岩下尚史のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「三島由紀夫の本」とでも言えば、高名な作家であった三島由紀夫が綴った何かであると思うであろう。が、本書は「三島由紀夫の本」とは呼び得るのだが、「“三島由紀夫”という筆名で作家活動をしていた平岡公威を知る2人の女性の回顧談を軸に展開する実録」というような内容なのだ。
平岡公威(ひらおかきみたけ)というのは三島由紀夫の本名である。本書に在る回顧談をしている女性達は、「身近に“三島由紀夫こと平岡公威”という人物」を知っていた。そしてこの本名の「公威」に因んで一方は「公威(こうい)さん」と、もう一方は「公ちゃん」と彼を呼んでいた。本書に在る回顧談の中でもそのように呼んでいる。
「“三島由紀夫こと平岡公 -
Posted by ブクログ
芸者=神代の時代の精神を具現化した存在 という起源論から始まり、常につきまとう性的サービスの提供者、下賤な職業、哀れな女達というステレオタイプに異を唱える。
宮尾文子の小説を読んでから、芸者の人生に圧倒されて興味を持っているが、美貌と芸と才覚にあふれた女性なら政界財界を手玉に大活躍したであろうし、そうでなければ借金や非人道的境遇で苦しんだだろう。
現代のアイドル文化などもこの芸者文化の末裔のような気がするが、フェミニズムの人達とは多分絶対折り合わないような論旨。
にもかかわらず、洗練の極みに至る女性らしさ、厳しい鍛錬、幾多の大物が妻にと求め、芸術の創造源となった芸者文化の魅力は人を惹き -
-
-
-
Posted by ブクログ
「大人のお作法」
最近テレビでよく見る岩下尚文のエッセイである。落語のような語り口が面白い。
内容は料亭から芸者、食通、歌舞伎など自分が見聞きした古き良き昭和の時代の花柳界でのものの見方、考え方が語られている。そして、その心意気の一部は昭和の時代に影響を与えていたように思える。
1961年生まれと言うからそれほど年齢差はないので、男の生き方としての矜持はなるほど確かにそうだと言う点もある。しかし、服装についてあれこれ蘊蓄を傾ける点は住む世界があまりに違うのでとてもついて行けない部分があるが興味深い。
また、文章(言葉)自体にも特徴があり、既に使われることなど滅多にない言い方(死語といってもいい -
Posted by ブクログ
芸者の成り立ちから時代経過に伴う浮き沈みや、芸者の矜持などに至るまでを描いた書。
殆ど実態は知らない世界であったが、何故か凄く惹かれるものがあった。
そこには「神々の振る舞いを演じる」という底流があり、日本の美しく儚い世界が実現されていた。その日本的なものが時代の経過と伴に、変容していく様が感じ取られた。
≪Memo≫
・芸者たちにも、その流れを辿って行けば、白拍子、あそびめ、巫女という源に行き着きます。古代の巫女というのは、女性すべてが生まれながらに備えていた資格。女児が裳着(もぎ)を済ませると、自家の神に仕えるべき巫女の資格を得ると共に一人前の女性と認められる。神の近くに仕え、時に神のお