山本芳久のレビュー一覧
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本書は神学という営みがどういうものであるかを問いかける書。哲学と神学との関わりはあまり日常的に意識されることはない。しかし哲学の中に神学的な問いかけがあり、神学の内に哲学的な洞察が含まれることを、本書は明示してくれる稀有な本である。著者の二人の対話の中で持ち寄られる本がちょうどその時を掬い取るようにして、言葉が下りてくるような体験を読者もまた経験できるであろう。
教皇フランシスコの「無関心のパンデミック」への応答としての、祈り。一見近寄りがたく思われるグァルディーニ枢機卿の祈りについての洞察が特に印象的であった。代表する神学者と評されながらもあまり触れることのできない方であるが、陰に陽にその -
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「親和性による認識」cognitio per connaturalitatemという神学的言葉がある。日常の言葉で言えば「好きこそものの上手なれ」という言葉に表されるような事態を掬い取る言葉である。本書はトマスの徹底的に理性的な思考がいかにして神学的思考と接続されるのかを明らかにする本である。キリスト教はわかりにくいと思われることがあるかもしれないが、本書はキリスト教の基本的な発想を明晰な言葉で表しつつも、西欧の言語で語られるところの神学的問題へと読者を丁寧に導く神学入門となっている。
本書はその章立てから見て取れるように、トマスの神学の方法論と徳論と愛徳論を扱ったものである。まずはトマス -
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本書は多数のトマス・アクィナスについての著書を出されている著者による新たなトマス論である。とはいえ著者の著書はそれぞれの叙述が相補うようにして記されており、本書もその例に漏れず今までの著作を補う一冊と言える。あとがきに記されているように、一般向けに著者が著した『トマス・アクィナス 理性と神秘』(岩波新書)と『トマス・アクィナス 肯定の哲学』(慶應義塾大学出版会)の二冊を難しいと感じる読者に向けて書かれている。
本書の特徴は「哲学者」と「学生」の対話を通して『神学大全』の様々なテクストが具体的に引用されていることにある。主題に応じて選ばれるテクストを読むことを通して読者に『神学大全』の豊かさ -
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本書はキリスト教に興味を持った人に真っ先に薦めたいキリスト教入門である。「学びのきほん」シリーズの一冊である本書は、帯に二時間で読めると書かれている通り、短い紙幅にエッセンスをギュッと凝縮したキリスト教入門である。とはいえ必要な部分だけを解説するというスタイルではなく、アブラハムの宗教と言われるユダヤ教とキリスト教とイスラム教の関わりから説き起こし、何が共通していて何が違うのか、そして聖書には具体的に何が書かれているのかという全体像を示しつつ、そこからキリスト教のエッセンスを旧約聖書、新約聖書、アウグスティヌス、教皇フランシスコ、ヘンリ・ナウエンのテクストそれぞれから析出していくというスタイ
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本書は類書のないキリスト教思想入門である。多くの入門書や概説書はある決まった枠組みを読者に提示することが多いのだが、本書はむしろどうしてそういう発想に至るのかという、その一歩手前の部分から説き起こす。その理由は本書が同名のラジオ番組をもとに書き下ろされたものだからであろう。噛んで含めるような語り口によってその惟一回の好機を掬い取ろうとする本書は、ともすれば難しく感じてしまうテクスト群を、実際に読み解くことを通して生き生きと読者に提示してくれる。
本書は著者の『キリスト教の核心をよむ』がそうであるように、キリスト教に興味を抱くすべての人に勧めたい一冊である。入門書であると基本的な事柄に終始す -
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教皇フランシスコが帰天されて、様々な憶測が飛び交う中、新たな教皇レオ14世が選出された。本書でも指摘されているように様々なメディアが「革新か保守か」といった対立軸の中で、その政治的動向がさも重要事項であるかのように報じてきた。しかし一人の信仰者としては、教皇フランシスコの喪失をうまく受け止められないままに、新たな教皇の選出を静かに見守っていたというのが自分にとっての素直な実感であった。2013年に教皇フランシスコが選出された時にある種の必然的な導きを感じさせられたのと同様に、本書は旅する教会が新たな教皇を選んだその必然性を改めて確認させてくれるものである。
本書は数多くのトマス・アクィナス -
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この論文を読むためにだけこの本を買わなければならないというものがある。リーゼンフーバー氏の『中世における知と超越』所収のトマス・アクィナスの存在論をめぐる論文、『命題コレクション哲学』所収の神認識論はそのようなものに数えられるであろう。それらはのちに著者の大著『中世哲学の源流』に収録されることとなり、日本における中世哲学研究の結晶として今なお輝きを放つものである。相次いで刊行された『中世哲学の射程』と本書『存在と思惟』はその主著『中世哲学の源流』のハイライトともいうべきものである。本書『存在と思惟』に先んじて刊行された村井則夫編『中世哲学の射程』は中世文化を闡明し、中世哲学研究の前庭を読者に
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山本芳久著『三大一神教のつながりをよむ』の感想です。
キリスト教VSイスラム教という対立で捉えられがちな一神教の解説ですが、論点を絞った非常にわかりやすい本です。
旧約聖書(タナッハ)、新約聖書、クルアーンのそれぞれにおいて(あるいはユダヤ教、キリスト教、イスラム教のそれぞれにとって)、啓示とは何か、アブラハムやイエスはどういう存在かが、やさしく解説されています。
特にイスラム教には馴染みがなかったのですが、イスラム教でもイエス(イーサー)は五大預言者の一人で、優れた預言者だからこそ(十字架の上で)そんな悲惨な死に方をするわけがない、と考えられているというのは初めて知りました。
耳障り -
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【世界は善に満ちている】 山本 芳久 著
またまたPodcastからの情報で恐縮です。トマス・アクィナスを扱っており、その参考文献として紹介されたものです。彼の思想を哲学者と学生による対話形式で明らかにし、「哲学講義」とありますが、とても読みやすく仕上がっています。
トマス・アクィナスは神学者で『神学大全』を記述したという知識しかなかったのですが、ものすごい「ポジティブ思考」ということがわかります。「神」「愛」「善」などが登場するので、ここでの紹介は憚られるのですが、いわゆる現在の「ポジティブ・シンキング」ではなく、理論を突き詰めてこうしたものが実在することを証明しています。また、直接 -
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ネタバレ悲しみや怒りといった感情の根底には、愛があるのではないかとぼんやり思っていたところに、この本と出会いました。まさに私が今欲していた答えを、この本がくれました。
感情は、自分の外界の事物から影響を受けて受動的に起こる。さらに、善なるもの(道徳的な意味合いだけでなく、便利だったり快楽的だったりするものも含む)に魅力され、それが心に刻印されるような形で、愛が生まれる。そう考えると、世界には現在も私を魅了する善なるものが既にあり、世界はこれから私が魅了されうる可能性のもので溢れている、ということを言語化してくれました。
感情的すぎる自分に疲れ、解消するような本を探してこの本に辿り着きましたが、やは -
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これは読まねばならぬ...と幾度と決意し、その度に通読失敗を重ねてきた「ニコマコス倫理学」。
ついに100分de名著に助けを求めることに...
アリストテレスが著した史上初の体系的な倫理学の本。あらゆるもの・行為は「善」を目指し、そして最終的に収束する「最高善」は「幸福になること」であるいう前提に立ち、その実現に向けた実践を意識した論展開がなされる。
倫理学が扱う範囲を「たいていの場合にあてはまる事柄」と定義しており、これは自然科学が扱う「常にそうあるところのもの」と対比されているのがいい。ひとが「善い」と感じる事柄はひとつではないけども、ある程度の方向には収束するものだというバランスのいい -
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中世において、哲学と神学を調和させるスコラ哲学を大成させた大学者として知られるトマス・アクィナスの思索を、トマスのテクストに愛着を覚える著者がそれに従って自らがもつ善を分け与えようと、丁寧な語り口で描いていく
理性と神秘(信仰)は対立するものではなく、信仰によって理性が新たな次元へとステップアップし、理性によって信仰がより深まるといった形で調和するものだとトマスは言う
同じく、トマスはアリストテレス主義者としても知られるが、実際はアリストテレスの哲学を援用して自身の神学を補強したことは間違いないが、哲学を神学の婢のままにすることなく、神学を用いて哲学に新たな概念を付け加えるといった形で調和が見 -
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ネタバレ愛をテーマに、プラトンのエロースからアリストテレスの友愛といったギリシャ哲学、アウグスティヌスから著者が専門のトマスアキナスまで、キリスト教に限らず哲学のエッセンスが分かるのが良かった。
単なる哲学の解説ではなく自分の心のあり方を考えるきっかけにもなる。
アウグスティヌスが神への愛を語る「告白」の解説では「まず働きかけてくるのは神の側だと言うことです」という。何かを追い求めるのではなく、出逢った御言を受け入れる、受動的な態度が印象深い。
トマスアキナスでは、感情論について、感情は受動的な仕方で生まれてくるという。自己愛があってこそ隣人愛が生まれる、という説明に、著者の温かさを感じた。自己愛と隣 -
購入済み
読みやすいです
『愛のあるところ目がある』という一文にひかれた読みはじめました。
トマスアクィナスの著作に興味はありますが、哲学と神学の素養がなく、
ボリュームもすごいのであきらめていましたら、このとっつきやすい本が
見つかってよかったです。カトリックの深さ広さを感じる一冊と思います。
なぜかガンバロウと思いました。 -
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トマス・アクィナスの「神学大全」という大作のうち、感情論にテーマを絞ってトマス哲学の核心的な位置づけと見なされる肯定の哲学という観点から講釈いただけております。哲学者と学生の対話形式で綴られていますので、取っつきやすくかつ日常的な例を挙げてながら進めているので、自分の経験とリンクさせて理解が深まる。
喜びや希望といった正の感情、絶望や恐れ・忌避などの負の感情含めすべての根源的な感情として「愛」があるのだ。絶望・恐れ不安に襲われている際にも、そこには対象「欲求されうるもの」への愛所以という論理を心に留めておくことで、直面している悲惨な現状に対して少しでも拠り所として機能するのではにないか。