国立がん研究センターのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ著者である「がん研」の宣伝っぽい部分もあるが、がんの特徴、メカニズム、治療法や予防法まで幅広く最新の研究成果が分かりやすく解説されている。個人的には、細胞老化に関連すると言われるテロメアに関する説明が出てきたのが意外で、かつ、分かりやすくて面白かった。
本書は、遺伝子レベルの解析やビッグデータの利用によって画期的な治療法が期待できるということで結ばれているが、本書を読むと、がんというものが、調べれば調べるほど複雑怪奇で、治療法を改良しても改良してもしぶとく生き延びる(もっとも、がんが生き延びると人は死に、がんも死ぬので、がん自体は生物のような生存戦略を持っていないのだろうか。)不気味な存在のように思えてくる。 -
Posted by ブクログ
「がん」という病の不思議さ、それはひとえにその多様性に尽きる。なぜ様々な臓器に発生しそれぞれ性質が異なるのか。なぜ人によって同一治療の有効性に差があるのか。本書はがんの性質の不思議さをその本態と成因を詳述し、現代医療における最新治療との関連においてその謎を解き明かそうとする。
本書によればがんの多様性は、がん細胞が単一ではなく非常に多くの種類の変異が蓄積されることによって発生することに起因するという。その原因の一つである遺伝子変異を例に挙げれば、その変異によりがんの発生と進展に直接関与する「ドライバー遺伝子」はこれまでに15個特定されているが、これらのうち同種のがんにおいて最も多く共通して現れるものでもせいぜい50%弱の頻度でしか発現しておらず、多くのものは10%以下にしか見られないという。つまりゲノムの変異自体は少数でもその組み合わせが症例によって大きく異なるのであり、従って治療にもその組み合わせごとに応じた個別性が要求されることになるというわけだ。
また、がんは宿主の免疫系による攻撃を受けているが、変異の蓄積がゲノムの多様性をもたらすため、免疫系のチェックをかいくぐり環境に適応するゲノム変異がどうしても残存していくのだという(がんゲノム進化)。これにがん細胞のもつ増殖能、転移能を考え合わせれば、がん治療の困難さが否応なく理解される。
余談。読んだ時期がノーベル賞の季節にたまたま重なったため印象に残ったのだが、本書中でフィビゲルなるデンマークの科学者に触れるくだりがいくつかある。彼は寄生虫ががんを引き起こすという「寄生虫発がん説」の提唱により1926年にノーベル賞を受賞しているのだが、後世にそれが誤りだったことが判明したという。現在のノーベル賞が、相当な期間をもって多面的に検証され、十分に確立された研究成果に対してのみ慎重に授与されるようになったのも、このような経験を経たからこそなのだろう。