斎藤元一のレビュー一覧
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「敗北を抱きしめて」のダワーが、日米戦争中の日米双方の人種主義を分析した本。
「敗北を抱きしめて」はとても面白い本で、戦後の日本復興における日本とアメリカの一種の共同作業のプロセスをリーダーたちの言動だけでなく、庶民の捉え方も含め、言説やシンボルなどの文化的な読み解きを通じいて、とてもエキサイティングであった。
この本が書かれたのは、この「敗北を抱きしめて」より早く、扱われている時代も戦前、戦時中というわけで、「敗北を抱きしめて」の前編ということもできる。
内容としては、いかに戦時中に日米双方が、人種的な偏見、ステレオタイプ化によって、相手を非人間的な存在として、語り、シンボル化して、戦 -
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著者ジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』は、当時の文献研究を通して、敗戦直後の日本の埋もれていた事実を多様な視点から浮かび上がらせた名著だった。本書は同じ著者が、太平洋戦争時の日米双方の敵意あるプロパガンダや世論を文献から掘り起こし、戦争における人種問題の影響を批判的に指摘したものである。日米双方に強い排他主義と自民族優越主義が見られるが、同時に日本における言説とアメリカにおける言説の傾向は大きく違っていることも対比に基づいて指摘されていて興味深い。
人種間の憎悪をあおるような差別意識は過去のものでは決してなく、今も根強く残り、そのため簡単に火がついて蘇ることもある。年配の親戚が、韓国やロシ -
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太平洋戦争における戦中戦後のアメリカ人の日本人観や、日本人のアメリカ人観の変遷が細かに分析された非常に読みごたえのある研究書です。
アメリカ人の日本人観はさもありなんということが多いのですが、注目すべきは日本人のアメリカ人観の著述です。
日本人は戦中にあれだけアメリカを憎んでいたのに、戦後はその態度をほぼ正反対に変えます。これは国家戦略として国家が選択したという問題ではなく、広く庶民にそういう感情が生まれました。
著者は日本人がアメリカ人を『鬼』と見なしていたことが、実は戦後のアメリカ人への対応をガラッと変える事ができた重要な要素として捉えています。それを証明する過程も丁寧で、日本人の -
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第2次世界大戦における日米戦争中のプロパガンダの比較研究書と言えるかと思います。
何度か読む機会があったのだけれども、今回全文を初めて通して読みました。常に自分の側に「正義」があると謳うアメリカ合衆国。それを信じる国民にとっては、この本は読むのさえ拒絶するのではないだろうかと想像させる内容です。当時、どれだけあからさまにアメリカで、日本人(また日系アメリカ人!)を蔑視していたかを知ることが出来ます。また、時を同じして日本では、「鬼畜米英」をどう謳っていたかも改めて知ることができます。
どう国民が信じていたかを知ることは出来ませんが、本で書かれているようなプロパガンダが問題なく世間では受けいれら -
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太平洋戦争について、この本のように人種主義的な見地から叙述されたものを読んだのは初めで新鮮であった。
自分たちの民族が優れていると思いたくなる気持ちは分からなくはないが、それは幻想にすぎない。真珠湾や太平洋戦争初期にアメリカが敗北を重ねたのも、日本がミッドウェー以降敗北し続けたのも、その本質的な部分には自らの慢心・奢りがあったことは確かである。太平洋戦争は日本がアメリカに無謀な戦いを挑んだもので、そもそも挑んだこと自体が愚かであったことは誰しもが知るところであるが、その本質が白人至上主義に対する大和民族の挑戦であったことをはっきりと認識している現代人は少ないと思う。白人至上主義に意義を唱えると -
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ジュンク堂の小熊英二書店のキャンペーンで見かけたもの。学生時代、個人的な印象としては、1945年の敗戦前後の日本史、とくに政治・思想史に関する「古典」として、ジョン・ダワーの名前はおそろしく知名度があったものに思える。それはもう社会学におけるマックス・ウェーバーやテンニース(これはちょっと古すぎる?)のような感じで、同種のものにベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』があった。そんな感じ。実際はどーだったのだろうか?
彼の名前をそのように有名なものとしているのは『敗北を抱きしめて』だけど、本書はそれに先立つ作品。第二次世界大戦、とりわけ太平洋戦争において、日本とアメリカやイギリスの両政府