広木大地のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
期待以上によかった。もう7年前になるが古びていないしシステム開発以外の仕事や日常生活でもハッとさせられる言葉が満載
P11 「理学」が物理学や化学のように世の中の自然の原理を見つけて、説明していく学問であるのに対して「工学」はそれらに依拠しながらも「何か役に立つものを」「実現していく」学問です。エンジニアリングとはつまるところ「実現」していくための科学分野だと言えるでしょう。
P19 学力テストは普通、論理的な思考を用いて行います。しかし人は、論理的思考を常に正しく運用できるわけではありません。とりわけ、他人が介在する問題について、わたしたちは感情的にならざるを得ない生き物です。仕事は通常、複数人で行います。そのため、人間関係や他人との共同作業をしていくうえで、意識的、無意識的に感情的になることがままあります。これを乗り越えて、問題を正しく認知する必要があります。
P37 わたしたちは、物事に取り組むときに、つい「どうやるか、どのくらいで終わるか」がわかっているような仕事を優先的に好んで行いがちです。そうすると、最後のほうに「道や廊下、どのくらいで終わるのか」わからないような不確実性の高い課題ばかり残ってしまい、完了時期がいつまでたってもわからないというような結果になってしまいます。これは、プロジェクトマネジメントにおいても同じことが言えます
P41 重要なのは、本来コントロールできないはずのものをあなたの行動で変化させようと試みる時には、その対象が「観察できる」必要があるということです。なぜなら「観察できない」ものはどんなに行動したとしても変わったのか変わらないのかわからないからです。
P65 問題解決のための眼、それは「視野」(広い狭い)「視座」(高い低い)「視点」(鋭い凡庸)の3つに分類できます。
P122 (何かを説明したときに「わかった?」と聞くのは)まったく意味のない行動だったと悟り、意図的に減らしていくようにしました。【中略】観測可能な行動を通じて理解を確認するには、たとえば「試しに一人でこれをやってみて」であるとか「代わりに自分の言葉で説明してみて」と行動を促すような方法があります。
P123 わたしがよく使う言葉として「能力は習慣の積分だ」というものがあります。習慣とは行動が染みついたものです。そのため「行動」や「習慣」は外からでもメンタリングの方法論を用いて成長を促すことができます。(習慣は行動の積分。習慣が能力に変われば成果につながり成果は自信となって行動を強化していく)
P136 プロジェクトは「はじめ」と「終わり」があり、それが高価をあげて「終了すること」が目的です。それに対して、プロダクトは「製品・サービス」ですので、そのプロダクトが継続的に収益を上げて損益分岐点を越えて発展することで「終了しないこと」が目的になります。【中略】このようにプロジェクトマネジャーとプロダクトマネジャーは本質的に異なる不安に対してアプローチする存在であるという違いがあるわけです。
P157 「合理的な理解」よりも「体感的な習熟」
P172 米国における俗語に「クールエイドを飲むな」という言葉があります。(誰かの思想信条を無批判に受け入れるな)【中略】アジャイルという言葉が誤解されている理由には、こうしたクールエイドを飲んでしまった人々にも問題があります。
P182 時間は、経営における重要な資源です。このことは一概に「早く終わる」ことが重要であるという意味ではありません。「どのくらいの時間がかかりそうなのかを、できる限り正確に知ることができる」ことが重要であるということを意味しています。
P210 本来、ソフトウェアプロダクトを提供する事業において「その日」にリリースされていないといけないという制約は、意図的に作らない限り生まれません。むしろ、本来のビジネスを総合的に考えると「何を作るのか」「それは市場に受け入れられるのか」といった不安がはるかに大きいウェイトを占めるケースのほうが多いのです。しかしスケジュール不安の大きい開発者と経営者という関係性がある場合には、まずはその「情報非対称性」を取り除くことが重要です。スケジュール以外にも重要なことがあるのだということを、お互いに気が付く必要があるからです。
P216 最初に構築した仮説から、一番の不安材料となるものを洗い出し「不確実性を下げられる存在」つまり顧客に当ててみることで初めて、仮説の不確実性が削減されます。(目的不確実性が下がっていくと大きなコストをかけられる 仮説構築⇒ユーザー調査⇒プロトタイプ検証⇒MVPリリース⇒小規模マーケティング⇒大規模マーケテイング)
P220 不確実なことを減らすには、一番不確実なことから確かめていくことです。そうすれば早く失敗できるので、一番早く問題解決できます。エンジニアリングとはそういうことです。それは「言うは易し行うは難し」の典型例とも言えます。【中略】人間には恐怖から逃げる仕組みが用意されているのでなかなか抗うことができません。「一人でできないのであれば複数人でやればよい」と考えると少しだけこのことが簡単になります。現実を直視し、不安に向き合えるようにチーム全体が個々人をサポートしていく状態になれば、仕事における不安に向き合うことができるようになります。⇒不安に向き合うフレームワークとしてのスクラム
P243 権限移譲のレベル
レベル1 上司が部下に命令する 2上司が部下に説得する 3上司が部下に相談する 4上司が部下と合意する 5上司が部下に助言する 6上司が部下に尋ねる 7上司が部下に委任する cfデリゲーションポーカー
P250 (カニンガムの提唱した)「技術的負債」という言葉は、会計上も経営指標においても計上されるわけではない空想上の概念に過ぎません。「技術的負債」という言葉の定義もあいまいで、何をもって技術的負債ということができ、何を持って測定され、どのような返済手段があるのかといった議論も尽くされることなく、広く用いられるようになりました。その結果「技術的負債」という言葉の存在で何かを説明したと思い込む人々や、ソフトウェア開発における経営上の問題について関心を抱かない経営者によってむしろコミュニケーションを断絶する言葉になってしまっているケースがあるように思います。
P276 システム外注における取引コスト=探索のコスト(外注先選定にかかるコスト)交渉のコスト(契約条件を決めるために必要なコスト)監督のコスト(外注先をマネジメントするコスト)
P277 (企業のコアコンピタンスとして内製で持つものと一時的に必要な機能や周辺領域を拡大するために外注するものの)線引きをシステムの構造(アーキテクチャ)として持つことで、上手に取引コストをコントロールできます。
P286 機能横断型組織=新しい知見が生まれやすくなりビジネス上の意思決定が早くなる=知の探索/機能別組織=特定の領域の効率を上げていく=知の深化
全ての業種においてこの「知の探索」と「知の深化」のバランスの見極めが必要です。 -
Posted by ブクログ
最後まで密度の濃い、目から鱗の内容であった。
エンジニアリング、メンタリング、アジャイル、など、フワッとした言葉を、明確に定義付けし、府に落ちた。
少しでも行動に移していく。
以下メモ。書ききれない。。
・エンジニアリング:実現のため不確実性の低い状態に効率良く移す全ての過程(不確実性の削減)18
・問題が解けないのは、問題が正しく明晰に記述できていないため。解決よりも先に、問題をはっきりさせる。経験主義の考え方と仮説思考が重要。21,50
・不確実性の高い物を優先して取り組む。効率よく不確実性を下げるプロセス。やりたくないもの。37
・出来ること:コントロール出来るものを操作し、観測できるものの結果を見る(経験主義)。42
・良いプログラムとは:視野、視点、視座を広く、鋭く、高く置いている。65
・コミュニケーションがうまくいかないのは、「情報の非対称性」と「限定合理性(極小最適)」が存在。
コミュニケーション能力:不確実性を減少させる能力
情報の透明性:意思決定に関わる情報が、組織内に正しく整合性をもって伝達されるための取り組み。情報公開とは異なる。72
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Posted by ブクログ
自分的には非常に良書だった。個人レベルの思考方法についてから入り、コミュニケーションを行う上でのメンタリングの重要性、チームにおける開発・マネジメント、組織の力学と徐々にスケールアップしていく流れも良かった。エンジニアリング組織で働く人の学びになる記述が多くある。特にメンタリングのところは、自分がメンティーの立場だったときに記述されていたようなコミュニケーションを実践できていなかった先輩も多かったし、自分がメンター的立場だったときを思い出すと発言や接し方を反省すべきところがたくさん思い返された。ところどころ、「~は○○といいます」みたいなところでは出典を出した方が良い気がしたのと、筆者の経験を踏まえた自身の考えなのか、出典のある定説なのか分からず、モヤモヤ感じるところもあったが、文章の納得性は非常に高いので、割と素直に理解・共感できた。また、節の中での項目間のつながりがよく分からず、伝えたいことが羅列されているように見えてしまう感もあった。その分を差し引いてもぜひ多くの人に読んで欲しい重要な知見が詰め込まれている。
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Posted by ブクログ
エンジニアリングとは不確実性を減らす作業という定義のもと、個人、対人、チーム、プロダクト、そして組織に対してどのように不確実性と対峙していくかということが丁寧に書かれている。
仕事は学力テストと違い答えのないものが多く、いかにして不確実性と向き合っていくかという観点で大変参考になる書籍だった。
特に以下の内容に気づきを得られた。
・人や組織は限定合理性によって対立する
・アーキテクチャは組織構造に影響を受ける
・技術的負債が溜まりやすくなるのも組織構造の問題
読んだ直後でまだ飲み込みきれていないので、
日を開けてもう一度読み直してみたいと思う。 -
Posted by ブクログ
エンジニアリングを、進めていく上でどのように組織を作っていくべきかについて網羅的に述べた本。最初は個々人の考え方(メンタリング)から始まり、最後は企業というひとつの大きな組織の中でどうしていくかまで話を広げていく。
個人的に面白いなと思ったのが、プロダクトを作る上で大事なのは「不確実性を減らしていくこと」であるので、不確実性を効率的に減らせるオプションを積極的に採用していくべきというものだった。
これにより、いくつか存在する不確かさ(不安)に対してうまく対処することができるというもの。
あまり自分はこの観点で考えたことがなかったので目新しかった。
また、やはりチームメンバーとのコミュニケーションは重要であるし、組織内に閉じた限定合理性をまでに止められるよう意思伝達は正確に行っていきべきだなと感じた。
メンタリングの際も、自分の考えを押し付けるのではなく、あくまで質問ベースで相手の気づきを促す………これはなかなか難しい。
その他にも、プロダクトの目標を再整理するためにリーンキャンバスを利用するというのはなるほどなと思った。
ちょうど今、少人数でこのようなプロダクト作りに取り組んでいるので積極的に試していきたい。 -
Posted by ブクログ
組織論のお勉強。すごくよくまとめられている。
スクラムは、経験的プロセス制御理論(経験主義)を基本にしている。経験主義とは、実際の経験と既知に基づく判断によって知識が獲得できるというものである。スクラムでは、反復的かつ漸進的な手法を用いて、予測可能性と最適化とリスクの管理を行う。
…いずれにしても、現代においても経験主義的な発想というのは、しばしば抜け落ちがちで、「考えれば答えが出る」という学力テスト的な価値観が蔓延しているように思います。
パースは、人間の推論能力の方法として、従来の演繹法、経験主義で重視された帰納法に加えて、仮説法というものがあり、「これこそ、新しい諸観念を導入する唯一の論理的操作である」と述べました。
…仮説法は、「わずかな痕跡」から、それを説明可能とする大胆な思考展開・モデル化を行い、それを検証するための行動につなげる推論方法です。
仮説思考は、経験主義をさらに生産的な(不確実性を削減する)ものにするための「大胆な跳躍」をもたらします。そして、仮説は、今あるデータからは、演繹的・帰納的には導くことのできないものです。人間的な直感やひらめきによって、今までの情報や様々な偶然が積み重なって生まれる跳躍であって、天下り的な結論や合議による凡庸なアイデアは「仮説」にはなりえないのです。
■コミュニケーションの不確実性(ニクラス・ルーマン)
・他者理解の不確実性:人は他人や事象を完全には理解できない
・伝達の不確実性:コミュニケーションが到達するとは限らない
・成果の不確実性:仮に理解されたとしても予想されたように行動するとは限らない
…組織の人数が増えるにつれて、スケールするはずの情報処理能力が実際には線形に推移せず、徐々にそれよりも悪くなるのは、これら「情報の非対称性」と「限定合理性」が存在するからです。
■限定合理性
人間の能力には限界があります。すべての情報をすべての人が適切に処理できるわけではありませんし、同じように認知するわけでもありません。こうした認識範囲や能力の限界から、限られた範囲でしか合理的な行動が取れない性質が限定合理性です。個人的に最適な戦略が、全体にとって最適になるとは限らないのです。
「情報の透明性」とは、意思決定と意思決定に関わる情報が、組織内に正しく整合性をもって伝達されるように継続して努力し、何かわからない決定があったとしても、それは隠そうとしたわけではなく、抜けてしまったのか、自分が聞き逃したのだから、直接聞いてみようという関係性をつくることです。情報公開が情報の透明性を作るわけではありません。
「透明性」とは、つまり、継続したコミュニケーションや仕組みを通じて、コミュニケーションの不確実性を低く維持し、情報の非対称性が削減され、限定合理性の働きを弱められている状態のことをいうのです。
■「心理的安全性」を高めることで現れる影響
・率直に話すようになる
・考えが明晰になる
・意義ある対立が後押しされる
・失敗が緩和される
・イノベーションが促される
・組織内の障害ではなく目標に集中できるようになる
・責任感が向上する
■アジャイル
・アジャイル:目的地(ゴール)。環境に適応して、最も効率よく不確実性を減少させられている状態。理想状態なので、決して到達できない地点。
・アジャイルなチーム:目的に向かう集団。理想状態に向かって、前進しているチームの状態。ゴール認識のレベルが高くチームマスタリーを得ている。
・アジャイルな方法論:目的地に向かうための考え方。理想状態にチームが向かうために、お互いにメンタリングし、不確実性に向き合い、減少させるにはどうしたらよいか考えるための組織学習の方法論や考え方
・アジャイル(型)開発:目的地に向かう特定の移動手段。アジャイルな方法論を取り込んだある具体的なチームで実行されている開発プロセスのこと。移動中に状況に応じて書き換えられ、別のものに変化していく。
・アジャイル開発手法(アジャイルプラクティス):移動手段の手引書に書かれていること。アジャイルな方法論を取り入れやすくするためのルールやフレームワークとしてまとめられている手法。多くの場合、状況に合わせてそこに書かれていることも変化させる必要があると書かれている。
ヴェロシティは、あくまで計画の予測可能性を高めることや、チームの健康状態を測るために使うべきです。
…
もしスプリントごとに見積りを行い、ヴェロシティを測定すれば、その値は妥当性のあるものになります。一方、ヴェロシティが上がったからといって、それは見積りの誤差があったことを示すだけです。チームは、ヴェロシティを上げることよりもむしろ、ヴェロシティが安定し、将来の予見可能性を上げることに投資をしていく必要があります。
■エンジニアリングの不確実性
・環境不確実性→目的不確実性…戦略
→方法不確実性…戦術
・通信不確実性 …兵站
実際のところ、どのようにアーキテクチャを組むのかというのは、ビジネス戦略上極めて重要な経営意思決定といえます。取引コストは、企業組織の境界線を決めるものです。システムにおいても同様で、内製領域と外部調達の領域を決めるのは、経営上不可欠な視点です。 -
Posted by ブクログ
◼️ Q.(問い)
事業部を成長する組織に変えていくためには?
◼️ A.(答え)
コミュニケーション強化の仕組みを作り、組織の情報処理能力を上げる
◼️ What(どういう意味か)
1. 「未来」「他人」の不確実性(=不安)が組織の成長を鈍くする
2. 不確実性の検証能力=情報処理能力アップ → 不安が減り、生産性が上がる
3. 円滑な情報処理には円滑なコミュニケーションが必要
◼️ Why(なぜこうまとめたのか)
1. 透明性 ≠ 情報を公開すること → 情報を知れる関係性こそが本質
2. 継続的なコミュニケーションにより、透明性を維持・強化する必要がある
3. コミュニケーションの円滑さは、組織が大きくなると失われやすい
◼️ Keywords
- エンジニアリングの本質は **「不確実性の削減」**
- 曖昧な構想を具体化していくのが組織の役割 → 組織力が高い=具体化能力が高い=不確実→確実の速度が早い
- 透明性 ≠ 情報を公開すること→情報を知れる関係性が本質
- SECIモデル:暗黙知と形式知のループによる知識獲得モデル
- アジャイルは開発手法ではない→合理的なチーム状態を表す概念
- 不安の根源は「未来」と「他人」に関する不確実性 → コミュニケーション不確実性、方法不確実性、目的不確実性の3つ
- 生産性 ≒ 不確実性の検証能力=情報の処理能力 → コミュニケーションコスト < 情報処理能力 な組織設計が必要
- 権限と責任の明確な移譲は組織の情報処理能力を高める → 各層で素早く判断・行動するためには相互理解が不可欠
- 職能型組織は知の深化に、機能横断組織は知の探索に向く → 組織全体の情報処理能力を維持・向上できるバランスが必要