アンソニー・トゥーのレビュー一覧
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まさか、このテーマの本で感動するとは思わなかった。。
■ 著者アンソニー・トゥ氏
台湾生まれ、日本が台湾統治をしていた時代に日本語教育を受けていたため 日本語で死刑囚の中川と直接対話できたことが、事件解明において決定的だった。
日本の加害の歴史すら、数十年後には人類の命を救うことに転化する可能性がある――という逆説的なつながり。日本がやった歴史はともかく、台湾統治時代からその糸がつながっていたかと思うと、感慨深い。
科学者としてだけでなく、歴史のなかで事件と事件、人と人を「つなぐ」存在だったことに、圧倒される。
■ 中川智正
マレーシアでのVX暗殺事件を見て「これはVXだ」と即答できた -
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著者であるアンソニー・トゥー氏と中川智正元死刑囚との面会及びメールでのやり取りの記録と、そこから見えるオウム真理教幹部の役割や、サリンやVXなどの化学兵器、ボツリヌス菌や炭疽菌などの生物兵器開発の過程をまとめたもの。
死刑囚との対話の過程(手続き的なものを含めて)や確定死刑囚の処遇等々からして初めて知ることが多かった。また、中川氏の人となりについても、初めて触れる部分が多かった。ここまで情報交換をし、その上で一連の事件の考察ができたのは、著者が中川氏を一人の人間、もしくは科学者として敬意を払い、関係を丁寧に構築したこと、その信頼に中川氏が応えてきたことが大きいように思う。
最終章「中川氏最 -
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【覚めての告白】サリン事件への関与等により死刑判決を受け,2018年7月に執行がなされた中川智正。執行の直前まで行われた面会や文通を通し,オウム真理教が化学兵器へと手を染める課程やその内情に迫った作品です。著者は,コロラド州立大学名誉教授のアンソニー・トゥー。
当事者の独白として生々しい肉付けを伴うと,すでに情報としては知っていることでも改めて現実感を伴って感じられるものだなと痛感した作品。日本社会にとっても一連の事件は分水嶺であったと思うのですが,それらを振り返る上で大変貴重な一次資料であることは間違いないと思います。
〜私は6年間にわたって,彼と文通や面会をしてきた。彼を死刑囚としてで -
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サリン事件に関わった医師の1人、中川死刑囚。執行されたこともあり、ようやくこの人のことを知ることができた。京都府立医大に入れたのだから秀才なのは間違いない。その人がどうして、というのは、もうひとりの医師林郁夫と並んで興味を持っていた。ただ、林郁夫は積極的な捜査協力もあって、無期懲役に減刑され、手記もまた出ているからある程度は知ることが出来てたが、中川に関しては余り知らなかった。結局麻原に帰依した部分などはよくわからなかったが、言葉の端々からは承認欲求が強かったのかなとは思ったりする。
著者は幾度も重ねた面会の中で中川の誠実な回答に満足していたようだ。実際彼の証言はサリン製造に関係して大変興味深 -
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地下鉄サリン事件は何より衝撃的だった。日本人の記憶に共有された事件として、誰もがあのときに自分はどういうことをしていたと語り合うことができるほど、大きく日本現代史に刻まれている。
そして事件発生後20年以上経った2018年7月、オウム真理教教祖麻原彰晃を含む13人の死刑が執行された。本書の主役である中川智正もその一人であった。ここに書かれている内容の一部は、彼の死刑後であれば公開してもよいとされたものであり、皮肉なことに望まない彼の死刑執行が本書刊行のきっかけとなったのである。
著者アンソニー・トゥー(杜祖建)は、毒物専門の化学者であり、サリン検出の方法を警察に伝えるなど、オウム事件の捜査に -
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日本統治下の台湾に生まれ、米国で学んだヘビ毒学者で、日本のサリン事件解決に協力した上にオウムの中川智真正死刑囚との対話集まで出版したという奇矯な経歴の著者が化学兵器、生物兵器について概観した一冊。
米国の炭疽菌テロからオウム事件、日本軍731部隊、金正男殺害事件から、新型コロナウイルスの生物兵機説(著者は否定的)に至るまで幅広く概観した後、民間防衛(Civil Defence)の重要性について語る。全般的に著者の見識は卓越しているのだが、いかんせん表層的に過ぎて薄っぺらいのは角川新書の編集方針がそうだからなのだろうか。あまりこの新書シリーズで面白い本に当たったことがない。 -
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中川智正の視点からの証言として貴重な記録だと思う。
特に中川からの手紙が原文のまま掲載されている点や、中川の他のオウム関係者の印象を聞き出している点など。
彼自身は周りに載せられて、皆を喜ばせようとしていたら殺人にまで手を染めてしまったという印象。この本を読めば、そして彼にあった人々の印象としてもいわゆる「良い人」というイメージを持っていしまう。しかし彼の罪はあまりにも大きい。
殺人罪
坂本一家
落田薬剤師
VXによる大阪での殺人
松本サリン実行
地下鉄サリンのサリン製造
殺人未遂
滝本弁護士襲撃
VXによる襲撃2件
新宿駅青酸ガス
東京都庁小包爆弾事件
仮谷氏拉致監禁致死
こんな事