酒井シヅのレビュー一覧
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難病の多かった江戸時代には重病人は医者だけでなく祈禱師をよび癒してもらっていたという。疫病が流行れば無病息災を祈願し、七草粥や節分の鬼やらい、土用の丑の日にうなぎを食べる、絵馬に願掛け、祭をするといった現代にも続く
年中行事も生まれていった。病に対する当時の風刺画等も掲載されており当時の様子もこの本はわかりやすく書かれている。
今では病気の原因がわかり予防できることも多いが、当時の人々はそれが叶わなかったことを考えると、いかに病を畏れ不安であったのだろうかと想像せずにはいられない。原因がわからない状況の中、ひたすら病人の苦しみや痛みを除こ
うと看病する江戸人の人たちの思いは医学が万能でない -
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ネタバレ遺跡から発掘される病や怪我の跡。昔は今では亡くならないような病気をこじらせて死んでいく人がたくさんいた。一方、今では歩くのもままならないような大怪我をしながらも自然治癒に任せて生き延びた人もたくさんいた。矢が刺さったまま、骨がかたまってしまった人骨の話は大変興味深い。
遣唐使を派遣した翌年から、疫病が全国的に広がったらしい。平城京への遷都も疫病を免れるためだったが、遷都によって農民の負担が増えて飢饉を引き起こしたという。
興味を持つような出来事がたくさん並べられていて、読みやすい一冊。病の世界史なら「感染症は世界史を動かす」「疫病と世界史」を、病の日本史なら本書をおすすめしたい。 -
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幕末から明治にかけての蘭医、松本良順の自伝です、前半は。っていうか、すいません、後ろ半分の長与さんの自伝部分は読んでません(汗)。
もちろん文語なのですが、もう明治の頃ですから、読み下すのは難しくありません。近藤勇とか土方歳三が出てくるので、新選組が好きな人にもお勧めですが、それより、当時の科学・医学のレベルがどれほどのものだったか克明に分かって、興味深いです。それだけでなく、蘭学をやった人ですから諸外国の情勢もよく分かっているし、穢多の解放活動をやっていたり、この人、すごいカッコイイ!
穢多というのは士農工商の四身分のさらに下に位置させられて、動物の死骸処理とか皮なめしとかを仕事にしてい -
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古代より日本ではどのような病があり、それがどのように歴史に関わったのかを知ることができます。
当然のことながらウイルスや病原菌の存在は知られておらず、流行り病は、怨霊や物の怪、はては天皇の失政に対する神々の怒りのせいということで、大仏を建てたり僧侶を集めて読経させたりお祓いしたりと、どんな権力者であっても神仏に頼るほかはなかったのです。
現代ですらアヤシげなサプリやトンデモ系健康法などが跳梁跋扈しているのですから、治療法の確立していなかった時代の人々にとってはそれも無理からぬことだと思います。
本書には、マラリア、コレラ、ペストに赤痢と数多くの病名が出てきます。それどこの国…と絶句しそうになる -
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はっきり言って歴史は苦手だ。
でも、医学だとかそういう類いのものには興味があって
そこから切り込んだ歴史の読み物(しかも事実ときた!)は
苦もなく読めてしまった。
教科書には有名な人物の没年数は書いてあっても
その原因は載っていない。
人が生きて、そして死ぬという道筋の中にはドラマがある。
華やかな一面だけではなく、
遠いむかしの想像もできない様な世の中を
『病』を通じて想像し易いものにした本だと思った。
今の医学では簡単に治る病気も
昔は命取りになりかねないものだった。
『医者』には免許は無く
そう言った知識に優れていたものが頼られていた時代。
苦手だった歴史もこう言ったものならば
ま -
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装丁に使われている紙が、江戸小染花だったのでにんまり。
好きな紙だし、、そんな名前の紙を使う心意気や良し、という。
中身は非常に分かり易いし、本当に絵がふんだんで興味深かった。
もちろん文章もとても分かり易い。
手術の様子とか、そんなことまでしていたんだ!と思うこともあれば、
信仰心が今より格段に強いなとも思う。
でも、不治の病となれば、今でも神頼みはするかも。
藁にも縋る思いで。
それを考えれば、誰でも病院へ行けて高度な医療を受けられる。
ただし金さえ払えば。という現代に比べたら、病にかかるということは
今で言う不治の病にかかることと同じなのかもしれない。
数百年先の時代から今を見れば、 -
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古代から現代まで,日本人と病気のかかわりを読み解いていく。
近代化以前はやはり病気についての知識も乏しく,史料も不十分なので,あとから分かることというのはそんなに多くない。それでも貴族や,戦国大名など,大人物については記録された病状から持病や死因が特定できることも。道長は糖尿病を患っていたそうだし,家康・信玄は胃癌で亡くなった可能性が高いようだ。清盛は瘧(おこり:マラリア)で死んだのかも知れない。
このように偉人の病気を詮索するのもよいけれど,病気の種類ごとにその歴史をたどるのも興味深い。特に,欧米から病気の知識とともに病原菌も一気に入ってきた幕末・明治期は,日本医学史の激変期で,牛痘の -
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日本の歴史と病気との関わりを追った本。著者は医史学専門の人。いろんな学問があるものです。大まかに、縄文弥生時代から時代を追って、時代ごとの病気について述べられている。縄文・弥生の場合、骨や遺物から探ることになるため、外傷や奇形などにどのようなものが見られたかがわかる。古代になってくると、文書で残る記録から、誰は何の病気であったかの推測が可能になる。それもそれでおもしろいのだが、やはり時代がもう少し下って、感染症の話あたりがおもしろい。安政に流行ったコレラ。ペリーが来航して日米通商修好条約が結ばれる少し前、長崎港に入港したアメリカ船の船員がコレラに感染していて、ここから大流行が始まる(ちょうどジ