若林茂樹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
最近関心ある民主主義はどう終わるのかシリーズ。本書では、3つの壊れ方を示す。一つ目は「クーデターや政治的動乱」。これはまさに最近ミャンマーで起きたことを考えるとわかりやすい。ただ、著者が指摘する「成功するクーデター」は、「市民が知らないうちに、行動を起こす前に、権力移行が完了している」ものであり、ミャンマーの事例はうまくいかないのではないか。二つ目は「危機に対する感度が低くなった結果」。確かに、70年代には公害(沈黙の春)や核戦争・軍事同盟に対する反対運動などが活発だったが、現代はそれほどでもなく、いろいろなことに対する諦め感があって、この指摘には深く頷ける。三つ目は「デジタル革命の影響」。間違いを起こさない優れた知能が創造できるのであれば、愚かな政治家ではなくその「知能」に判断をまかせるべきではないかという「テクノクラシー」。しかし、判断の基準は人間が構築するのであり、結果、一握りの権力者の意向の隠れ蓑になるのではという指摘。これまで読んだこの種の本で、民主主義の本質は「参加と責任」であるとわかった。無関心・人任せ・諦めなどが、民主主義破壊の原因であると認識。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ心に残ったメモ
◇第一章-クーデタ
・一人当たりのGDPが8千ドル以上で民主主義が軍政化した例はない。
・民主主義を隠れ蓑にしたクーデタが存在する
民主主義が確立された国では民主主義とそれを転覆させる行為の境界が曖昧になっている
・二十一世紀は陰謀論の黄金時代になりつつある。
・陰謀論はポピュリズム(エリートが人々から民主主義を奪ったと考える人)の論理
・総力戦の無い時代にポピュリズムの根を取り除くのはとても難しい。
・混沌や暴力を原動力として最善の形を引き出すことが民主主義の強さの一つ
◇第二章-大惨事
・政治家の痛いところを突くには存亡の危機を持ち出すことが有効である
・ゲーム理論の問題は生活関連の政策を核の問題に適用する点にある。
個人レベルの選択の問題を存亡にかかわる問題と同等に位置付けてモデル化し、勝ち負けが重視される。
民主主義で理想像を追求しても不確実性が増すだけである。
・相互接続という脅威
金融、エネルギー、情報通信、医療、輸送のグローバルシステム化
ネットワークの強みは同時にリスクとなりうる
全体を集中管理は出来ず、停止ボタンもない
あらゆるものが結合すると、物事を自分の頭で考えなくなる。
現代の多くの政治家は後戻りできないミスを犯さないように綱渡りをするしかない。
◇第三章-テクノロジーによるのっとり!
・ガンディーの予言
・人々は動きの中に身を置きたい・・・デジタル時代の代議制民主主義に最も適合しているのはネットワーク効果
・ネットワークは広く横に展開するが、ヒエラルキーは垂直
・現代政治では調整弁としての政党の役割が否定された結果、閉塞した状況を打破する手段がなくなった。
・代議制民主主義は監視というゲームである。現在市民が優位に立っているが、
情報を探り出す欲求に限度がある。情報が豊富にあるほど、情報に対する意識は失われる。
・人々は好奇心に駆られて行動する結果、自らをさらけ出すことになる。
オンラインで利用できる情報が多いほど、有権者は利用者の情報を拡散する。
・注目を集めやすいフェイクニュースは簡単な金儲けにつながる。
・二十一世紀の広告業は人々が常時注目しているように認知バイアスに働きかける。
人間が将来より現在の利益を重視する傾向を利用し、今持っているものに固執し、
信じていることを正しいと確認させ、自分が注目されていると過剰反応し、自分の将来の姿を過小評価すること
これらの感情を満足させ中毒になるように作られている。
・代議制民主主義はすぐに満足したい衝動を抑え、意思決定に時間をかけさせる。政治的な衝動が抑制されるよう尽力している。
そのため人々は代議制民主主義に対して不満を抱くことになる。
・現代のネットワーク社会で人々が衝動的に行動する今は、直接民主主義による管理は適さない。
・デジタル技術を民主政治に取り込むには、選挙で選ばれた政治家が自らの機能で直接民主主義を実践することである。
・デジタル技術では複雑な課題に対して最適解を提示できる。
政策の選択肢についてえ有権者がどう反応するか事前にテストすればよい。
◇第四章-よりよい明日はあるのか?
・政治家よりはるかにうまく国を運営する能力のある人は大勢いるが、国を運営できるのは政治の汚い世界をうまく渡っていける人である。
・現代民主主義の魅力とは
①尊厳を与えること。民主主義は個人の権利を尊重する。
②長期的利益を享受すること。安全な民主主義国で暮らすことで人々には安定な暮らし、繁栄、平和という利点がある。
・中国共産党が行っていること
民主主義の価値を半分は提供するが、すべてではない。個人の尊厳と集団的利益の代わりに、個人の利益と集団の尊厳を約束する。
民主的な表現の自由はない。個人の政治的尊厳は、言論の自由を抑圧する。国家の多数派に所属する限りはメリットを享受できる。
・個人の尊厳≒短期的な利益/集団の尊厳≒長期的繁栄
・権威主義に対して、民主主義は冗長で優柔不断に見えてしまう。権威主義は大きな問題に対したとき長期的な利益を犠牲にしても
すぐに成果の出る政策を打ち出すことが可能である。
・知者の支配は2つの点で危険である。
①常に最善の政治形態を来たするあまり要求水準を高くしてしまう。民主主義には最悪の選択をしないという長所がある。
常に新しい選択肢が生まれ、新陳代謝が起こる。
②テクノクラシーに陥ることを避けることが出来ない。システムを構築したものだけが正しい方向に軌道修正をする能力を持つからである。
・技術による平和
現在の自分は未来の自分と異なり、実施雨滴に二人は別々の人間と考える。道徳的な優先順位が見直され、
自分以外の近隣の人や遠くに住む人、まだ生まれていない世代にとって害となる行為を防ごうと思うようになる。
細分化した個人はこれまで以上に周りに対して責任を感じるようになる。人々は平等な関係の中で初めて相手に対して義務を負っていることに気づく。
機会に人を開放する潜在的な力を持つ可能性があるが正しく活用されるかはまだ分からない。
◇終章 民主主義はこうして終わりを迎える
・二十一世紀の民主主義は長所が生かせなくなっている。長所が個人レベルで認識される必要がある。
人々はテクノクラシーに向かっている。個人レベルでは承認されたいという欲求がアイデンティティの問題とされる傾向にあり、
アナキズムにちかづいている。個人の抱く政治的な怒りが民主主義を引き裂いている。
・アメリカ民主主義において、マーク・ザッカーバーグがドナルド・トランプ以上の脅威であるのは、テクノロジー業界の巨人は
善意で自分たちの技術によって声なき人々の声を反映し、すべての人が承認される民主主義が実現できると信じているからだ。
・成熟した西欧民主主義は最盛期を過ぎた。
・問題を細分化し、管理することが民主主義の強みである。民主主義はその機能で延命が可能。
・民主主義と人類は一体ではない。
・民主主義を崩壊させないようにするにはそれぞれの道を進むしかない。
・民主主義が終焉を迎えることが問題ではなく、どのような形で民主主義が終わるかが問題である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ税金は国家に強制的に支払わされるが、その対価として特定の財サービスが割れあてられていないもの。
税は、もともと物納だった。
人口調査は、税の徴収のために行われた。
フランスでは所得税の割合が低く社会保障拠出の割合が高い。所得税の2倍が社会保険料。
所得税は、OECD諸国平均で税収の1/4。近代税制の中では後発。社会保険料は第二の所得税となっている。=これらは収入に対する税。
支出に対する課税=消費税、売上税、VAT、物品税など。
アメリカは、小売販売時のみにかかる売上税。vatではあに。VATの税率は20%以上が普通だが、売上税は10%以下が普通。
個人の税金は会社が徴収義務がある=税金を徴収するいうえで都合がいいから。かつ費用がかからない。
富裕税、相続税。
産油国は所得税がない。カタール、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェートなど。
ノルウェー政府は、石油が枯渇しても収入があるように石油収入をソブリンファンドに投資した。
輸入関税は、行政機関の徴税能力が発達していない場合には、確実な税源になる。
実質的な税の負担者はだれか=税金によって、だれの生活水準が下がるか、ということ。市場が競争的であれば、形式的な税の帰着とほぼ同じになる。誰が税を負担することになるかは、市場の力関係による=税の形式的帰着は、徴税の便によって決めればよいことになる。
給与税(社会保険料、所得税)も例外ではない。
資産課税は、将来の税の帰着は現在の所有者になる=将来の税を見込んで売買が行われるから。税の資本化という。
法人税の帰着は複雑。社員によって負担されているという研究結果がある。税引き後利益の減少は、賃上げ交渉に不利に働くこと、海外との競争を通じて雇用を減少させること、などが理由。
累進課税と逆進課税。
税のコストは行政コストと納税者のコンプライアンスコスト、さらに課税によって行動が変わることによるコスト。窓税の例。
最適化税理論(ラムゼイ)=売上税で、それぞれの財サービスによって異なる税率が望ましい。価格弾力性に反比例するように税率を設定するべき。価格弾力性が高い商品は低い税率にする。事実上はコストがかかりすぎて難しい。
人頭税は歪みコストがないが、低い税率でなければ不可能。地価税に一本化するべき=ヘンリージョージ。土地に対する課税は生産活動をゆがめない=しかし、この変更によって地価が劇的に下がることになる。
労働市場は潜在的に税制による経済的コストが大きい=労働インセンティブに対する影響が大きい。労働の魅力に影響する。一方で、一定の所得を確保するために労働供給を増やす効果もある(所得効果)。これはかなり少ないとみられている。
公平と効率のトレードオフ。穴の開いたバケツ=所得を移転する際に中身が減る=コストがかかる。
失業手当など、労働以外の給付が多く、税率が高いと労働意欲を損なう。付加価値税にすれば、その影響は少ない。
所得への課税から支出への課税への変更は、高齢世代にとって不利益。
税務訴訟は、生産的に利用される可能性があるリソースが無駄遣いされることになる。移転税制に関する訴訟など。
イギリスのサッチャー首相は、地方税を資産課税から人頭税に切り替えたことで反発を買い、失脚した。
税金は、公平、明確、便宜があること、最小であること、が必要。ただし、効率と公平を貫こうとすると税のゆがみが増える。
キャピタルゲイン課税は一律課税だが、所得税を維持するために、キャピタル所得に対する課税を申告したくなるように仕向けた結果。
減税することで税収は増加する可能性=ラッファー曲線の理論。経済活動を刺激して税収を増加させる。論理的に証明できない。
共産主義的課税では、所得税はフラットであるべき。ロシアの2001年税制改正では、ラッファー曲線の証明かと思われたが、実際は、強力な徴税力によって税収が増えたもの。
VATのような売上税を単一税率にするメリットは大きい。食料品の税率を下げることは富裕層にメリットが大きい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレクーデターは主権者が起こすとは限らない。権力者側から、権力者の都合が良いように、権力が集中するように、最もらしい理由をつけて誘導してくる。そういうのここ最近よく見る気がする。
クーデター、大惨事、テクノロジー、と大きく3つに分けて壊れ方が書かれていた。共通するのは、主権者が考えることをやめたときに、権力が暴走して、壊れていくということ。AIの誕生によって、ますます考えることを機械で代替できるような気がしてきてる昨今。でも最終的な善悪の判断は、私たち人間がちゃんと考えないといけない。
なにも考えずに作業だけすると、人はとても残酷なことをする。アイヒマンがそうだったらしい。私はそんなふうに無自覚に誰かを傷つけてるだろうか?と考えてみる。
たとえば、私が着ているこの安価な服。この服はどうしてこんなにも安価なんだろう。どこかで誰かが搾取されて苦しめられてはいないだろうか。
私が当たり前のように払っている税金。この税金は巡り巡ってどこかの軍隊を支援するのに使われていたりしないだろうか。
無意識のうちに、無自覚に、加害していることが日常のそこかしこにあるんだろう。ずっと加害性について考えていると、精神崩壊してしまう。でも、立ち止まって情報が事実に沿っているかどうか、代替案はないかどうか、考えて、無理のない範囲で行動を変えていくことはできる。
あらゆる人がいろんな角度から物事を考えることができれば、民主主義は若返るかも?