サイモン ウィンチェスターのレビュー一覧
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ジェイムズ・マレー(1837-1915)はOED編纂の中心人物。ウィキペディアで彼の写真を見た時には驚いた。仙人のような風貌だったからだ……まるでことばの霞みを食って生きているかのような。
本書のもうひとりの主役はウィリアム・チェスター・マイナー(1834-1920)。軍医だったが、精神病を発症し、妄想から殺人をおかしてしまった。その後医療刑務所のなかにいて、16・17世紀の書物からOED用の例文をピックアップし続け、その完成に多大な貢献をした。ふたりは10年近くにわたって手紙のやりとりをしていたが、会ったことはなかった。本書のヤマ場は、1891年(俗説では1898年)、彼らが初めて対面する場 -
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ネタバレ英国版「舟を編む」。でもぜんぜんほんわかしてない。ノッてくるまで時間かかったけど、OEDの構想が出てくる辺りからめちゃめちゃ面白かった!さすが英国、という気の長さとエキセントリックさ。
シェークスピアの時代には辞書がなく、その用法があっているのか綴りはあっているのかなどを確かめる方法はなかった、というのは目から鱗。言葉が変化していったり誤用といわれたものがそうでなくなったりしていくのは、当たり前のことなんだな。
OEDの、言葉は変わっていくものなのだから、辞書は言葉の間違いを正すものではなくあくまで言葉の歴史を記すものであるという姿勢はいいな。 -
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素描で認識される世界において、精密さが求められるのは、工学的な環境において。人間は完全なる再現性による安全安心、利便性を求めているからでもある。しかし、座標軸や時間軸の精密さは、人間や自然が、少なくとも今のコンピュータでは精密には規定し得ない存在だという事を却って浮き彫りにするようでもある。
素描的な世界とは、線にゆらぎがあり、陰影に曖昧さがある世界。一方、工学が求めるのはCAD的=コンピュータ設計的な厳密に制御された空間。
人間は常にこの両方を生きている。
感覚の世界と制度・構造の世界。
本書、『精密への果てなき道』は、この断絶を埋めようとした数世紀にわたる人類の試みの記録だ。精密さと -
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蒸気機関から錠前、帆船の滑車ブロック、時計、銃、自動車、ジェットエンジン、ハップル望遠鏡、GPS、半導体チップと現在までの約250年間の「精密」に対するエンジニアの取り組みと発展を描くノンフィクション。読むまでは技術系の本でハードルが高いように思ったが、筆者自身のエピソードを盛り込んだり、必要以上にマニアックな技術には踏み込まないが必要最小限の技術は分かりやすく解説したりと、非常にバランスが良く面白く読めた。
熟練工の多かったイギリスやフランスでは機械化が彼らに反対されていたが、その一方でアメリカには熟練工が少なかったため機械化工業が進展した、と良く言われているが、1853年にニューヨーク万 -
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英語の辞書をめぐる物語。
映画を観て原作を知り、読みました。
映画とはまた違ったところから始まるので、違う物語を読んでいるようでもありました。
映画の時も『舟を編む』の時も思いましたが、小説が一から作っていくものだとしたら、辞書の編集はあるべき場所に収めるような感じでした。
正確さが大事。
それにしても当時の辞書の膨大なこと。
何冊にも及ぶ辞書だそうなので持ち歩くなんて考えもしなかったのだろうな。
そして映画でも挙げられてたけれど、マレー博士とマイナー博士の相対する感じが面白かったです。
彼らの天才的な言語センスはどうやって生み出されるものなのか。母国語にすら、英語ひとつにすら苦労する -
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今は、当たり前にあってその存在を疑うこともないものの一つに辞書、辞典があります。わからない言葉があれば、辞書や辞典を引くが当たり前に育てられてきました。少しの想像力があれば辞典を無から作ることが、とんでもない労力と時間がかかりそうで、一人で作りなさいと命じられたら、できっこないことを必死で泣きながら訴えるくせに、当たり前のように使っていました。ごめんなさい。
本書は、英語辞典「オックスフォード英語辞典(OED)」が完成するまでの物語です。
英語以外の辞書は、1225年にラテン語の辞書が出版、1612年にイタリア語の辞書が出版されていたようですが、英語のモノはなく、1692年に辞書や百科事典