丸山里美のレビュー一覧

  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学

    Posted by ブクログ

    質的社会調査、社会学の入門書である。大学院に在籍しながら、「調査」の仕方を勉強してこなかった自分にとって、とても良い入門書となった。
    ただそこにあるのは、ノウハウではない。「他者の合理性の理解社会学」と副題がついたことからも想像できるように、著者3名の経験に基づいて調査を通して同社会と関わるか、が書かれていて、教科書にありがちな無味乾燥さはない。読み物としても抜群に面白い。

    あとがきに「『社会調査』である限りは、人びととのコミュニケーションの中で鍛えられ、試され、厳しく批判される」とある。この一節がこの本全体を貫く思想になっていると思う。
    論文のテーマを再構築していこうとする中、非常に有意義

    0
    2023年04月01日
  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学

    Posted by ブクログ

    有斐閣なのでフィールドワークの教科書という位置づけであるが、研究者のインタビューの関わりがとても丁寧に具体的に書いてあるので、フィールドワークについて書かれた教科書の中で最も面白い本の一つである。
     質的調査の領域の説明をすべて網羅しているわけではないが、フィールドワークをどのようにすればいいのだろうかということについては、学部生から修士の院生、博士論文を書こうとしている院生まで全ての学生に役立つと思われる。

    0
    2023年03月09日
  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学

    Posted by ブクログ

    とっても面白かった、知的興奮をありがとう。
    最も興奮したのは、自分が仕事やプライベートで楽しくやっている街歩きやフィールドワークが、実は無意識に社会学的方法をだいぶ実践できていること。
    何も習ってないのに自分でできすぎててビビッた。天性のフィールドワーカー なんですか!?

    大学院に行きたい気持ちもなおさら高まった。
    それからもちろん色々気づきもあった。
    以下備忘録。


    ☆社会学=私たちとは縁のない人びとの。一見 すると不合理な行為の背後にある 「他者の合理性」を誰にでも分かる かたちで記述し、説明し、解釈すること

    ☆社会は、複数の、お互い矛盾する「ゲーム」で 構成されている。それらが同時

    0
    2022年06月12日
  • 女性ホームレスとして生きる〔増補新装版〕――貧困と排除の社会学

    Posted by ブクログ

    女性差別は差別と認識されず社会の中で長年に渡って根付いてきた。
    女性というマイノリティグループの中でももっとも弱い立場にある、貧困や障害、病気や高齢などのいくつもの不利な条件を抱える人がどのように生きる術を奪われてきたか、そしてその上でどのように自分に備わるものを生きるために生かしてきたかが描かれている。

    正直言って、読んでいて恐ろしかった。生きるとはなんと恐ろしく、手に負えないものなんだろう。この本はままならない生をせめて理解しようというひとつの抵抗の形だ。

    0
    2022年02月17日
  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学

    Posted by ブクログ

    社会調査の方法だけでなく、社会学全般についてわかりやすく書かれていて良かった。もっと早くにこの本を読むべきだったと後悔。

    以下、読書メモ
    面白いの軸の話
    自分と他人
    ゴシップ的面白さと社会学学的面白さ
    →バージョンアップができるか否か

    メモの重要性
    出来事のメモ(雑記メモ
    出来事から浮かんだ社会学的発想(論点メモ
    日記(気分を書く

    人ではなく、人の捉え方を見る
    「時間的予見」の問題としての貧困

    論文執筆
    理論を使う
    枝葉を切り落とす、一言にまとめる
    調べたことを書いても論文にはならない
    調べたことから何を考え、何を調べ直したのか

    「他者の合理性」
    枠組みを問い直し、対象を論じ直す
     

    0
    2021年12月02日
  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学

    Posted by ブクログ

    オーラルヒストリーの大事なところはそれが事実かどうかではなく、話した本人にとって心理的に本当だったということ。
    他者の合理性を会話を通して理解する。
    映画なども有効?
    事実を聞くことと、語りを聞くこと。
    どのようにその会話、生活史ができてきたかを分析する。
    調査は暴力である、その暴力性に向き合い、可能な限り常に問い続ける必要がある。

    語り、歴史と構造、理論の3つの間での往復が大切。

    経験の全体を解釈する。

    理論的先入観。

    0
    2021年06月05日
  • 女性ホームレスとして生きる〔増補新装版〕――貧困と排除の社会学

    Posted by ブクログ

    社会学における「質的調査」の代表例として挙げられていたので読んでみた。

    エスノグラフィ、フィールドワークという観点から読んでも興味深かったし、貧困問題、ジェンダーという観点からも読むことができる。

    ホームレスという対象に、「女性ホームレス」という視点を持ち込む。
    ちなみにこの本では
    ホームレス:住居喪失者
    野宿者:路上生活者
    と定義している。

    はじめに、において3つの目的が掲げられている。
    「これまでほとんど研究されることのなかった女性ホームレスについて、その存在様態と生活世界をとらえること
    男性を前提にして成立してきたホームレス研究全体をジェンダーを分析視覚として持ち込むことによって再

    0
    2024年09月24日
  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

     質的調査が、個々のケースについて理解・解釈していく方法だとして、それでは実際の調査プロセスのなかで、何をどのように具体的に理解していくのでしょうか。
     代表的な質的調査の例を挙げて考えていきましょう。P・ウィリスが1977年に出版した『ハマータウンの野郎ども』です。ウィリスは70年代に、あるイギリスの工場街(「ハマータウン」=ハンマーの街)の小さな高校で参与観察をおこないました。彼が分析の対象としたのは、その高校の主に二つのグループでした。ひとつは「ラッズ」(野郎ども)を呼ばれる不良少年たちで、もうひとつはイヤーホールズ)「耳穴っ子」)と呼ばれるガリ勉の優等生グループでした。
     ウィリスは、

    0
    2024年04月28日
  • 女性ホームレスとして生きる〔増補新装版〕――貧困と排除の社会学

    Posted by ブクログ

     大好きな岸政彦さんが、本書に寄せた解説でこんなことを言っていた。

    ---
     社会学は何をしているのか。質的調査は何をしているのか。私はそれを、ひとことで乱暴に言えば、「一概に言えなくしている」ということだと思う。(p.311)
     そしてさらに、もうひとつの目的がある。(中略)社会学の、質的調査のもうひとつの目的とは、「理由を書くこと」である。たくましいでもかわいそうでもなくただ、人びとの行為には、そして人生には「理由がある」のだ。(p.319-320)
    ---

     女性ホームレスが安定した住居生活を送れるようにするため、福祉団体や個人が何度手を差し伸べても、いつのまにか野宿生活に戻っていっ

    0
    2021年09月24日
  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学

    Posted by ブクログ


    この本を読むのは2回目だ。正直に言うと、読んでいる途中でなんだか見覚えがあるなと感じていて、途中で既に一度読んでいたことを思い出した。初めて読んだのは一年くらい前だったと思う(後で調べたら二年前だった・・)。質的調査の入門書として読んでいて、紹介されている参考文献を何冊か購入するくらいにはちゃんと興味も持っていた。ただし、購入した参考文献は未だ積読になっていて、今回の読書でさらに本書のブックガイドより数冊購入してしまった。
    そもそもは、昨今の流行もあり、量的調査分析に興味があった。調査というか、データ分析?って何をするのレベルで関心があり、調査法の入門書や統計について何冊か読んでいた。量的調

    0
    2020年09月16日
  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学

    Posted by ブクログ

    岸雅彦、石岡丈昇、丸山里美
    中野卓、桜井厚、谷富夫の理論を通して、語りは「事実」か「物語」という問題を洗い直す下りはいずれ再読する

    0
    2018年11月15日
  • 女性ホームレスとして生きる〔増補新装版〕――貧困と排除の社会学

    Posted by ブクログ

    ホームレスが激減している。支援が充実した事によるらしいが、本当か否かは不明。そんな中で女性のホームレスには出会う機会もない。2014年の本だから、その頃には居たのだろうか。だが、男性に比べて少ない事実は変わらない。

    女性の方が人間関係を形成するのが上手く、支援を得ることが上手だ。また、本書に書かれる通り、男性はプライドがあったり、単に野生的な環境が得意だとも言える。女性は服装や衛生面でも男性のようには自由にはなれない。

    つまり、そんな状況下でもホームレスとして生きる女性なので、余程、特殊だとも言えそうだ。本書は、その体当たり取材が面白い。いや、面白がってはいけないのだが。

    特徴的なのは、

    0
    2025年07月05日
  • 質的社会調査の方法――他者の合理性の理解社会学

    Posted by ブクログ

    ◾️他者の合理性を理解する
     こうした、私たちにはあまり縁のない人びとの、一見すると不合理な行為選択の背後にある合理性やもっともな理由のことを、ここでは「他者の合理性」という言葉で表現したいと思います。社会学、特に質的調査にもとづく社会学の、もっとも重要な目的は、私たちとは縁のない人びとの、「一見すると」不合理な行為の背後にある「他者の合理性」を、誰にもわかるかたちで記述し、説明し、解釈することにあります。

     質的調査の社会学の仕事は、いろいろありますが、つきつめて考えると、この「行為の合理性の理解」ということに尽きます。人びとの行為や相互行為、あるいはその「人生」には、必ず理由や動機が存在

    0
    2024年07月26日