伊神満のレビュー一覧
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Yale大学の若き経済学者による、教育的な自伝である。
「イノベーターの経済学的解明」のタイトルにつられて購入した。私は前半の「イノベーター」の部分に着目していたが、本書における著者自身の力点は後半の「経済学的解明」に置いていたように思う。
著者が自身の博士論文を以て経済学の全体像を感覚で理解できるよう提示している。需要・供給・均衡・限界といった基礎的な概念から、差別化と競争、社会厚生、静学/動学、実証研究の形態の各トピックまで、幅広く紹介している。非常にスピーディーで熱のこもった筆致であるためか、サクサク読める。
経済学はしばしば、「モデルが現実的でない」との批判を受ける。しかし -
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ネタバレ本書では、クリステンセンの「イノベーションのジレンマ」を底本にして、実際にイノベーションのジレンマはあるのか、あるとしたらどういった理由が存在するのか・・・といった問題を実証することを目指し、様々な概念と方法論を定時している。
実務でコンサルティングや技術開発(イノベーション)を行なっている身からすると、やっぱり社内競合(本書でいうところの「共食い」)は本当に企業の中でよく見かける。
一方で「抜け駆け」を目指した意思決定は、本書でも珍しい例と言われているが、残念ながら一度も見たことがない。
難しいのは、ただ「共食い」するだけならともかく、ITによってそもそも提供価格が大幅に下がってしまうと -
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ネタバレ伊神先生は
イェール大学の准教授。本当は実績を残すために、日本語の本など書いている場合ではないと思うのだけど、後書きにあるように色々な思いがあって休日を使ってこの本を書いたようです。これ、本ではなくて授業とかで直接話を聴いたら、きっともっと面白かったのだろうなと思いました。
この本は結構面白い構成で、最初にざっとサマリーのようなものが書いてある。さすがは大学の先生。語り口はエッセイ調。
説明されている経済理論は3つ。置換効果(共食い)、抜け駆け、能力格差。実証研究の手法も3つあってデータ分析、比較対象実験、シミュレーション。で、そもそものクリステンセン先生のHDDの事例をベースに実証研究 -
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前半は素晴らしい目から鱗 後半はもう一つピンとこなかった
以下は前半の収穫物
因果関係と相関関係(128)
因果関係はストーリー、頭の中で創造するもの AIには作れない
相関関係 Dataの中にあるもの 発見するもの
イノベーション
プロダクト・イノベーション
プロセス・イノベーション 製造・販売費用の低減
勝者総取り 戦わずして勝つのが最善 独占の妙味
複占は1/2ではない 客数は半減、単価も半減
10億件✕@100円=1,000億円
5億件✕@ 50円= 250億円
既存企業の弱点
①人や組織の惰性
②従来事業の成功体験
③大きな組織は情報の伝達効率が悪い
資本C -
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ネタバレこれは、必読書だと思います。
平易な表現で、最先端の経済学が目指すものを実証的に語ります。「盛者必衰」。なぜ優良企業はイノベーションに乗り遅れるのか? どうすれば防げるのか。5.25インチから3.5インチに移行したハードディスク・メーカーのデータを元に、論理的に、説得力をもって突き詰めています。
本書の出発点である「置換効果」は、デジタル化が進む新聞業界が典型例です。デジタルに移行すればするほど、現在稼いでいる紙と食い合うからです。「何も自分の代で完全移行しなくても……」と経営幹部や年長社員ほど考えるだろうと。一方で、ハフィントン・ポストなどのネット専業のイノベーターは、突き進むだけ。
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経済学をコラム風に噛み砕いた本.読みやすい
本書の背景は書籍名にもあるように経"営"学者であるクリステンセン氏の著書「イノベーターのジレンマ」であり,煮詰めてしまうと「既存企業は失敗した.なぜなら経営陣がバカだったからだ」となりそうな主張に対する経"済"学からの「返歌」として書かれている(はじめに,より)
本の流れはP36の図で一覧できる.それぞれの「まとめ」はシンプルなので,色々な情報を知りたいという場合,論文調を期待するのはおすすめしない.大学1年の授業くらいをイメージすると良く,高校生が少し背伸びをして読むのにも良い(「はじめに」にも記載されている -
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「創造的破壊を生き延びるには、創造的『自己』破壊の必要がある──」
アメリカの実業家であり経営学者の故クレイトン・クリステンセン氏の著作を原案とし、元イェール大学准教授、現トロント大学准教授である伊神満氏が経済学の理論と定量的な分析を行なった本作。
イノベーションを起こして生き残った企業と、時代に取り残されて没落していく企業に対し『なぜそんなことになったのか』を解き明かしていきます。
説明上必要な専門用語もありますが、事前に解説しながら進んでいくほか、伊神氏自身も軽妙な語り口で進んでいくため、内容が硬くなり過ぎず、程よい脱力感で経済学者の知見を聞く事ができました。
本書での学びは、自身 -
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古典「イノベーションのジレンマ」を(勝手に)アップデート。計量経済学によって実証的にイノベーションを検証した筆者の論文、を一般向けに解説した本でもある。「イノベーションのジレンマ」は大半がインタビューや文献を考察の元にしており、「無能だから失敗した」のか「失敗したから無能と判断された」のか、これでは循環論法に陥りかねない。また人は意図して、そして意図せずに自分にも嘘をつくので、語られたことだけで論理を構築するのは危うい。
内容は音楽で言うなればA→B→A'のような形式で、まず序幕で背景や本書での要旨、著者の問題意識を読者と共有する。実はこの時点でほぼ解答はでているのだが、しかしそこ -
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最後あたりにまとめが書かれてあった。
①既存企業は、たとえ有能で合理的であったとしても、新旧技術や事業間の「共食い」がある限り、新参企業ほどイノベーションに本気になれない。
②このジレンマを解決して生き延びるには、何らかの形で共食いを容認し、推進する必要があるが、それは企業価値の最大化という株主にとっての利益に反する可能性がある。一概に良いこととは言えない。
③よくあるイノベーションの促進政策に大した効果は期待できないが、逆の言い方をすれば、現実のIT系産業は、ちょうど良い競争と技術革新のバランスで発展してきたことになる。これは社会的に喜ばしい事態である。
またお勧めの本も記載してあるので
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本書はイェール大学で教鞭を執る日本人経済学者が、経営学の泰斗であるクリステンセンの研究を、経済学的見地から定量的、理論的に深掘りした、という本になります。クリステンセンの書いた『イノベーションのジレンマ』は世界中でベストセラーになった本ですが、この著者が指摘しているように、書かれている内容自体はかなり定性的で、他の経営学のフレームと比較しても科学性に乏しいというような批判はありました。
そのような背景のもと、著者は経済学の専門家として、クリステンセンの世界観をモデルに落とし込んだと言うことになります。内容は確かに経済学の知識がある方が望ましいですが、そうではなくとも理解できるように書かれてい -
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イノベーターのジレンマはどうして起きるか。
共喰い現象=新しい製品が、既存のヒット商品のシェアを奪う。
置換効果=既存企業は、新商品によって失うものが大きいのでイノベーションに本気になれない。
競争効果=既存企業は、他社の新規参入によって失うものが大きいので、本気で独占的地位を守ろうとする。
世の中の競争はほとんどは不完全競争なので、ゲーム理論でないと分析できない。
ライバル数は少ないほどいい。
近視眼的な判断をする理由=人や組織の惰性、過去の成功体験に引きずられがち。ビデオチェーン店のブロックバスターはオンライン配信化には成功した。しかし既存店を切れなかった。大企業の情報伝達効率の低下。