ジョー・ウォルトンのレビュー一覧

  • わたしの本当の子どもたち

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    結婚するかしないか、人生の選択で変わりうる人生を、並行して描く。
    結婚しなければ自分の道を進めて幸せだったかもしれないけれど、その結婚でうまれた子供達には出会えない。
    自分でも、ついつい何度も考える事なので、読んでいてせつない。
    そして、どの道筋を選んでも、人は生きて死んでいく。
    自分に置き換えて、入り込んで考えてしまった。

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    2021年02月05日
  • わたしの本当の子どもたち

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    イギリスで1926年に生まれた女性の2015年までの記録なのだが、途中で「もし、あの時、xxしていたら」という分岐点があり、二つの人生が語られる。彼女の人生を通して、近代史、女性問題、環境問題などが見えてくる。読む人によって、色々なことに考えが及ぶ小説だと思う。星雲賞の候補作になっているけれど、星雲賞よりはジェンダーSFの賞を取りそうだ。

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    2018年06月17日
  • わたしの本当の子どもたち

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    男のプロポーズに対する返事が波動関数を収束させ、運命が分岐した女の人生を描いた物語。認知症により波動関数が再び発散するところや、描かれる世界史が史実通りではなく、偽史が含まれるのが面白い。また、セクシュアリティが生来固定のものではなく、人生の途中で変わっていくという描写も良かったと思う。
    それにしても、プロポーズ断った方の人生の方が楽しそう。一方プロポーズ受けた方の人生(の特に前半)は、繰り返す妊娠と流産、家庭内で軽んじられる、働くこともできないという地獄。BCならぬ、Before feminism時代の暗黒。

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    2018年06月01日
  • わたしの本当の子どもたち

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    パトリシアがマークとの不幸な結婚をした世界は平和な世界。マークと結婚しなかった世界は最愛のパートナー、ビイと出会えたが世界は混沌。核兵器が何度か使われてしまう。
    この二つの世界、最後は同じ老人ホームにパトリシアが入居するのだが、トイレの位置が変わっている。

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    2018年10月15日
  • わたしの本当の子どもたち

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    パラレルワールドもの。最初の章で認知症の老婦人の日常が語られて此処が並列世界の終点であることを匂わせる。
    そこから過去に遡り同一人物の二つの人生が平行して語られていく。どちらかが劇的な人生と言うわけでもないのだが、明らかに世界観は異なる。
    パットが生きる世界では限定的に核戦争が有り各地で死の灰が降る。それがパットの人生に大きく影響する。
    一方トリッシュの生きる世界では横暴な夫のもと、不幸せな結婚生活を送り5人を死産し4人を育て上げる。その代わり世界は比較的平和である。
    主人公であるパトリシア(パット、またはトリッシュ)の認知症が進み施設に入ったその時、二つの人生は混濁した意識の中で融合し始める

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    2017年10月31日
  • わたしの本当の子どもたち

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    これが、遅れてきた、2017の私的ベスト1だと思う。
    人生には選択があり、どちらも命をかけて守りたい愛しい人と、吐くような痛みをともなうのだ。時は過ぎていく。

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    2017年10月14日
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    一気読み。ジャンルとしては、歴史改変ものとか幻想ものに入るんだろうけど、そうと意識させないジョー・ウォルトン独特の雰囲気がある。「図書室の魔法」のモリと同様、ここでもパトリシアに肩入れしながら読まずにいられない。

    ある決断を境に、パトリシアの人生は二つに分岐する。二つの世界で彼女自身の人生は大きく異なるが、世界のありようもまたかなり違っている。それは私たちの「現実」と重なる所もあり、違うところもあり、そこに見え隠れする痛烈な文明批判も読みどころの一つだろう。

    しかし、何と言っても読ませるのが、二人のパトリシアの歩みだ。どちらの世界でも、彼女は必死に生きる。過ちを犯したり、悩んだりしながら、

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    2018年06月13日
  • わたしの本当の子どもたち

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    二通りの女性のそれぞれに過酷な人生が描かれているが、波乱万丈とはいえ普通にありえる人生。それを読ませるリーダビリティは翻訳の良さもあるんだろうな。

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    2018年05月11日
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    パトリシアという女性の一生を描いた物語。ただし2人分。
    パットとトリッシュで分けられた彼女の人生は、世界ごと全く違う道を歩んでいく。
    ひとつの名前に愛称が複数ある海外の名前の特徴をうまく使っていておもしろい。やはり名前は人生を決定するほどの力を持つのだ…。
    と思っていたが、どちらにしてもパトリシアはパトリシアだった。それは本人もそう言っていたし、最終的に2つの人生が彼女ひとりに収束していったことからもそうなのだろう。薔薇という花はその名前でなくても同じ香りがするのだから。

    パトリシアはどちらの人生においても意志が強く、活動的で、聡明な女性である。確かにパットの方が一見幸せに見えるけれど、トリ

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    2018年02月10日
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    ジョー・ウォルトンは『図書室の魔法』に続いて2作目。前作がかなりはっちゃけた感じだったのに比べて、こちらは余韻とじんわり染み込む感じがとても素敵な作品。
    たらればSF(?)なんだけど、「選択」って、もう、善いも悪いも、ないんだよね、ただでも、それを主体的に行うことそのものに善さはある気がする。結果はどうあれ。

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    2018年01月20日
  • わたしの本当の子どもたち

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    一つの決定がかくも人の未来を変えるのか……と。
    ヒロインの結婚という決断を起点に、それぞれ二つの世界が並行して描かれるパラレル小説。
    秀逸だなあと思ったのは、どこまでも人間ドラマを描きながら、私たちが知り得る「現実」とは少しずつ違うこと。
    それは「ちょっとした決断で、世界は大きく変わり得る」と思わせる静かな迫力に満ちている。

    また、どちらの世界にも「性」の曖昧さが書かれていることも興味深かった。

    そして当然のことながら、選ぶ相手が違えば、「生まれてくる子ども」は違うという事実……!
    そこからさらに生まれてくる子どもたちも変わる。関わる周囲の人間たちの運命も変わる。
    なんという運命という名の

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    2017年12月20日
  • わたしの本当の子どもたち

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    芯のしっかりした女性があるときはレズビアンとして、あるときは夫に強いたげられる妻として生きていく。設定がSFなのに回りの人たちとのやり取り、社会との関わりがやけに具体的でリアルで、小説読まされてる感がない。運命はわからない、どんな人生になるかわからないが、社会参加しながら生きてくことが大切だと思った。
    とてもすてきなタイトル。子どもにたいしての失望は決してなく、小さなこと(人に思いやりのある態度をとったなど)が嬉しい。親の気持ちが溢れてる。

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    2017年11月15日
  • わたしの本当の子どもたち

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    私たちは日々選択している。日々は選択の積み重ねで出来ている。
    選択しなかったほうの人生はどうだったのか、そっちのほうがよかったのか、と考える瞬間がたまにあるかもしれない。考えてみたところで、選んだ今を生きるしかないのであるが。

    選んだ人生と選ばなかった人生をリアルに細かく描いて膨らませていくのであるが、なんか結局はプラマイするとどっちもどっちでは…というのが私の偽らざる所感です。

    だから結局、選んだ人生を生ききればいいんだよ、ということか。

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    2017年11月11日
  • わたしの本当の子どもたち

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    普段SFはあまり手に取らないのですが、ファージング3部作の作者なので読んでみました。同じく歴史改変もので今回も楽しめました。このページ数とは思えない中身の濃さです。
    カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」もそうですが、設定がちゃんと確立されているSFなら苦手な人も読めるということですね。

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    2017年10月06日
  • わたしの本当の子どもたち

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    久しぶりに店頭で読みたい本を物色していて出会った一冊。ジョー・ウォルトンの作品は読んだことがなかったけど、とても好みな作品世界で、後から世界幻想文学大賞や英国幻想文学大賞受賞作家と知り、なるほど…と納得。
    1926年生まれのパトリシアは、2015年現在、認知症を患い、老人ホームで暮らしている。冒頭の章で綴られる混乱する彼女の記憶は、しかし、混乱と言うより混線という表現が当てはまる不思議な様相を呈していて…日によって異なる部屋のインテリア、入居している施設の作り、更には彼女の元を訪れる子供たちさえ別々の人生で得た別々の家族が混在している様子。そうした混線した記憶の背景には、世界や政治にまつわる共

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    2017年09月05日