【感想・ネタバレ】5分後の隣のシリーズ レイワ怪談 青月の章のレビュー

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Posted by ブクログ

怖いだけじゃなく、ほっこり癒やされる話や凄く泣ける話など、本当に面白かった。
ただ、最後のバンドメンバーの葬儀の話はゾッとした…

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2022年12月12日

Posted by ブクログ

僕のすむ村には、入っちゃいけないっていわれる山があるんだけど、入っちゃいけないっていわれると、入りたくなる。でも、その山へ続く橋は他の橋とは全然違ってて気味が悪かった。今思えば、あそこでやめておけばよかったんだ。

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久しぶりの読書。しばらくヒスイ地方で延々ポケモンを捕まえていたり、なんだりかんだり。レイワ怪談シリーズも早くも5冊目。既刊はこれで読み切り、今後の展開を楽しみにするというところである。今回の巻もゾッとする話ももちろんあるが、やや怖さは控えめでマイルドだと感じる。
1冊目がかなり怖かったので、ちょっとやさしめにしようということにやはりなったのかも?そんな中でも怖かったのは「山の学校」、「禁足地」。「山の学校」は小、中学生に向けて行われる林間学校のようなイベントで起こった出来事。中学生である語り手は、参加している小学生の面倒をみる立場にある。 それ自体は問題がないのだが、今から行われようとしている催し物に問題があった。夜の森を使っての肝試しである。怖い物やお化けにめっぽう弱い語り手は、この催し物が嫌でしかたがない。
小学生をサポートしなくてはいけないので、行かないわけにはいかないし、上級生として取り乱すわけにもいかない。自分の状況を憂いでいると、ボランティアとして参加している姉が、からかいの声を投げかけていた。他人事だと思って面白がる姉に立腹しながら、いよいよ自分の番になった頃、姉が見知らぬ女が混じっていたと言い出す。また、そんなことをいって怖がらせようとしているのだと思った語り手は、この発言をスルー。しかし、既にこの時から、語り手を襲う恐怖はそこまで来ていたのだった。 楽しいはずのイベントで見舞われた恐怖体験。
参加したくない肝試しをこわごわ終わらせ、一息ついている語り手に追い討ちをかけるようだった。この肝試しでなにか起こるのでは?と思っていたが、本当に怖かったのはそこから先の話。肝試しなんて、怖くともなんともなかったと思わせるほどの恐怖。避けたいのに避けられない、むしろ自ら向かっていってしまった語り手はこの後、果たしてどうなってしまったのだろう。この後何があったかは明らかではないが、存在を見つけてもらっただけで満足してくれていたらいいが……。

「禁足地」は入ってはいけない山をめぐる話。小学生である語り手のすむ村には、足を踏み入れてはいけない山があった。その山は『御山』と呼ばれ、長年禁足地として言い伝えられている山らしい。しかし、入ってはいけない明確な理由があるわけではない。理由もなく入ってはいけないと言われれば、真相が知りたくて入りたくなるのが人の性。禁足地である御山は、語り手の冒険心をくすぐるに十分すぎる存在だった。仲のよい友人ふたりと連れだって、御山まで赴いた語り手であるが、語り手達と御山とを隔てる川に掛かっている橋の異様さに早くも来たことを後悔しはじめていた。
怖じ気づき、帰ろうかという相談を始める語り手と気の弱い友人。しかし、もう一人の怖いもの無しの友人が、一人で行ってくると言い出す。とんでもない事を言い出した彼に面食らっていると、明らかに雰囲気がおかしい。いつものハツラツとした表情はみる影もなく。虚無をたたえた無表情。あまりの変貌ぶりに再びぎょっとしていると、不気味な笑みを口の端にはき、制止の声を振り切って、彼はそのまま橋を渡って山に分け入ってしまった……。
何人たりとも足を踏み入れてはならないとされる禁足地。入ってはいけないといわれているが、明確な理由を知る子どもはいない。だから理由が知りたいし、何があるのか知りたいというのが人間だろう。というか、この手の怪談は何で入っちゃいけない理由を子どもにいわないのだろう。大体大事に至った後に「実は……」と話し始める。まさにそこはセオリー通りだが、言っておけばこんなことにならなかったのでは?というのは無粋だろうか。理由が神聖なものならあんまり効き目はないかもしれないが、この度の理由はかなり不穏なものだ。
小学生だったとしても、かなり恐怖心をあおられ近づくこともためらっただろう。出来事自体は大昔にあったことだし、村の負の歴史をわざわざ子ども達に知らせることもなかろうと、隠していた大人達だがそれが完全に裏目に出てしまっている。橋を渡ってしまった語り手の友人は向こう側で何をみて、どんな目にあってしまったのだろう。友人がすでに語る術を持たない今となってはわからない。友人があまりひどい目に合うことなく……。ということを祈るばかりだが、負の歴史の忌まわしさを考えるに、多分そうはいかないだろう。

あと、それともう一つ。先では紹介しなかったが、お気に入りの話を。 「懐かしい広場」というタイトルのこの話は怖い話ではなく、感動する話でもなく、どこか物悲しさを含んだ怪談。地元に帰ってきた語り手が、子どもの頃の思い出を思い返しながら実家へと足を進める。その途中、よく遊んだ公園へ立ち寄った。懐かしい遊具を眺めつつ、さらに奥に足を進め昔遊んだ広場へ行こうとするが、道は途絶えそこにはたどり着けない。たどり着けないことを何となく知っていた語り手だったが、たどり着けない悲しさと寂しさに思わず胸を締め付けられてしまう……。
子どものころにだけたどり着けた公園の奥の広場。そこだけ聞くと素敵なファンタジーだが、大人になってしまったことによってその場所を失ってしまった語り手の心情を考えるとそうでもない。大人になることによって子供の頃に抱えていたものを失ったり、あきらめなくてはいけなくなったりするものだが、それがより一層感じられて、大人の私が読むと胸に刺さって逆にきつい。ひとしきり遊んだ後、帰るときに見た夕日が沈んで紫色になった空を見た時のような寂寥感が胸いっぱいにこみあげてきた話だった。

感想を書きながら、本をめくると、やっぱり怖い話が多いような気がする。私が怪談を読みすぎて慣れてしまったのか?それとも、感動する話が頭に残ってしまって、そのほかの怖さが薄れてしまっているのか。 どちらなのかちょっと判別がつかないが、12月に発売される予定の新刊が楽しみ!

(新刊3月だと思ってたけど、まさかの12月。ほぼ1年後……)

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2022年02月11日

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