ケンドー・カシン(石澤常光)がインタビュー形式でレスリング生活を振り返る本。高校のレスリング部後輩のボンバー斉藤、全日本プロレスのフロントだった青木謙治氏との対談を含む。
石澤は僕が最も好きな平成以降のレスラーの一人で、大阪ドームでのケンドー・カ・シン(当時はカシンでなくカ・シンだった)デビュー戦
...続きを読むも観ている。これは不思議な試合だった。この本でも当時の迷いが語られていて、納得がいった。
ハイアン・グレイシーとの試合も興奮した。一番興奮したのは名古屋のPRIDEでヘンゾ・グレイシーと握手した時だったが。
この本でもどこまでが真面目な部分なのかは分からないが、とにかくおもしろかった。
ヨーロッパでテリー・ファンクのスタイルを見て心動かされたという記述など「お客さんが興味を持つ」(インタビューアーが「お客さんを沸かせる」と表現したのをわざわざ言い直している)試合をすることが最優先というのが彼の本質なのだと思った。
やはり元々ガチンコの世界でステイタスを獲得した人間は、プロレスを極めたいと思うもので、UWFみたいなスタイルには行かないのだなとあらためて納得する。
ハイアンとの再戦に勝った時、試合後に「一言だけ、ありがとう」とリング上からマイクで語ったのが、僕が彼が真面目に話すのを見た唯一の機会だ。この本ではアントニオ猪木について語る時だけは真面目に話しているように思った。
ただ、先に書いたように、インタビューアーがこうなんですか、と訊いたことに対して、深く考えたり言い直したりする場面が多く、そういう意味ではものすごく真面目な人なのだ。
一番おかしかったのはハノーバーとベルリンで試合をした時に「『マッチョドラゴン』の歌入りヴァージョンで入場した」というエピソード。どこまで本当なのやら。