西田実のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
【ハックルベリー・フィンの冒険 上・下】
マーク・トウェイン作、西田実訳、岩波文庫、1977年
面白かった。
「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の主人公ホールデンが「20世紀のハックルベリー・フィン」と呼ばれると知って、初めてちゃんと読んでみたが、面白かった。
作者マーク・トウェインは1835年生まれで、日本で言えば「幕末明治の時代」に生きた人。
日本で若い志士たちが「黒船襲来」「尊皇攘夷」と立ちまわっていた時代のアメリカで、トム・ソーヤーやハックルベリー・フィンといった少年たちが見る社会と自然を余すことなく描いた作家。
本書は浮浪児で自然を愛する主人公ハックフィンは暴力的で怠惰な父親から逃げ、逃亡黒人奴隷のジムと共にミシシッピ川を筏で冒険をする、という話。
刊行は1855年。6年後に奴隷制度の是非をめぐりのアメリカでは南北戦争が起きる。
アーネスト・ヘミングウェイが以下のように書いている。
ーー
あらゆる現代アメリカ文学は、マーク・トウェインの『ハックルベリー・フィン』と呼ばれる一冊に由来する。……すべてのアメリカの作家が、この作品に由来する。この作品以前に、アメリカ文学とアメリカの作家は存在しなかった。この作品以降に、これに匹敵する作品は存在しない。
ーー
読み終えたときに、子どもの時にみた映画「スタンド・バイ・ミー」を思い出したのも、そんなに外れていない気がする。(死体が鍵だったり)
そして、「翻訳夜話2 サリンジャー戦記」で柴田元幸が、「ハックはまだ下半身が目覚めていない。ホールデンは目覚めかけていてそれをすごく怖がっている。そこの違いは大きいですね。」と語っているのも1776年に独立したアメリカをなにか象徴する気がした。
2017年の今年は、
Change! を唱えた初の黒人大統領に代わり
Make America Great Again! をスローガンにする70歳の実業家が国民により大統領に選ばれた。
#優読書 -
Posted by ブクログ
ネタバレネタバレありです。
つまるところ、トム・ソーヤというキャラクターが好きかどうかで、この巻の好き嫌いは分かれるのではないでしょうか。ジムとハックのロードムービーからうって変わって2巻中盤からはトム・ソーヤ劇場です。決して面白くなくはないんですが、悪のりがすごいんです。まあ王様と公爵もひどかったので、言ってみれば2冊あわせて大半を悪のりが占めているとも言えなくもないわけですが、なんでしょう、トムは基本的にもっと安全なところにいてサバイバルではないので鼻につくのでしょうか。その、周囲の人間も読者をも唖然とさせるような悪のりこそがトム・ソーヤの持ち味なわけなので、良い悪いではなくて本当に好き嫌いの問題なんですが、僕は真面目なハックが好きです。
小4息子の感想「冒険いっぱいだった!」。小6娘の感想「 でもトムや公爵や考えること・やることがおかしすぎてついていけない部分もあった」。トムや公爵には子供たちも「なにやってんだよ!(*゜Q゜*) 」って感じで笑いながら呆れてました。 -
Posted by ブクログ
『トムソーヤ~』とともに有名な作品。
だが、この2作品で絶対的に違うのは、主人公の立ち位置。
トムはいたずら好きだが“子供の範疇”から決して越えず、また、あれこれ文句をいったりもするが当時のアメリカ南部での一般的な考え方(黒人≒奴隷とか)からも外れずに、あくまでも世間という手のひらの上で行動している。
ハックは設定も浮浪者…自由人というべきか…で、考え方もまた、世間一般のしがらみのない考え方だ。
逃亡奴隷を通報するべきか、ハックは必死に考える。当時の常識ならば、悩むところではないのだ。言わなきゃいけない。ハックが躊躇しているのは、言えばジムは逃亡奴隷として処罰されるが、そんなことを幇助するのは人間としてどうなのか、という、
常識>倫理の図式に迎合できず、悩む。
このテーマの深さがハックルベリフィンの魅力の一つだと思う。 -
Posted by ブクログ
奴隷制が残るアメリカ南部を舞台にして、暴力的な父親から逃れるハックと逃亡奴隷ジムの冒険。
大学で読まされたアメリカ文学はあるが、自主的に最初から最後まで読んだアメリカ文学としては初めて(翻訳だけど)。始めは、翻訳の変ななまりが気になったが、数章読めば全然気にならなくなった。よく1人でこんなことするよなー、というくらいハックは勇気のある子だと思ったり、ハックの二枚舌に感心したり、ある意味で素直な子だなーと思ったりして、面白かった。ジムはよく迷信を口にするが、当時の奴隷はこんな感じだったのだろうか、と思った。冒険そのものも面白いが、当時の南部の様子が描かれている部分も、歴史紀行をしている感じで、テレビを見るよりも自由に想像できて楽しい。たぶんこれが小説の良いところなのだと思う。当時の南部の様子は一言でいえば「血生臭い」という印象だった。週に一度は死体を見そうなイメージ。
(続きは下巻のレビューへ) -
Posted by ブクログ
Adventures of Huckleberry Finn(1885年、米)。
どこまでも陽気で陰影のない「トム・ソーヤーの冒険」に比べると、こちらは結構ビターな印象。黒人奴隷の人権問題が絡んできたり、大人の犯罪や紛争に巻き込まれたり…。トムの冒険はファンタジーだが、ハックの冒険は命懸けのサバイバル。一歩間違えば、皮肉めいた重い話になってしまいかねない内容だ。
しかし、児童文学として耐え得る軽やかさは、かろうじて失われていない。その理由は、ハックの逞しさ、ジムの善良さ、人種を超えた彼等の友情、そして何より、雄大なミシシッピ川の美しい描写のためだろう。ハック達が自由を求めてミシシッピを下る過程は、自由を求めて新天地へ降り立ったアメリカ人にとって象徴的であり、心の原風景なのではないだろうか。ヘミングウェイが本書を「アメリカ文学の源泉」と称したらしいが、さもあらんと頷ける。
個人的には、ジムを救出する穴を掘る場面での、トムとハックの掛け合いがツボ。ロマンティストで意固地なトムと、リアリストで合理的なハック。その対比が面白くて、何度読んでも笑ってしまう。 -
Posted by ブクログ
(上巻のレビューからの続き)
さらに冒険や南部の様子以外に、ハックの内面の葛藤なども描かれていて、微妙な心理の揺れ動きなんかが分かって面白かった。また、文学が専門の人は、この作品における川の持つ意味、とかを考えたりするんだろうか、とか思ったりした。
トムソーヤーは読んだことがなく、解説にも書いてあったが、はじめはトムソーヤーの続編として書かれたそうだ。でもやっぱり下巻でトムソーヤーが登場してからは、多少退屈だった。ハックとジム二人のときは、二人が現実の差し迫っている危機を何とか打開しようとして、ハラハラさせられる部分も多かったが、トムが出てきてからは、現実の危機は前と同じように差し迫ってるのに、やたらとトムの対応が悠長で、あまりのギャップについていけなかった。だからと言って全体の印象や面白さは変わらないので、やっぱり読んでみる価値のある本だと思う。(10/11/01)