてきていた男は、見つけてくれたことがうれしかったのか知らないが、ただの隣人である語り手の前に異様な姿でたびたび現れる。何か伝えたいことがあるのか知らないが、現れる姿が異様すぎるし、男の現状を知った今、とてもまともに相手できる手合いではない。何度も何度も異様な風体を見せられる語り手の身にもなって欲しいものだ。最後の最後、この生活に耐えられなくなった語り手が、引っ越しをする前日の夜寝ている時にも表れ、しかもそのあらわれ方がかなり最悪だった。完全に悪意があるか、何か伝えたいことがあったにしても、あまりに一人よがりすぎる。というか、招いてないのにどうやって中に入ってきたんだ……。あまりに怖気の立つ話だった。
そしてこの話は話自体も怖いが、挿絵も不気味そのもの。久しぶりに怖い挿絵を見れて満足である。(ほかの話も怖いが、ダントツに怖かった)
「学級閉鎖」は語り手が小学生時代の友人と再会したことで思い出される恐怖。夜に急にラーメンが食べたくなった語り手は、おのれの欲望に負けラーメンを食べに行くことに。席に座ってラーメンを待っていると、自分の名前を呼ぶ懐かしい顔が入り口から入ってくる。 近況報告や思い出話に花を咲かせていると、不意に小4の時にあった騒動のことについて友人は話し始めた。その話をきっかけに、語り手の脳裏にはあの日にあった恐怖体験がよみがえっていった。 友人が言う小4の時の大騒動がなかなかに気持ちが悪い。掃除用具のロッカーから出てきたその何者かがどういう者なのかが分からないが相当強い存在の様子。そうでなければ、クラスの半数ほどを一時的に不能状態にし学級閉鎖まで追い込めないだろう。しかも、語り手の予測では、その者はある程度移動できる様子で、行く先々で同じようなことをしているに違いないだろう。なんというか、一個人の幽霊の慣れの果てなのか、はたまた妖怪のようなものなのか、あるいは神がかりてきな存在なのか……。いずれにせよ、不気味な見てくれから、よい物じゃない(こいつが現れると質の悪い風邪のような現象に襲われるので、 絶対良い物じゃない)。何を基準に様々な場所に現れるのだろう。友人の母親が体調を崩しているとの事だが、本当にそれは風邪なのだろうか……。話の中では後遺症のが残るという話はなかったので、それがせめてもの救いかもしれないが、相当しんどそうなのでできれば最初から関わり合いになりたくない。
最初にあんまり怖い話なかったかも……、と言っていたが、感想を書くために読み返すと、中々ショッキングな内容が多かった。怖いというよりは衝撃的過ぎて怖いの感情よりその衝撃が勝ってしまったという感じ。 他者の自殺の記憶を追体験する話や、久しぶりに田舎に帰ってきた語り手が体験した出来事などは、改めて読むと何とも言えぬ怖さだった。 やっぱり自分が連続して読んでいるので、このシリーズの雰囲気に慣れてきてしまったのかもしれない。