飯倉章のレビュー一覧
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第一次世界大戦は欧州舞台の戦争なので日本人にはどうしても関心が薄く、私もほとんど教科書的知識しかありませんでした。
しかし「ロシア革命」を研究していると、第一次世界大戦をしっかり押さえておかねば、とんでもない誤認識をしてしまうことに再三でくわしました。
そこで本線をいったん置いて、第一次世界大戦をざっと発端(それ以前もある程度含めて)から終結(それ以後も同様に)までを押さえてみようと想い、何冊かの新書を購入しました。ロシア革命も100周年がありましたので新しい切り込み・解釈の著作が増えましたし、それほどではありませんが第一次世界大戦もけっこう新しい著作が出ています。
購入した新書版の中には大戦 -
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第1次世界大戦を敗戦国ドイツ視点でながめ、その敗因を分析する。
戦前の19世紀、ドイツは皇帝ヴィルヘルム1世、首相ビスマルク、軍参謀モルトケによる緊張感のあるトライアングルが機能し、ヨーロッパ最強の軍事力を持っていた。が、ドイツ軍は強すぎた。その強さを過信し、戦線を拡大しすぎてしまった。東でロシア、西でフランスと戦い、さらにはイギリス、アメリカと次々と敵を増やす。適当なところで戦争を手仕舞いすることができなかった。
本来なら政治力、交渉力を発揮すべき、ヴィルヘルム2世や軍参謀ルーデンドルフらは徹底的に勝利することだけにこだわりすぎ、ドイツは自滅する。
日本が積極的に関わっておらず、戦場も -
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第一次大戦のドイツは結局敗北したが、実際には緒戦ではドイツ軍の被害よりも英仏軍の死傷者のほうが多かった。なぜドイツ軍はそれにもかかわらず敗北したのか? ドイツ(軍)の強みはどこかについてまとめている一冊。
読んだ感想としては、戦術的勝利こそ多いものの、戦略的視野に欠ける勝利が多く、また戦略立案では希望的観測に基づいていることがわかる。
特にルーデンドルフが無能すぎた。ルーデンドルフは政治的視野に欠ける人物だが、政敵を追い落とすことにだけは熱心だった。ルーデンドルフの立案で戦術的勝利が得られているのは間違いないが、彼が外交に過剰に口を出して和平交渉を邪魔した。いかんせん彼の立案で勝っている( -
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ネタバレ第一次世界大戦は、勃発の経緯や戦中における参戦国の動向、終戦経緯と戦間期の状況(第二次大戦の蠢動)など一貫して示唆に富んだ出来事だと思います。
飯倉さんの著作は淡々した文体ではありますが、史実だけでなく、様々な説や推察が紹介されており、奥深いです。
個人的に第一次世界大戦のドイツについて腑に落ちない点がありました。それは1918年に「急速に崩壊した」感があること。3月に大規模な攻勢(ミヒャエル作戦)を実行して連合軍の前線を崩壊させ、その後も数度の攻勢作戦を経て支配地域を拡大させた一方で、終盤に連合国の反撃を受けて雪崩のように内部崩壊を起こし、最後は息も絶え絶えでコンピエーニュの森で敗北の署名 -
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ネタバレ本書は、大戦の勃発から終戦に至る一連の歴史経緯を、基本的に時系列の中で主要な出来事をおさえている網羅的な歴史解説本です。
飯倉さんの歴史(戦史)本は、その文体には劇的な点が少ないので読んでいてスリリングな経験はあまり望めないかもしれません。しかしその著作の素晴らしさは、経過を淡々と記している一方で重要な局面での内幕や、歴史家たちの様々な意見にもしっかり触れられている点だと思います。
例えば、開戦の要因としてよく言われるのは同盟・協商間対立ですが、
「しかし、各国は同盟・協商に完全に拘束されてはおらず、独自の外交の余地もあったので、この関係性がそのまま第一次世界大戦を引き起こしたとみるのは早 -
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日本とよく比較されるドイツの知られていない第一次世界大戦の敗戦までのノンフィクション。
第一次世界大戦のドイツにおける敗戦原因が、軍人、皇帝、政治家の三権分立による双方のバランスが崩れにより、敗北に歩んでいく過程が理解出来た。
軍人ルーデンドルフが、専門外の政治に踏み込み過ぎたために、悪い意味で歴史に名を刻んだ。
日本では、独裁者は幸運にも生まれなかったが、本来の機能や立場を忘れたために、敗戦に至ったという点は、日本にとって他人事ではないはずである。
初見であるのが、ドイツが善戦していたのには意外であり、日露戦争を勝利した日本にも当てはまるのか。
中途半端に、善戦していたが故に、第二次世 -
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第一次世界大戦、それは世界規模の歴史の始まり。
「世界植民地化」を押し進める“列強”は、次第に狭くなる世界に思惑が過熱し、ヨーロッパで遂に発火した。
受験勉強でお馴染み「サラエボ事件」からだ。
各国の首脳達が「すぐ終わる」と思っていたのに、なぜか長引く……「戦いを仲裁する力と意志を持つ強力な第三国も存在しなかった」……結局、始めたら自分たちではやめられない。
新兵器が繰り出され戦死者が増加するなか、首脳陣は同時に複数の相手(時には自国内)とチェスを繰り広げるように対戦する。
そして、これまでの貴族政治によるヨーロッパでの覇権争いから、アメリカ、日本、オーストラリアなど大陸を超えた争いが加 -
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サラエボ事件100周年となる2014年以降様々な第一次大戦本が発刊されたが、それらにやや遅れて世に出た本書の特色は何と言ってもその豊富な風刺画の数々。個人的に印象深かったのは大戦の帰結を描く第5章の扉絵。連合国側の勝利を告げる乙女の周囲に描かれる各連合国の紋章の中に、日本の十六八重表菊が見て取れる。日本と縁遠いとの印象を持たれがちだが、この大戦において日本は一応戦勝国なのだ。
前書きには主に主要人物の人物像と意思決定に焦点を当てたとあるが、新書という制限の多いメディアではそれが成功したとは言い難いと思う。何せ人物そのものの数が多すぎて、個々の内面にまで光が当たる頻度が少ない。文章も硬いため他