吉田忠則のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ深く切り込んでいて、著者の農というテーマへの執念さえ感じさせた。
表面的な企業礼賛論ならだれでもできる。
でも、著者は農政の歴史、現場の意識、政治、行政、企業経営(大規模も小規模)を知っていて、大局観も持っている。
その上で、地に足のついた、泥臭い取材も重ねていらっしゃる気がする。
既存の農家を「救ってやる」という上から目線的な企業参入ではうまくいかない、とか。
企業の農業参入が始まってから10年余り。考察がすごい。
地道に続けている企業、撤退した企業。それぞれの参入の考え方と戦略を丹念に取材している。
そして、農協改革のことと、農業法人的な家族経営から出発した企業経営なども丹念に取材して -
Posted by ブクログ
日本農業はひたすらにコメにこだわってきた。「農業をする」と聞くと、水田でコメを作るというイメージがわく。なぜ、コメなのか。それは日本農業の主体は兼業農家であり、週末だけの作業で簡単に作ることができるのが米だからだ。
しかし、兼業農家は生活費を農業以外で稼ぎ、農業で稼ぐ必要がない。だから、農業の収支はゼロで構わない。いや、赤字でも生活は成り立つ。その上に米価調整などの名目で補助金が与えられる。こうした採算無視の兼業農家が多くを占める日本農業が衰退するのは当然だ。
収支を黒字にする。経営として、そんな当たり前のことができていない日本農業を変えようとする本物の経営者たちの取材を通して、これからの -
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ネタバレ農は甦る
農業を産業として捉え、戦後の農政を総括しながら、今後の農業再生の息吹をルポルタージュ的にまとめたものです。
農業基本法と時代のギャップは薄々と知っていましたが、農地の大規模化や生産性の向上を狙った法律が、地価の高騰と政治の選挙によって捻じ曲げられて来た経緯を改めて理解出来ました。それにしても、行政や政治の不作為は酷い。その果てに今の日本があることも実感出来ました。
そんな中でこの本が紹介している、大規模化と栽培品種の複合化により利益を出しているケースや、流通との複合化で大きくなっているケースなど、様々な成功の芽も紹介されています。
また、有機栽培にこだわることによる非効率性や新しい -
Posted by ブクログ
日本の農業は、補助金依存であり耕作放棄。そして飽食の時代を迎え、廃棄食品が多い。ある意味では、足らないで飢餓になるよりは、ハッピイかもしれないと著者はいう。しかし、コメ離れが起こり、団塊世代の集団離農が始まっている。日本の農業は崩壊するというのだ。
2018年に発行されているが、2016年頃の日本の農業に対して、小泉進次郎の農政への挑戦、植物工場の悪夢、農業の企業参入の「三つの挑戦」を描く。日本経済新聞の記者らしいアプローチで、切り口が鮮やかだが、やはり現実の農業と遊離して、大地に根づいていないのがジャーナリストらしい。
自民党農林部長小泉進次郎を「未来の総理」と称して、その取り組みをヨイショ -
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日本の農業って、今GDPの1%に過ぎないんだな・・・
もはや単独の産業としてカウントする意味があるのか、というレベル。
第二種兼業農家。狭い土地。
そして担い手の高齢化。
いや、だからこそ、というか、実は近年農業の経営は大規模化している。やる気のある人や企業に土地が集まってきているのだ。
データ不足なら、IT、AI。
労働不足ならドローン、ロボティクス。
食の安全への意識の高まり、なんだかんだ舌が肥えてきた消費者。
工場なんかとの最大の違いは、産業の現場がそのまま「景観保全」になっていること。
気候変動と収穫カ農作物の変動。
なんていうか、論点全部入ってる未来産業じゃん!
が、これをマ -
Posted by ブクログ
ネタバレ・日本の農地をフル活用した場合、栄養バランスを考慮せずにイモ類などを中心に栽培すれば128%を供給することができるがこれは現実的ではない。栄養バランスのよい食料を供給しようとすると一人あたり必要な量の69%しか提供することができない。
・現在の日本の農業は、企業的な経営感覚を持ち込んで大規模化しようとする流れと、耕作放棄という相反する2つの流れがある。農政としては、作物を選択して競争力のある分野に集中させようとする補助金の出し方と、広い分野に補助金を出して経営安定を図ろうとする出し方と二通りあり、農林族は後者を主張している。
・遅れている日本の農業を自分たちなら改革できると思って参入してく -
Posted by ブクログ
ネタバレこの分野の関係者でないとわかりにくいかもしれないが、マニアックかつ幅広に書かれているところがすごい。
独立系の記者みたいな感じさえする。
そして、あくまで食えるか食えないか(生計を支えるもの/経営として成り立つか)という切り口で書いているところもすごい。
兼業農家のバッファー吸収の在り方(農業リスクを会社員収入でカバー)
従業員を雇用し続けるために、収益性の薄れるコメを一部辞めてトマトハウスを作ったJAおばこ、
農産物と工業製品の契約の違い。
農業に欠けているのが、消費者の求めるものを敏感に察知するマーケティング力とできたものを効率的に消費者に届けるシステム。
農協による市場出荷は、大 -
Posted by ブクログ
米のことって、ほぼ毎日口にしながらよく知らなかった。農業についてもそう。
農家を守るという事を目的に補助金が出て、市場価格がコントロールされているとのことだが、国の政策として守らなきゃ行けないことも確かにあるのだろう。
高齢化が作り手を減らしていき、これから先どうするんだ?とも思うが、そんな中にも女性の力が期待値を持たせる。また、日本が得意だと思う効率化なども上手く機能すればまだまだ大いなる可能性がある。
確かに旨いものを口にしたいが、コストとのバーターになるため、農家が限られた資源で収益を確保するには高価格帯の商品に目が向くのだろう。でも、みんな同じことをやってもパイの奪い合いでしかなくなる