ドナルド R キルシュのレビュー一覧
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日本語の副題「成功率0.1%の探求」とあるように、現在の新薬探しはビジネス的に成功する確率が非常に低く、さらに巨額の研究費が必要でほとんどの努力が無駄に終わることが多い。実際、創薬プロジェクトのうち、経営陣から資金を提供されるのが5%、そのうちFDAに承認されるのはわずか2%だそうだ。本書は、新薬を見つけ出すのがなぜ難しいか、新薬がなぜ法外な値段で売られているのか、新薬探求や創薬の歴史を振り返りながら解説している。
ノバルティス、バイエル、メルク、エフ・ホフマン・ラ・ロッシュ、ベーリンガーインゲルハイム、ヘキストなど、名だたる製薬会社がなぜライン川沿いに本拠地を置くかにもふれている。19世紀 -
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大昔から現代まで、どうやって新薬が開発されてきたか、かなり分かりやすく説明してくれる。大収穫本。
以下気になった所を箇条書きメモ。
・マラリアの薬で儲けたのは、ルイ14世の王子を治療した英国人薬剤師のタルボー。彼は薬の原料を秘密としたが、死後それがキニーネだと明らかにされた。(多分マラリアの予防として飲まれていた)トニックウォーターには、キニーネが含まれていたが苦くて飲みにくいので、ジンが加えられ、ジン・トニックというのがカクテルが生まれた。(好きで呑んでたけど、そういう経緯があったのか)
・19世紀、バイエルがアスピリンとヘロインを作った話が面白い。また、フェンフルアミンというあまり効 -
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薬と無縁に生きてきた、という人はおそらくいないだろう。
風邪かな、と思ったら早めのパブロンを飲むし、インフルエンザの季節の前になんとなくインフルエンザ予防接種を受けるし、最近はCOVIDのワクチンも接種するし。
なんとなく当たり前のように薬を摂取したり予防接種を受けているが、実はこれは奇跡的に人類がたどり着いた偉業だったのだ!
物理学は実験を通して理論を構築することができるし、正しいとされる理論を用いれば現象を予測だってできる。(予測が外れたら理論が間違っていたということだ)
翻って、薬学はどうだろうか。物理学でいうNewton方程式のような聖杯はない。
人間に使ったとしても、その人間 -
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ネタバレ新薬の開発はますます困難になってきており、ファイザーのようなメガファーマもこの頃では創薬からは手を引いて他社が作った薬の導入に専念したいと考えている。ここまで薬剤はどのようにして見つけられ(作られ)てきたのか、わかりやすい歴史的背景と豊富なエピソードで描かれた良書。
・薬剤の創造は当初は自然にある物質をそのまま使っていた。アヘンからモルヒネが合成され、さらにその誘導体としてヘロインが作り出された(日本におけるアンフェタミンのように当初は依存性のない薬として市販されていた)。ペルーのキナの木の皮からはキニーネが合成された。
・次に純粋に工業的に製造される時代が始まり、エーテルが麻酔薬として用 -
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新薬をめぐるドラッグハンターの歴史的攻防が描かれている。ドラッグハンターの思惑や、葛藤も記されていて親しみを持って読める。薬と同様に研究者も個性的である。
新薬探索のいつもの成り行き…新薬になりそうな分子の新しいライブラリーが発見され、主要な発見がいくつかなされ、業界全体がそのライブラリーに群がって短期間でライブラリーが枯渇する。
土壌、動物、植物、タンパク質、ホルモン、DNA操作
白血球は体で病原体を感知するとB細胞が速やかに増殖させる。短期間に数百万種類もの白血球を作り出せる。これらの白血球はそれぞれ異なる種類の抗体を作り出す。体は必要な時に必要なだけオンデマンド武器を作り出せるという