山本芳久のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
山本芳久著『三大一神教のつながりをよむ』の感想です。
キリスト教VSイスラム教という対立で捉えられがちな一神教の解説ですが、論点を絞った非常にわかりやすい本です。
旧約聖書(タナッハ)、新約聖書、クルアーンのそれぞれにおいて(あるいはユダヤ教、キリスト教、イスラム教のそれぞれにとって)、啓示とは何か、アブラハムやイエスはどういう存在かが、やさしく解説されています。
特にイスラム教には馴染みがなかったのですが、イスラム教でもイエス(イーサー)は五大預言者の一人で、優れた預言者だからこそ(十字架の上で)そんな悲惨な死に方をするわけがない、と考えられているというのは初めて知りました。
耳障り -
Posted by ブクログ
【世界は善に満ちている】 山本 芳久 著
またまたPodcastからの情報で恐縮です。トマス・アクィナスを扱っており、その参考文献として紹介されたものです。彼の思想を哲学者と学生による対話形式で明らかにし、「哲学講義」とありますが、とても読みやすく仕上がっています。
トマス・アクィナスは神学者で『神学大全』を記述したという知識しかなかったのですが、ものすごい「ポジティブ思考」ということがわかります。「神」「愛」「善」などが登場するので、ここでの紹介は憚られるのですが、いわゆる現在の「ポジティブ・シンキング」ではなく、理論を突き詰めてこうしたものが実在することを証明しています。また、直接 -
Posted by ブクログ
ネタバレ悲しみや怒りといった感情の根底には、愛があるのではないかとぼんやり思っていたところに、この本と出会いました。まさに私が今欲していた答えを、この本がくれました。
感情は、自分の外界の事物から影響を受けて受動的に起こる。さらに、善なるもの(道徳的な意味合いだけでなく、便利だったり快楽的だったりするものも含む)に魅力され、それが心に刻印されるような形で、愛が生まれる。そう考えると、世界には現在も私を魅了する善なるものが既にあり、世界はこれから私が魅了されうる可能性のもので溢れている、ということを言語化してくれました。
感情的すぎる自分に疲れ、解消するような本を探してこの本に辿り着きましたが、やは -
Posted by ブクログ
これは読まねばならぬ...と幾度と決意し、その度に通読失敗を重ねてきた「ニコマコス倫理学」。
ついに100分de名著に助けを求めることに...
アリストテレスが著した史上初の体系的な倫理学の本。あらゆるもの・行為は「善」を目指し、そして最終的に収束する「最高善」は「幸福になること」であるいう前提に立ち、その実現に向けた実践を意識した論展開がなされる。
倫理学が扱う範囲を「たいていの場合にあてはまる事柄」と定義しており、これは自然科学が扱う「常にそうあるところのもの」と対比されているのがいい。ひとが「善い」と感じる事柄はひとつではないけども、ある程度の方向には収束するものだというバランスのいい -
Posted by ブクログ
中世において、哲学と神学を調和させるスコラ哲学を大成させた大学者として知られるトマス・アクィナスの思索を、トマスのテクストに愛着を覚える著者がそれに従って自らがもつ善を分け与えようと、丁寧な語り口で描いていく
理性と神秘(信仰)は対立するものではなく、信仰によって理性が新たな次元へとステップアップし、理性によって信仰がより深まるといった形で調和するものだとトマスは言う
同じく、トマスはアリストテレス主義者としても知られるが、実際はアリストテレスの哲学を援用して自身の神学を補強したことは間違いないが、哲学を神学の婢のままにすることなく、神学を用いて哲学に新たな概念を付け加えるといった形で調和が見 -
Posted by ブクログ
ネタバレ愛をテーマに、プラトンのエロースからアリストテレスの友愛といったギリシャ哲学、アウグスティヌスから著者が専門のトマスアキナスまで、キリスト教に限らず哲学のエッセンスが分かるのが良かった。
単なる哲学の解説ではなく自分の心のあり方を考えるきっかけにもなる。
アウグスティヌスが神への愛を語る「告白」の解説では「まず働きかけてくるのは神の側だと言うことです」という。何かを追い求めるのではなく、出逢った御言を受け入れる、受動的な態度が印象深い。
トマスアキナスでは、感情論について、感情は受動的な仕方で生まれてくるという。自己愛があってこそ隣人愛が生まれる、という説明に、著者の温かさを感じた。自己愛と隣 -
購入済み
読みやすいです
『愛のあるところ目がある』という一文にひかれた読みはじめました。
トマスアクィナスの著作に興味はありますが、哲学と神学の素養がなく、
ボリュームもすごいのであきらめていましたら、このとっつきやすい本が
見つかってよかったです。カトリックの深さ広さを感じる一冊と思います。
なぜかガンバロウと思いました。 -
Posted by ブクログ
トマス・アクィナスの「神学大全」という大作のうち、感情論にテーマを絞ってトマス哲学の核心的な位置づけと見なされる肯定の哲学という観点から講釈いただけております。哲学者と学生の対話形式で綴られていますので、取っつきやすくかつ日常的な例を挙げてながら進めているので、自分の経験とリンクさせて理解が深まる。
喜びや希望といった正の感情、絶望や恐れ・忌避などの負の感情含めすべての根源的な感情として「愛」があるのだ。絶望・恐れ不安に襲われている際にも、そこには対象「欲求されうるもの」への愛所以という論理を心に留めておくことで、直面している悲惨な現状に対して少しでも拠り所として機能するのではにないか。
-
Posted by ブクログ
この本を読み終えると、ホントに「世界は善に満ちている」と思える。
最初はなんか偽善的?なタイトルだなぁと思った。それに「トマス・アクィナス哲学講義」というサブタイトルが付いている。ものすごく難しそうで到底読みきれないと不安に思いながら手に取る。
ページを開くと対話形式になっている。学生と哲学者。少し読むと、とても読みやすいことに気づく。時々引用されている原典の文は、全く歯が立たない、チンプンカンプンなのだが、本書にも書かれている通り、対話になった部分を読んでいくと、なんと、最初全く意味が取れなかったものが、あーそういうことか、と一応わかるようになるのがすごい。
内容は、今の私のために書かれてい -
Posted by ブクログ
中世ヨーロッパの哲学者トマス・アクィナスが記した『神学大全』のうち「感情論」にフォーカスして、教授と生徒の対話形式で人間の感情に関する洞察をなぞる本。
つい先日、自分も「感性」について考察したいたこともあり、それはもうノリノリで読めた。
トマスの感情論は感覚的な説得に依らず、論理的に心の動きを分析することに特徴を持つ。
導入で「希望」という感情の要件を
①善であること
②未来を対象とすること
③獲得困難なものであること
④獲得可能なものであること
とし、もし④が不可能であるならばそれは「絶望」の要件となると示す。「希望」と「絶望」、対極に位置する感情が紙一重の要件境界をまたぐことによって鮮や -
Posted by ブクログ
「その意見は感情論だ!」と言う時、あなたはそれを理性や客観性を失った発言として、少し見下しているかも知れない。トマスアクィナスは、その感情論さえ、論理的に分析できるというのだ。その分析にどんな意味があるのか。どんな景色が見えるのかー この「不思議な哲学と本の世界」に飛び込んでみる。
手始めに、トマスのいう「希望」とはー という解説をしようと思い、本書にピタリと沿って説明する面倒臭さを感じてしまったので、少し捻ってみる。
我々は、毎朝目を覚まして、日々を暮らしている。これは、程度の差こそあれ、自己を肯定し人生に「愛と希望」をもっているからだ。人生はこのように程度で対比されるようなポジティブな -
Posted by ブクログ
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教を、三大一神教(セム的一神教)として統一的に捉え、それぞれの共通点・相違点を聖典などを読み解くことで分かりやすく解説してくれる良書
啓示・キリスト・アブラハムなどこれらの宗教における重要なファクターがそれぞれの宗教でどのように扱われてきたのか、著者の一般人に寄り添った書き方で要点を掴んで書かれている
さらに、話は宗教間対話にまで及び、対立構造を取られることも多いこれらの宗教について、過去から現代までの学者の文献を引用して、対話に至るまでの必要不可欠な要素を導く。「みんな違ってみんないい」というような「多元主義」は果たして本当に正しいと断言できるのか?
簡潔