野見山暁治のレビュー一覧
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想い出に残る人へのレクイエム、21章。
書名はセンゴク・シズコの章からとっている。女性の章が7つ。なかでも「林芙美子」が強い印象を残す。のちに渡辺淳一の小説のヒロインになった女子高生・純子の章もある。そして最後は「カミさん」武富京子へのレクイエム。
そのほか、印象的なのは加藤周一とのファースト・エンカウンター。早朝にパリのアパルトマンの階段を駆け上がってドアをノック、すると髯を半分剃った加藤が現われた。中学時代、放課後の図画室でパンの耳をわけてあげた後輩・江頭匡一(のちにロイヤルホストを創業)との再会の話もいい。
続編は『みんな忘れた―記憶のなかの人』(平凡社)。こちらは22人に捧げられている -
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97歳の時に刊行されたエッセイ集。その4年前に出た『とこしえのお嬢さん―記憶のなかの人』の続編、22人との交遊記。彼らへのレクイエムとしても読める。
40年前に書かれた『四百字のデッサン』からずっと気になっていた金山康喜と小川国夫が再登場、後日談が書かれている。でも、謎多き不思議な金山は謎多く不思議なまま、自分勝手だった小川は最後まで自分勝手なままだった。小川については、野見山にはけっして見せなかった別の顔のことにも触れている。
加山又造、加島祥造、今泉篤男は粗いクロッキーか。水上勉や秋野不矩のエピソードは淡い水彩のよう。若き脳研究者、萬年甫も登場する。 -
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平素で素朴な文体なのに、深みが感じられるエッセイ集。
前半は、友人や先輩などとの交友回想録。フランス在住中に出会ったかなりの奇人たちとのやり取りが、ドラマさながらに語られている。後半は1976年に地方新聞の夕刊で連載したコラム。こちらはユーモアとペーソスを交えた自叙伝と言った風だ。
読んでいても決して「文才がある」という印象を受けるわけではないのに、深みがあって心に残る。画家ならではの視点で語られる話ももちろんあるのだが、深みの理由はおそらくそれだけはない。
軽い書きぶりの中、時折り顔を出すハッとさせられるような指摘。それが物事の本質、人間の本質をかなり突いていることがその理由だろう。軽い文体