アンディ・ノロニャのレビュー一覧
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ネタバレVUCA時代の重要なキーワードである「Disrupt」と「Digital Transformation」を融合した、まさに”Disrupt, or to be disrupted, that's the question.”という問いへの回答の一助になる一冊。
デジタルトランスフォーメーションの本質は、単なるコスト削減ではなく、顧客への提供価値を高めることを目的としている(その上でコストも下がる)。3つのバリューはその方向性を検討する上で重要。
そのために、データドリブンな組織の構築(ビジネスアジリティ)は必須。
カタカナの造語が理解にしにくく、訳が頭に入ってこないの等の欠点はあるものの、デジタルを理解した経営戦略を体系的に学べる。
以下、本書からの学び
【「破壊者」ではなく「破壊の力学」に注目する】
重要なのは「ディスラプター」ではなく、「ディスラプション」。
【デジタル・ディスラプションの破壊力】
デジタル・ディスラプションと従来の競争力学とのちがいは、「変化の速度」と「利害の大きさ」。
業界ごとのデジタル・ディスラプション(p.338、表A4)
製薬業界ではデジタル・ディスラプションの可能性は低いが、影響を免れるというわけではない(パーソナライズ、デジタル・マーケットプレイス等)。
既存企業の強み(資金調達力、ブランド力、顧客基盤)は「規模」頼み。デジタルによって規模は容易に突破可能。ディスラプターは規模の不経済から利益を得ている(小規模の方が良い)。
ディスラプターはバリューチェーンの構築なしにバリューを創出。重要なのは、「バリュー」そのもの。
「自らをディスラプト」は、会社が顧客に価値を提供してきた方法がどれだけ強固かを疑うところからはじめる。
【デジタルが可能にしたビジネスモデル】
デジタル技術が新ビジネスモデルを可能に。
デジタルがもたらす3つの「カスタマーバリュー」
①コストバリュー(p.52、表1):競争におよぼす効果が最も強い。製品・サービスの非物質化。解析を駆使した情報優位、また情報優位による業務最適化。
中間業者として商取引に介入。
②エクスペリエンスバリュー(p.58、表2):製品・サービスをアンバンドルし、安価に提供。
③プラットフォームバリュー(p.66、表3):ネットワーク効果(メトカーフの法則)。
組合せ型ディスラプション:ビジネスモデルが組み合わさり、3つのバリューの破壊的な組合せが顧客にもたらされる。
【バリューバンパイアが市場の利益を飲み干す】
自らの競争優位により市場の売上・利益を縮小させるディスラプター。既存企業のマージンを枯渇、時代遅れの存在にさせる。市場の急激な変化を促進。
大きなイノベーションを経験していない市場では、多くの顧客が既存サービスに不満。
デジタル化可能なあらゆるものがデジタル化される。製品そのものではなく、「チャネルや消費行動のあるステップ」がデジタル化の可能性。
事例:ナップスター(p.91、表4)
顧客はデジタル・ディスラプションには大きな価値があると理解。
デジタル・ディスラプションによって、新たな市場機会生じる。一時的な空白地帯。『ホワイトスペース戦略』参考。
既存企業が3つのバリューを創出し、攻勢にまわれるチャンス。
『ブルーオーシャン戦略』の「市場の境界線」「模倣を防ぐ壁」は無意味に。
事例:アップル(p.111、表5)
【ディスラプターとどう戦うか―4つの対応戦略】
防衛的戦略:収穫戦略、撤退戦略
攻撃的戦略:破壊戦略、拠点戦略
①収穫戦略:ディスラプティブな脅威を遮断。顧客、提携業者、規制機関、世論形成者、資本提供者との関係を利用。法的措置、マーケティング活動、料金引き下げ等。低迷期間中に引き出せるだけのマージンを引き出す。デジタルで効率性を向上。収穫戦略が唯一の対策ではない。(p.124)
②撤退戦略:今の市場から離脱しニッチな市場に逃げる。事業維持コスト>利益 の場合。
③破壊戦略:デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルを駆使して3つのバリューの創出に専念。
提供業者としての自らの役割から離れ、顧客の気持ちになって考える。
コストバリューとエクスペリエンスバリューは一般的には相容れない選択肢だが、デジタル・ディスラプターは違う。
④拠点戦略:ディスラプションにおける競争上の利益を維持。
ディスラプションをもたらした企業が最終的な勝者になるとは限らない。
「新設」「買収」「提携」のいずれを採るべきか?
戦略ごとのカスタマーバリューの形態(p.145、図13)
技術コストは指数関数的に減少していく(ムーアの法則)が、既存企業は高い技術コストを負わされている。コスト曲線の自らの立ち位置を「リセット」することが課題。
【アジリティを高める3つの組織能力】
ディスラプターのスピード、柔軟性、有効性に対応できる能力(p.304、図18)
「察知力」「情報に基づく意思決定力」「迅速な実行力」
3つの能力には連続性がある。
時には、ディスラプターのデジタル技術が必要な能力獲得を助けてくれる。
【これまで手に入らなかった情報を集める―ハイパーアウェアネス】
察知力:関連するデータ・洞察を収集し、自社が置かれた環境の変化を察知し、監視する能力。
どんな洞察を得たいか?何を監視するか?そのためにどんなITインフラ・人的資源が必要か?
【解析力を高めてバリューを見抜く―情報にもとづく意思決定力】
情報に基づく意思決定力:データを解析して知見を吸収し、適切な人材を引き込みつつ、一貫して正確な意思決定をするための能力。
良い意思決定ができるかは、良いデータ解析ができるか、社内外の専門家たちが必要なデータにアクセスし、適切な段階で意思決定プロセスに関与できるか。
【リソースとプロセスを動的にする―迅速な実行力】
迅速な実行力:うまくいっていない、時代遅れのアプローチを捨てて迅速かつ効果的に実行する能力。
【いかにして競争力を高めるか】 -
Posted by ブクログ
ー デジタル・ディスラプターが狙っているのは「バリューチェーン」ではなく「バリュー」そのものだ。そのためB2B企業は価値がどこで生み出されているのかを理解しておかなければならない。残念ながら私たちが調査してきたB2B企業の多くは、高いハイパーアウェアネスを持っていなかった。
これはおそらく、生み出された価値が最終顧客(すなわち消費者)によってどう消費されるかという観点から数歩離れたところにいるからだろう。 ー
体系的で分析的で現実的で面白い。
ディスラプターが重要なのではなく、ディスラプトという事象そのものの方が重要。ディスラプターの成功や失敗が重要なのではなく、ディスラプトそのものの当社への影響を考えることの方が重要。
本質を見誤らない議論が重要なんだなぁ〜。
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Posted by ブクログ
第四次産業革命と言われる時代へ「既存企業の戦い方」という具体的書名に惹かれて。デジタル化するか、しないか、という設問はもはや存在しなくてデジタル化が当たり前である時、恐る恐るプロジェクト立てているような会社のリーダーにとって厳しい厳しいお話です。でも産業のための産業と考えるのではなくて、カスタマーファーストで考えるとこうなるよな、という真っ当なお話でもあります。コストバリューとエクスペリメントバリューとプラットフォームバリュー、そしてその組み合わせというビジネスモデルもわかりやすい。その上で、ナップスターに代表されるバリューバンパイアという破壊者の存在や、そのあと登場するアップルのコンピテンシーであるバリューベイカンシーというチャンスも納得です。でも一番響いたのは「プラニングは無意味」「必要なのはアジリティ」という指摘。今までプロトタイピングとか言って、やらやないよりはやった方がいいレベルとは違う行動の力を持てるかどうか?これが日本の組織に一番難しいかも。
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Posted by ブクログ
多くの企業においてデジタル化が至上命題とされ、既存企業がスタートアップを始めとするディスラプターの脅威を感じつつある中、シスコとIMDの優れた研究者らが、既存企業がどのようにそうした脅威に対抗していけばよいのかを、戦略論としてまとめた一冊。個人的な感覚にはなるが、マイケル・ポーターの「競争の戦略」を、”デジタル時代における競争の戦略とは何か?”という観点で書き起こしたら、このような本になるのではないか、というくらい、刺激的。
本書では学術的な研究メソッドに基づき、以下のような概念の定義がなされる。
・デジタル化が顧客にどのようなバリューを提供するかの観点から、デジタルのビジネスモデルは「コストバリュー」、「エクスペリエンスバリュー」、「プラットフォームバリュー」3つに類型化される。また、重要なのはこの3つを複合的に併せ持つことで、より企業としての競争力を高めることができるという点にある
・そうしたバリューを武器にして、市場はヴァンパイアのように荒らされる場合もあれば、逆に荒らされることによって一時的にかもしれないが、新たなホワイトスペースとしての市場が見つかる可能性もある
・そのリスクと機会に対して、既存企業は「収穫/破壊/撤退/拠点」という4つの対抗戦略を取り得る
・その対抗戦略を実行するために、既存企業は、3つの能力を身に付ける必要がある。「行動と状況を早いスピードで察知するハイパーアウェアネス」、「情報に基づく高度な意思決定力」、「動的/柔軟なリソース配分に基づく迅速な実行力」である。
本書が優れているのは、巷で騒がれるようなスタートアップを始めとするディスラプターそのものに目を奪われるのではなく、ディスラプションという事象自体に注目して、その事象・環境の中で、どう戦うか、という点に意識をシフトさせるべき、という点を明言している点にある。過去のディスラプターがそうであったように、特定のディスラプターが未来永劫に持続する保障はない(特にディスラプターの中には、法・規則を軽視しがちなプレーヤーがいるが、そうしたプレーヤーが長続きしないことは歴史が証明している)。だとしても、一度引き起こされたディスラプションは止めることができないのも事実である。MP3とナップスターの登場によって、音楽市場がかくも無残に破壊されたように。 -
Posted by ブクログ
・デジタル・ディスラプター、ディスラプションの体系化はわかりやすく納得感がある。既存企業の課題については、イノベーションのジレンマにイメージされるようなよくある指摘内容に思った。
・対抗策もわかりやすく体系化されている。顧客への価値提供の場面で、自社の置かれている状況をどう捉え、どう対抗するか考えるための良い足がかりになりそう。
・社内機能についてのアジリティ部分は、どのように機能を捉えるかという点で独自の切り口があり興味深い。アウェアネス(社内・顧客の情報をデジタルで集める方法)、意思決定(社内各所で集めた情報を可視化or意思決定の自動化ルール策定)、実行力(データから迅速に社内リソース・プロセスを動的に変えていくコンセプト)
・一方でそのゴールについてはぼんやりと描かれていて、デジタルをうまく使ってるという手段の味付けが濃い感じ、机上の空論な感じの印象。机上の空論自体は必ずしも悪くないが、実践のための課題となりそうなポイントまで洞察があるとなお良い本になると思いました。 -
Posted by ブクログ
DX実行戦略 デジタルで稼ぐ組織をつくる
読者想定は大企業、イメージ員数500名以上のイメージです。
ヒアリング、調査対象がグローバル企業であるため、中小企業に置き換えると対岸の風景に見えてしまう可能性ありです。
一方で、大企業ですら、DXなるものが未完成でありつづけている現状は、DXがビジョンを含めた戦略であることと理解できます。
1.定義
DXとは、ビジネスモデルと組織を環境に適応。変化させて、業績を向上させることです。
2.ビジネスモデル。3つの方向性
①コスト削減。
②顧客体験向上
③プラットフォーム価値向上
欧米スタートアップは、この1.2.3.の合算で既存市場の破壊を行なっています。
大企業、歴史ある企業の方向性も同じく1.2.3.の合算が望ましいです。
3.DXを組織で実行する。2つの要素。
どの企業にも下記の2つの要素が存在します。
時間は要しますが、DX実行にあたっては、この全てを明らかにすることとあります。
アドビは、それを行ったうえで、プロジェクトベースで①②含めた可視化のしくみ/コックピットを作りました。
①ノード/リソース
ひと、データ、システム
②①のリンク/関係性
強い、弱い
4.ネスレ グローバル企業の取り組み
カスタマー(推察/小売、個人そして企業内個人)の体験をさらに適切なものにするため、毎週寄せられる苦情、要望を集計、分析そして活用しています。
大企業かつブランド浸透企業ですらこの水準までやっていることは、驚異であり、かつ脅威です。
5.わたしの実務に置きかえて
2.の顧客への提供価値。コスト、体験、プラットフォーム。
そして、3.のノードとリンク。
3.リンクを強く、太くするために、外部から教えてもらう/ヒアリングする機会を増やしていきます。
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Posted by ブクログ
なぜDXなのかを紐解きながら、オーケストレーション(結びつきのアプローチ)で経営層としての意思決定者は全体で推進させる力となることの重要性がよく分かった。そのうえで、各組織がデジタル化プロジェクトを推進する責任を追うという分担は理にかなっていると思った。ただ、なかなかこれを伝えることの難しさ、特に各組織・更にはその所属員たる社員にどのようにミッションを追わせていくのか、難しい問題に思った。会社の方針としてDXやデジタル化などが言われているが、実際の自分の業務として捉えてもらって、社員がデジタルの協力者や推進者になってもらうにはどうしたらよいのか、そのメッセージや進め方は更に考える必要がありそうだ(会社の風土にもよるだろうが、どのようなパターンが考えられるのだろうか)。
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Posted by ブクログ
既存の大企業におけるDX推進の方法について書かれている。
特にDXを各個人・各部門の仕事としてではなく全社の仕事として捉えるオーケストレーションというモデルが印象的。
デジタル推進などの新規課題は経営層が社内リソース(データ、人、インフラ)を把握し、自らが指揮をとる必要があると言うことを、ぜひ経営層には今一度認識してもらいたい。またそれぞれの楽器(部門・個人)のつながりを促進する責任の所在について明確にする必要があると認識した。
またコルディナティという部門間の橋渡し役についてもその付加価値の無さなどについて記載されており、自身の上司と重なる部分があった!笑
DXの導入や推進の具体的な方法というより、大企業の中で何かを成すノウハウという点での抽象的な考え方は大変参考になる本であった。
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Posted by ブクログ
ネタバレDXというバズワードとそれを実行するという、企業内部でのありがちな実践例を架空の企業(ベースあり)をモデルに読み解いていっている。
新規事業の立ち上げというレベルではなく、今回は「ディスラプション」ということで乗り遅れるとやばい、というレベル間の中かなりの企業が失敗しているという状況
ポイントはあまりにも大横断すぎる「既存企業」が対象となるため、これまでの一点突破アプローチでなく、全体突破でのアプローチが必要ということ。一点突破では単なる部門のデジタル化で終わってしまう。が、ここが難しい要素。
しがらみも多く、更に日本ならではのしがらみもあり、一筋縄ではいかないのがCDO(CTOなど)であるという。
ゆるい紐帯と強い紐帯を持ちつつ、各部署に潜伏し、業務を遂行していく。
今回は全体突破の考え方を知れたのが一つポイント、またマッピングでの全体見えるかも面白い。
これを乗り越えた既存企業と、デジタルネイティブな企業とでは何が違うのだろう。単に追いつく、ということだけではあまりにも手強い。仕組み化しておくことまで持っていけば、既存大企業でも対抗しうる?のか -
Posted by ブクログ
ネタバレDXをお客様に提案していかねばならない立場であって、でも正直なところよくわかっていないところあり、わからないなら勉強しよう、ということで教科書的な本があったので購入した2019年8月の本。 結果としてよくわからないということがわかったということはありがたかったし、本の中に明確に「ほとんどの企業でDXはうまくいっていない」ということが明確に宣言されている、ということではある意味安心になった。 そんな中でもデジタルボルテックスの中、もがきながら前に進まなきゃいけない、というところもよくわかった。
レビュという意味では、巻末の日本人が書かれた「解説」を二つ読んでから、改めて頭からスタートすると読みやすい。日本特有の難しさが記載されていて、うーんなるほど、となるため。
新しいことの先行的な取り組みなのだから、うまくいかなくてあたりまえ、でもそれをオーケストレートして全体として推し進めるしかないんだ、というところがなんとなくわかりました。
数年後に振り返ったらどういう思いで読み返すかしら。 -
Posted by ブクログ
目的: デジタリゼーションが進む世の中において、商社や自分の部署、車両販売店がどのように戦っていくべきかを学ぶため。
目的達成度: 4.5
★気付き・学び → アクション・意見
1. デジタリゼーションが進み、既存のビジネスがディスラプトされる現在の環境下では、優れたカスタマーバリューを生み出さなければ、生き残ることは不可能。
その優れたカスタマーバリューを生み出すために必要なのはビジネスアジリティーと呼ばれる下記の能力。
1) ハイパーアウェアネス
関連するデータや洞察を収集し、会社が置かれている状況において大きな意味を持つ変化を察知する。
2) 情報にもとづく意思決定力
データ解析をして知見を吸収し、適切な人材を引き込みつつ、一貫して正しい決定をくだす。
3) 迅速な実行力
うまくいってなかったり、時代遅れになったりしているアプローチを捨てて迅速に実行し、すばやく規模を拡大する。
→ 個人レベルではハイパーアウェアネスを身に付けるためにもデジタル化に関する情報収集は意識的に継続する。
2. デジタルボルテックスのなかでより効率的に戦うには、各従業員の従事している仕事が、最終的にカスタマーバリューと結びついている必要がある。
→ 突然自社の強みが強みではなくなり、大企業でも経営難により中国企業に買収されるような時代に、各従業員の仕事が収益の源泉であるカスタマーバリューに結びついているか否かは重要であると改めて認識した。
★感想
3つのカスタマーバリュー、4つの対応戦略、3つのデジタルビジネスアジリティーと言う重要な3つの項目に関して簡潔に、かつ具体例と共に分かりやすく記載されており、勉強になった良書であった。
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Posted by ブクログ
企業の組織環境における「規模」や「相互依存性」「ダイナミズム」を把握し、そうした状況下で変革を実現するための方法を理解することには困難がつきまとう。使えるのが従来の技術と概念的なツールだけなら、なおさらだ。これこそが、実践者のまえに立ちはだかる「変革のジレンマ」の本質だ。
ジョン・コッターはチェンジマネジメントの創始者とされている(実際、そのとおりだ)が、彼が考案した組織変革のための有名なフレームワーク「8つのステップ」は、その性質上、直線的なプロセスを採ることになる(注12)(図表1-8)。しかし、デジタルビジネス・トランスフォーメーションとは、事業の「複数」の側面に大きな変化を起こすことだ。だからこそ、複雑にもつれた組織に大きな変化を起こすためにも、従来のチェンジマネジメントは不向きなのだ。広範かつ全社的な変革ではなく、分離した単独の変革努力に一貫して集中しているからこそ、企業は従来のチェンジマネジメント手法(たとえば、プロサイ社のADKARモデルなど)に頼り、そうしたモデルに頼ってしまうからこそ、単独の変革努力に集中してしまうとも言える(注13)。以前から考えられてきたように、組織のもつれがなく、機能的に自律しており、変革の対象範囲がかぎられているなら、チェンジマネジメントで事足りるだろう。しかし、こうした条件がそろっていても、大半の組織変革が失敗に終わる。「足元に火がついている」と従業員に奮起を呼び掛けたり、変革を先導するチームをつくったりするなど、効果実証済みの手法がまちがっているわけではないが、それでもほとんどの大組織は、デジタル・ボルテックスという緊急事態を踏まえて大規模な変革をおこなうために必要な理解とアジリティ(くわしくは後述する)を有していない。
そうした変革を実行するには、従来のチェンジマネジメントの先にある領域に足を踏み入れなければならない。それが「オーケストレーション・ゾーン」(図表116の右上部分)だ。このゾーンに入ることで企業は、組織が持つネットワーク的な性質に対処し、いま求められている前例のない規模の変革に取り組めるようになる。企業は、組織を横断するかたちで変化を促し、多方面で事業の成果をあげる。それを何度でも繰り返せる。オーケストレーション・ゾーンでの変革は、高度な結びつきのアプローチを採ることを意味している。
「オーケストレート」とはどういう意味だろうか。DBTセンターでの定義は、「望みどおりの効果を得るために、リソースを動員し、機能させること」だ。
▫️変革目標
変革目標の第1の要素は、カスタマーバリュー創出のための組織的アプローチだ。リーダーは何よりもまずこれを念頭に置き、「顧客にとってどんな価値があるか」を明確に定義しなければならない。顧客第一主義を標榜する企業は多いが、これは遵守するよりも違反するほうが名誉になるといった類いのものだ。とはいえ、変革を成功させたいのであれば、カスタマーバリュー創出は絶対に不可欠だ。
ディスラブションの核にあるのは、新しい、よりよいかたちのバリューを創出することだ。これは、収益や利益ではなく、最終顧客のための価値だ。シンプルに言えば、ディスラブターは、よりよいカスタマーバリューを提供する方法を発明して、市場に変化をもたらしている。
前著の執筆準備中、私たちは、大きな成功を収めているディスラプター100社以上を研究して、彼らの「やり口」に共通する特徴を3つ発見した(図表2-1)。彼らが顧客価値を創出する方法は、コストを下げる、もしくはなんらかの経済的見返りを生み出す(コストバリュー)、②より迅速で、より便利な、よりパーソナライズされた顧客経験をもたらす(エクスペリエンスバリュー)、③たとえば買い手と売り手、講師と受講生のあいだに、これまでなかったつながりを創出する(プラットフォームバリュー)の3つだ。
▫️トランスフォーメーション・オーケストラ
ここで、私たちが「オーケストレート」という言葉を「望みどおりの効果を得るために、リソースを動員し、機能させること」と定義していたことを思い出してみよう。これはまさにオーケストラを率いる指揮者がやっていることだ。マエストロは演奏家たちの活動を監督し、彼らの能力の最もよい部分が表れた演奏を生み出す。全体として見れば、演奏は部分の総和を上まわるものになるはずだ。
変革目標の設定は、曲づくりに似ている。オーケストラの各部門(弦楽器や金管楽器、木管楽器など)に対し、適切なタイミングでそれぞれのバートを演奏するよう呼びかけるからだ。曲が完成したら(将来、どのような競争上の地位を達成したいかを決めたら)、次はそれを演奏(実行)しなければならない。
しかし、どうやったら演奏(実行)できるだろうか。どんなに美しい楽譜でも、楽器がすべて同時に演奏をはじめたら、もしくは全員が「楽譜の同じページ」を弾いていなかったら、耳障りな曲になってしまう。事業部門ごとの方向性を示した変革目標は、交響曲の「楽章」に該当する。これらをすべて集めると、企業が演奏しようと考えている交響曲(変革理念)となる。
私たちは、このフレームワークを「トランスフォーメーション・オーケストラ」と命名した。オーケストラを構成する8つの楽器は、組織内の8つの要素に対応している(図表4-1)(注1)。それぞれの要素には、会社の主力市場のモデリングや、利害関係者との関与の仕方、組織づくりの方法といった、リーダーにとって重要な検討事項が含まれている。トランスフォーメーション・オーケストラのフレームワークを使えば、リーダーは「脱部門的」な考え方で組織のサイ口から抜け出し、会社の目標を達成するために必要なあらゆるリソースをかき集め、活用できるようになる。
「楽器」は、組織リソースを合理的に分類したものだ。各楽器は、新しい製品やサービスの立ち上げや、デジタルによる新たな顧客経験の提供、企業文化の変革といった特定の仕事を実現するために連携する。変革に取り組むには、組織内のいたるところにあるリソース(楽器)をオーケストレートしなければならない。楽器は、部門や部署とイコールではないことに注意してほしい。これについては後述する。
華麗なオーケストラの演奏と同じように、デジタルビジネス・トランスフォーメーションを成功させるには「必要なとき」「必要な場所」に8つの楽器を参加させる。改革が必要な領域に優先順位をつけて、その順番を決めなければならないが、良質なオーケストレーションにするにはそれだけでは不十分だ(たとえば、弦楽器だけの演奏のあとにホルンの音だけが聴こえてくるような曲はめったにない)。
音楽における楽譜と同様、デジタルビジネス・トランスフォーメーションにおいても、組織内の異なる要素が調和して(同じタイミングで協力し合うかたちで)奏でられることが求められる。バイオリンのソロは力強いかもしれないが、ひとつの楽器だけではフルオーケストラのインパクトには到底およばない。製品やサービスを変えるだけ(たとえば製品とつながるようにするだけ)では、そのインパクトはかぎられている。私たちの調査によると、最良の変革(最も成功確率が高い変革)は、会社全体を対象としている。「組織全体」と「すべてのリソース」が関与するのだ。
私たちがトランスフォーメーション・オーケストラの核となる楽器を特定できたのは、DBTセンターの設立以来、さまざまなエグゼクティブたちと何百回にもおよぶ交流ができたおかげだ。そうして得た私たちの結論はこうだ。変革の成否は、トランスフォーメーション・オーケストラの3つのセクションに分類される8つの楽器がどれだけ必要かというバランスに左右される。
市場開拓セクション
1 製品・サービス(あなたの会社が売る製品やサービス)
2 チャネル(製品やサービスを顧客に届ける方法、市場までの道筋)
エンゲージメント・セクション
3 顧客エンゲージメント(顧客とどうかかわっているか)
4 提携業者エンゲージメント(提携業者のエコシステムとどうかかわっているか)
5 ワークフォース・エンゲージメント(従業員や契約スタッフとどうかかわっているか)
組織セクション
6 組織構造(事業部門やチーム、命令系統、プロフィットセンター、コストセンターの構造)やふるまいがどう報奨されるか)
7 インセンティブ(従業員のパフォーマンス
8 文化(会社の価値観や態度、信念、習慣)
トランスフォーメーション・オーケストラによって、変革の境界線を設けることもできる。多くのエグゼクティブにとって、デジタルビジネス・トランスフォーメーションは曖昧で、抽象的で、不安を掻き立てるものだ。そこに何が含まれていて何が含まれていないのか、あるいはどこから手をつけるべきなのかよくわからないが、「(3でも10でもなく)8つの楽器だけに集中すればいい」と示してやれば、そんな懸念を払拭できる。変革目標を実現するためにどう組織を変えればいいのかというタスクの範囲と構造がよくわかるからだ。
▫️変革目標を実行プログラムに落とし込む
①カスタマージャーニー・マップ作成
②ビジネスモデル設計
私たちが推奨するのは、少数の者たちにデザイン思考のトレーニングを受けさせることだ。そうすれば、彼らが社内外の人々に対して「ソリューショニング」することができる。
…
変革ネットワークから生み出されるのは「プロセスの変化」と「よりよい能力」である。したっがって、このプロセスと能力の「ビフォー」と「アフター」を測定できる基準を設けておくべきだ。
たとえば、「この変革がおこなわれるまえはサービスコール1本当たりのコストは59ドルだったが、変革後は35ドルになった」というように。ただし、最初はゆっくりと物事を進め、関連するプロセスと能力の「ビフォー」を測定できるようにしておこう。
③ビジネスアーキテクチャ
④能力評価
⑤コミュニケーションとトレーニング
⑥社内プラットフォーム
⑦社内ベンチャーファンド
⑧アジャイルな作業方式
▫️デジタルビジネス・アジリティー変化するための組織能力
前著『対デジタル・ディスラプター戦略」の後半(第Ⅱ部)は、私たちが「デジタルビジネス・アジリティ」と呼ぶ組織能力の説明に割いた。私たちはそれをシンプルに「変化するための能力」と定義し、どうすればデジタル・ボルテックスによって変化しつづける市場に組織が適応していけるかを説いた。
デジタルビジネス・アジリティには、「ハイパーアウェアネス(高度な察知力)」「情報にもとづく意思決定力」「迅速な実行力」という核となる3つの能力があり、これらが調和することで組織にアジリティが生まれる(図表514)(注12)。
ハイパーアウェアネス(察知力)は、自社を取り巻く環境やワークフォース、顧客起点の変化を察知する能力だ。バリューチェーン上のどこにあろうと、競合他社や顧客、サブライヤー、物理的資産に関する情報を収集する能力がこれに含まれる。情報にもとづく意思決定力は、ハイパーアウェアネスによって得られた情報を使い、考えられるかぎり最良の意思決定をする能力だ。この能力を実現するには、きわめて包括的になり、集合知や専門知識を活用して、適切な決定をするために必要な情報や視点、意見を探し求める必要がある。また、データ解析の力も借りなければならない。
迅速な実行力は、デジタルビジネス・アジリティの3つ目の要素で、時宜にかなった効果的な方法で意思決定を実行する能力を指す。適切なリソースを必要な場所に動的に割り当てることも、これに含まれる。事業プロセスも動的でなければならない。迅速に実行するには、ンスが生まれたらすぐに新しいプロセスを生み出し、それを展開してテストし、変更し、さらに学習しなければならない。でなければ、破壞的な企業にチャンスを奪われてしまう。高レベルのアジリティを備えるディスラプターたちと渡り合うには、デジタルビジネス・アジリティこそが要であると私たちは考えてきた。私たちの調査と、世界中の何百もの企業と交流をしてきた経験も、その考えを裏づけている。アジリティは、デジタル・ボルテックスの渦中にある企業にとって本当の意味で成功の礎となるものだ。こうした変化するための能力があれば、オーケストレーターは必要に応じてリソースを活用して変革に引き込み、たとえ一時的であるにしろ、特定の需要に対処させることができる。
人のリソースのエコシステムから瞬間的に高レベルの専門知識を引き出す能力、私たちが前著で「人材クラウド」と呼称した能力は、変革ネットワークの機能に計り知れない恩恵をもたら組織リソースとしてのデータも、また重要だ。トヨタ・モーター・ノースアメリカのCDO.ザック・ヒックスは言う。「たくさんのデジタルビジネス・トランスフォーメーションがデータの力を解き放ち、サイロから奪い返しています。データと洞察が自由になることで、企業はよりよい、より迅速な意思決定ができるようになります」インフラ、とりわけIT資産は、優先順位の変化に合わせて動的にオーケストレートし、迅速かつシームレスに転用しなければならない。デジタルビジネス・アジリティは、結びつきを強化し、いつでも変革可能な企業を生み出す。新たな情報や関連する情報をもたらす「弱い結びつき」と、組織に信頼と連帯感をもたらす「強い結びつき」をつくり出すのだ。
弱い結びつきは、情報源の巨大なエコシステムからアイデアとデータを集めることで、私たちを「ハイパーアウェア」な状態にしてくれる。そのため、ビジネスの必要に応じて専門知識と洞祭にアクセスし、「情報にもとづく意思決定」ができるようになる。弱い結びつきが、分散したリソースを必要なときに必要な場所に転用できるようにすることで「迅速な実行」が可能とな強い結びつきは、変革プログラムの実行を妨げる組織的、技術的、個人的な障壁を乗り越えるために、情報をより効率的に伝達することで「ハイパーアウェアネス(察知力)」「情報にもとづく意思決定力」「迅速な実行力」を生み出す。
▫️企業がとるべき21のアクション
| 一般原則
1.デジタルビジネス・トランスフォーメーションを追求する際には、チェンジマネジメントに頼るのでなく、変化するための「結びつきのアプローチ」の必要性を受け入れ、オーケストレーション・ゾーンで活動する。
8.経営陣は「変革の方向性を強化する」と一貫して明言する。マネジャーや従業員に対しては「その方向性をサポートするよう計画し、投資し、実行してほしい」とはっきり伝える。
21.CTOが他の主要なリーダーたち、とりわけCIOやトランスフォーメーション・リードたちと協働できるようにして、会社全体のアジリティのレベルを高める。これは変革のための基礎能力となる。新たな情報もしくは関連した情報を提供してくれる組織リソース同士の「弱い結びつき」や、結びつきのアプローチに必要な信頼と連帯感を育む「強い結びつき」の促進もここに含まれる。
| 変革目標を設定する
11.顧客を、デジタルビジネス・トランスフォーメーションの中心に据える。新しい価値もしくは改善された価値をどうやって最終顧客に届けるか、顧客視点からさかのぼって考える。
12.変革目標を設定する。これには、「カスタマーバリュー」を創出し、供給、実現するための適切な「ビジネスモデル」と、それを実現するための「対応戦略」が含まれる。変革目標は事業分野ごとに設定すること。各事業分野のリーダー(ならびに経営陣)は変革目標をサポートしなければならない。各事業の変革目標を定めるのはCTOの仕事ではない。
13.事業分野ごとに異なる変革目標を立て「対応戦略のポートフォリオ」を作成する。
| 変革理念を明確に伝える
14.変革理念(会社全体の変革ゴール)を明確に伝えること。理念は、正確で、現実的、包括的で、簡潔、測定可能(PRISM)なものでなければならない。上級リーダーたちに変革のアンバサダー役を務めてもらい、それぞれのチームのコミュニケーションやブランニングの場で変革理念を強調してもらう。
| オーケストレーション能力
10.社内のあちこちで進行している大きなデジタル・プロジェクトを文書にまとめ、見通しをよくし、相乗効果を生みやすくする。しかし、オーケストレーターはこうしたブロジェクトを「所有」すべきではない。
9.適切な規模の「社内ベンチャーファンド」をつくり、部門間横断型の取り組みと事業成果を加速させる。
6.変革ブログラムがバリューに与える影響をモデリングできるリソースを従事させる。これにより、変革に向けた努力を軌道に乗せ、利害関係者、とりわけ上級管理職と取締役会のサポートを獲得できる。
| リソースを動員し、結びつきを機能させる
15.トランスフォーメーション・オーケストラのすべての楽器を網羅した「ビジネスアーキテクチャ・マップ」を作成する。存在している人やデータ、インフラのマップの他、それらの関係性とワークフローについてもまとめる。
16.変革目標から浮き彫りになった課題と最も関係が深い「楽器(あるいは組織リソース)」を突き止める。
17.変革を進める際に直面する課題に取り組むために、複数の「楽器」で構成された「変革ネットワーク」をつくる。それぞれのネットワークは俊敏に動けるよう小規模にとどめ、的を絞った特定の課題だけに注力させる。こうすることで、変革の進捗や影響が測定しやすくなる。
| オーケストレーションのための組織づくり
2.CTOを任命する。謙虚で、順応性があり、ビジョナリーで、積極的に関与してくれる人物を雇う。
3.デジタルビジネス・トランスフォーメーションをオーケストレートし、組織リソースを動員してその結びつきを機能させる責任を、CTOに与える。一方で、変革の結果については責任を分担し、共通のKPI(主要業績評価指標)を用いる。社内の各部署・部門は、それぞれの領域にデジタル能力を実装し、変革を推進することに集中する。
4.CTOに高いレベルの序列を与える。中間管理職やコルディナティ(調整役)としてではなく、組織内に大きな影響力を持つ経営幹部の一員として扱う。
5.CTOの下に「変革推進室」を立ち上げる。チームは小規模にとどめること。このチームには変革を実行させるのではなく、変革に関係する業務の大部分をオーケストレートさせる。
7.変革推進室に、「デザイン思考」や「ビジネスアーキテクチャ」などのオーケストレーション能力を持った人材を引き入れることを最優先する。能力ギャップを埋めてくれる人材がいないかどうか、エコシステムにも目を向け、機敏に人材を引き入れる(貴重なスキルや高額なスキル、たまにしか必要としないスキルを持った人材の「タレントブール」を開発するなど)。
18.CTOが他部門や他部署のリーダーたちと強力な信頼関係を築けるようにする。変革推進室は、他の事業と張り合うものではなく、イノベーションやアジリティ、スピードの源泉だと考える。
19.他のチームから「トランスフォーメーション・リード」を指名し、グループをまたいだ実行の「縫い合わせ」をサポートさせる。サイロ化した部門をつくるのではなく、「結びついた実行」をおこなうために「組織のファブリック」を織り、それを既存の組織構造の上にかぶせる。
20.変革推進室は、「新しいプロセス」と「よりよい能力」のインキュベーションに注力する。成熟期に入ったら、こうしたプロセスと能力の管理は事業部門に引き継ぐ。変革推進室はその後も時間をかけてアウトプットの調整に従事する。
▫️日本企業をがんじがらめにする「もつれ」
1強力なタテ構造
2組織人のメンタリティー
3ソフトウェアの価値に対する理解
3つ目は、ソフトウェアの価値に対する理解度が低いことである。たとえば、いまや、ソフトウェア能力でクルマが選ばれる時代になりつつある。消費者は、エンジンやボディーなどのハードウェアが優れているかどうかよりも、(それらについては一定の水準を満たしているという前提のもとで)ナビゲーションやインターフェースなどの機能性、すなわちソフトウェアの使いやすさを重視している。テスラがすごいのは、同社のクルマが、まさに優れたソフトウェアのかたまりだからである。にもかかわらず、日本企業でソフトウェアの価値に対する理解度が低いのは、なぜか。その理由は、そもそも経営層がこれまでITにあまり興味を持ってこなかったからである。多くの場合、日本企業ではシステム子会社に丸投げしてきた(だから日本企業のIT部門は欧米企業に比べて極端に小さく、経営者から遠い位置にある)。欧米企業の経営者は、ITやデジタルの価値をよく理解しているか、理解していなくても学ばなければいけないという意識が強い。このことは、日本企業が今後DXを推進するにあたって致命傷となる恐れがある。 -
Posted by ブクログ
タイトルにひかれて深く考えずに購入しました。まず翻訳は非常に質が高く、全体的にとても読みやすかったです。また書かれていることについても、大きな違和感を持つような箇所はありませんでした。ただ本書からは一貫して「底の浅さ」を感じました。書かれていることが浅いといいますかとにかく薄い。巻末に早稲田大学の先生による12ページの解説がありましたが、そのくらいのページ数で十分伝わります(お時間ない方はこれだけ読めば十分)。なにか「カタカナ言葉」で無理矢理バリューアップを図ろうとしているかのようにも見え、正直ほとんど感銘を受けませんでした。面白い本ですと2ページに1回くらいの頻度で赤線を引くのですが、本書は全部で3箇所しか赤線を引きませんでした。
本書の最後の方に著者が書いているように、この本自体も「アジャイル」に作ったと言うことなので、内容が浅くなるのは致し方ないとは思います。またこの本は今後も?アップデートされるということですので、読者の意見を参考に内容を深めて欲しいと思うのですが、特に気になった点はデジタル技術を使った意思決定のパートです。本書によれば、デジタル・アジリティを身につけるためには、「情報に基づく意思決定力」が必要とのこと。そしていくつかのデジタルサービスを事例に、それらがどう人間の意思決定を改善できるかが淡々と記述されていますが、正直言って人間に対する洞察が浅すぎます。IMDにも意思決定の専門家の先生がいらっしゃるかと思いますが、そのような専門家の意見を聴きながら、人間がいかに単独もしくはグループで意思決定をあやまるか、あるいは様々な心理的なバイアスに影響を受けるかを理解した上で、デジタル技術がそれをどう改善できるか深掘りしてほしいと思いました。本書のなかでも人種や性別の偏見を受けない意志決定、という記述はありましたが、これは初心者でも言えることであって、「集団思考」「追認バイアス」「新近性バイアス」「アラーム疲れ」など技術の助けを借りたとしても人間が意思決定を間違える可能性は常にあります。意思決定×デジタル技術、というのはテーマとして非常に興味深いので、是非今後深掘りして欲しいと思いました。 -
Posted by ブクログ
企業がデジタル変革を成功させるには、どうすればよいか?組織のリソースを活用し、協働させることで変革に導く「オーケストレーション」について解説した書籍。
「デジタル・ディスラプション(デジタルによる創造的破壊)」が進む今日、様々な企業にとって、デジタルによる「トランスフォーメーション(変革)」の実行は急務。
自社を変革するには「カスタマーバリュー創出」「ビジネスモデル」「対応戦略」の3 要素を合わせた「変革目標」を設定し、変革プログラムを実行する必要がある。
大きな成功を収めるディスラプター(破壊的な企業)は、次の3つのカスタマーバリューを創出している。
①コストバリュー:
コストを下げる、もしくは何らかの経済的見返りを生む。
②エクスペリエンスバリュー:
より迅速で、より便利な、よりパーソナライズされた「顧客経験」をもたらす。
③プラットフォームバリュー:
買い手と売り手の間に、新たなつながりを創出する。
組織変革とは、交響曲の「オーケストラ」のようなもの。指揮者の下、各部門の楽器は調和のとれた演奏に貢献する。このように、組織のリソースを動員し、機能させることで、望み通りの効果を得る手法を「オーケストレート」と呼ぶ。
企業がオーケストレーションを機能させ、変革目標を実行に移すには、次の8つの能力が必要となる。
①カスタマージャーニー・マップ作成
②ビジネスモデル設計
③ビジネスアーキテクチャ
④能力評価
⑤コミュニケーションとトレーニング
⑥社内プラットフォーム
⑦社内ベンチャーファンド
⑧アジャイルな作業方式