岩下尚史の一覧
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ユーザーレビュー
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コンプライアンスとは誰のためにあるのですか
各々が己の中に節度と良識を持たなくなった現代に
奥ゆかしく誇り高く芸事に励む花柳界の記録を
よくぞ残してくれました
平等を求める代わりに不自由になった今
厳しくも豊かだった昔をうらやましく感じました
Posted by ブクログ
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「三島由紀夫の本」とでも言えば、高名な作家であった三島由紀夫が綴った何かであると思うであろう。が、本書は「三島由紀夫の本」とは呼び得るのだが、「“三島由紀夫”という筆名で作家活動をしていた平岡公威を知る2人の女性の回顧談を軸に展開する実録」というような内容なのだ。
平岡公威(ひらおかきみたけ)という
...続きを読むのは三島由紀夫の本名である。本書に在る回顧談をしている女性達は、「身近に“三島由紀夫こと平岡公威”という人物」を知っていた。そしてこの本名の「公威」に因んで一方は「公威(こうい)さん」と、もう一方は「公ちゃん」と彼を呼んでいた。本書に在る回顧談の中でもそのように呼んでいる。
「“三島由紀夫こと平岡公威”という人物」を「公威(こうい)さん」と呼ぶ女性は豊田貞子という方で、三島由紀夫が結婚する以前に概ね3年間程度に亘って交際していたという人物だ。「公ちゃん」と呼ぶのは湯浅あつ子という方で、豊田貞子との交際の以前からその後に接点を持ち続け、豊田貞子を「だこちゃん」として知っている。三島由紀夫にとって、年が近い姉、親友、或いは恋人のような存在感で在り続け、「長男の古くからの友人」として三島由紀夫の両親を“おじさま”、“おばさま”として知り、懇意にもしていたという人物である。
この2人の女性に関しては、「小説の作中人物のモデル」という話しが在る、またはこうした女性達と過ごした時の事が「作中挿話に反映」されているという話しも在る。(そうは言っても、小説作品は飽くまでも「作家が創ったモノ」ではあるが…)また三島由紀夫は随想的な文章を雑誌掲載、後に書籍化という形で多く公にしているが、そんな中にも豊田貞子との交際という中での雑感と見受けられる内容が在るという。
本書は“実録”という体裁で綴られている。実は、三島由紀夫と豊田貞子との交際に関して、永年の知人女性が「三島由紀夫と交際していたことが在る」と知った筆者が、話しを詳しく聴いて小説の体裁で発表した経過が在り、作品が反響を呼ぶ中で「もっと踏み込んだ事実等を知りたい」という声が高まり、この“実録”を手掛けたのだという。本書の中にも綴られている事情だが、それでも何処となく「知人女性と深い縁が在ったという高名な作家に関して、或るライターが調べている」という「精緻に造り込んだ物語」のようにも感じられた。そういうことで、読んでいて「“作中世界”に没入」というようにも感じた。
“歴史”として「“三島由紀夫”という作家が在って…」という経過を知る者、或いは「昭和期の高名な作家の作品を愉しんでみようとする」という一読者として少し思う。この作家は「“作家 三島由紀夫”という何かを演じ続けようとした、“平岡公威”という表現者」であったのではないかというようなことだ。本書に触れると「“作家 三島由紀夫”という何かを演じ続けようとした、“平岡公威”という表現者」の姿が示されるような感で、かなり興味深い。
そして本書には、三島由紀夫が豊田貞子とが交際したという昭和29年頃から昭和32年頃の様子、二人が各々に結婚した後の昭和30年代の感じが色々と語られていて、そういう辺りも「或る種の風俗史、社会史」として興味深い。
「昭和期の高名な作家」としてみたが、三島由紀夫が綴ったモノに関しては、未だ元号が昭和であった中学生や高校生の頃にも触れている。そしてその後も、頻繁に在ることでもないが「好きな作家?」とでも尋ねられれば挙げてみる名前に“三島由紀夫”は何時も入っている。と言って、酷く多くの作品が在る訳で、全てに親しんでいるというのでもない。本書に触れると「改めて三島由紀夫作品を色々と読んでみようか…」という気分も沸き起こる。
題名の「直面(ヒタメン)」とは、能楽の用語で「能面を着用せずに舞う」ということ、「素顔そのものが仮面?」というような状態を意味するのだという。本書を介して「“作家 三島由紀夫”という何かを演じ続けようとした、“平岡公威”という表現者」の「素顔?」に触れることが出来た。が、これもまた「或る種の仮面」か?没後に半世紀も経ている三島由紀夫だが、改めて大変に大きな存在であることに思い至る。
Posted by ブクログ
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芸者=神代の時代の精神を具現化した存在 という起源論から始まり、常につきまとう性的サービスの提供者、下賤な職業、哀れな女達というステレオタイプに異を唱える。
宮尾文子の小説を読んでから、芸者の人生に圧倒されて興味を持っているが、美貌と芸と才覚にあふれた女性なら政界財界を手玉に大活躍したであろうし
...続きを読む、そうでなければ借金や非人道的境遇で苦しんだだろう。
現代のアイドル文化などもこの芸者文化の末裔のような気がするが、フェミニズムの人達とは多分絶対折り合わないような論旨。
にもかかわらず、洗練の極みに至る女性らしさ、厳しい鍛錬、幾多の大物が妻にと求め、芸術の創造源となった芸者文化の魅力は人を惹きつける。
優雅で辛辣、流れるような筆致で時代を下ってゆく語り口がまた出色の書物だ。
Posted by ブクログ
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ハコちゃんこと岩下尚史の新書「大人のお作法」が今時のマナー本かと思わせる表題に反し、飄々とした語り口のようで、同時代に共感者を得られず、自分の理想とする大人像も実践できなかった忸怩たる作者の魂の叫びとしか読めない。凄い深読み出来る本。
Posted by ブクログ
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面白く読んだ。古代の巫女の話から、吉原が源氏物語に連なる王朝文化の再生装置であり神々の振る舞いを演じる場所であったという論の考察の深さには唸った。現在の娼妓ではない芸者は昭和も戦後になってからの話でそれまでは娼妓と芸者の二枚看板であった「不見転 みずてん」芸者も法の目をかいくぐり幅を利かせていたのだ
...続きを読む。しかし色街が水の傍にあるのは古代の巫女たちから変わらないとは何やら因縁めいた話である。荷風や鏡花など近代文学における花柳界に興味がある方にもお勧めの書。硯友社散々な言われようですが。流麗な文章が心地よいです。
Posted by ブクログ
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