【感想・ネタバレ】病が語る日本史のレビュー

あらすじ

平安時代の人々は病気に罹ると怨霊・物の怪の所為とそれにおびえ、加持祈祷を大々的に行った。また仏教の伝来、遣唐使の派遣は海外の伝染病をもたらした。そして疾病の蔓延は人々を苦しめ、政治を動かし、大きく変えもした。
寄生虫に冒され、結核やポリオも病んだ縄文・弥生の人々、贅沢病ともいえる糖尿病で苦しんだ藤原家一族、江戸時代猛威をふるったインフルエンザやコレラ。
その他、天然痘、麻疹、梅毒、眼病、脚気など、各病気と当時の人びとがいかに闘ってきたかを、歴史上の事件、有名な人物の逸話を交え、〈病〉という視点を軸に展開していきます。
日本武尊の死因・脚気の原因はいつ明らかにされたか?
もし武田信玄がガンで急死しなかったら?
具体的な謎解きをまじえ、読者の興味を引き付けながら、それらの病が日本の歴史に及ぼした影響をさぐってゆきます。

医学史研究の第一人者が語る病気の文化史であり病気の社会史です。

原本 『病が語る日本史』講談社、2002年刊


●主な内容
第一部 病の記録
骨や遺物が語る病/古代人の病/疫病と天皇/光明皇后と施療/糖尿病と藤原一族/怨霊と物の怪/マラリアの蔓延/寄生虫との長いつきあい

第二部 時代を映す病
ガンと天下統一/江戸時代に多い眼病/万病のもと風邪/不当に差別されたらい・ハンセン病/脚気論争/コレラの恐怖/天然痘と種痘/梅毒の経路は?/最初の職業病/長い歴史をもつ赤痢/かつては「命定め」の麻疹

第三部 変わる病気像
明治時代のガン患者/死病として恐れられた結核/ネズミ買い上げ--ペスト流行/事件簿エピソード/消えた病気/新しく現れた病気/平均寿命と死生観

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あとがき

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Posted by ブクログ

日本史を病気という切り口で見ていく一冊。日常的な病気から流行病まで広く概観している。
ところどころ教科書に出てくる歴史上の人物とクロスオーバーさせているので、自分ごとにしやすく、理解も進む。
随所で文学作品の記述を通して病気を見ているのも面白い。当時の病気を知る上で文学作品も重要な史料になるようだ。

医療技術の進歩や衛生環境の改善で淘汰される病気(寄生虫による病気など)があれば、生活習慣の変化によって新たに問題となる病気(生活習慣病や公害病など)もあった。日本人と病気との付き合いにも歴史ありだ。

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2022年02月15日

Posted by ブクログ

考古学資料や文献から日本の病気史を辿る。政治史や経済史とは違った面白さがある。
文章は平易で読みやすい。

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2012年06月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

遺跡から発掘される病や怪我の跡。昔は今では亡くならないような病気をこじらせて死んでいく人がたくさんいた。一方、今では歩くのもままならないような大怪我をしながらも自然治癒に任せて生き延びた人もたくさんいた。矢が刺さったまま、骨がかたまってしまった人骨の話は大変興味深い。

遣唐使を派遣した翌年から、疫病が全国的に広がったらしい。平城京への遷都も疫病を免れるためだったが、遷都によって農民の負担が増えて飢饉を引き起こしたという。

興味を持つような出来事がたくさん並べられていて、読みやすい一冊。病の世界史なら「感染症は世界史を動かす」「疫病と世界史」を、病の日本史なら本書をおすすめしたい。

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2012年06月10日

Posted by ブクログ

文献に残る限り昔(日本武尊まで!)に遡って、日本における病気と人との歴史を紐解いた一冊。
時系列で丁寧に追っていくので読みやすいです。
時代によって病気の流行り廃り、名称の変化、などもあったのですねー。藤原道長は環境的にも家系的にも糖尿病になりやすかったとか、鎖国中は日本にインフルエンザが流行らなかったとか。
面白かった。

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2013年09月28日

Posted by ブクログ

古代より日本ではどのような病があり、それがどのように歴史に関わったのかを知ることができます。
当然のことながらウイルスや病原菌の存在は知られておらず、流行り病は、怨霊や物の怪、はては天皇の失政に対する神々の怒りのせいということで、大仏を建てたり僧侶を集めて読経させたりお祓いしたりと、どんな権力者であっても神仏に頼るほかはなかったのです。
現代ですらアヤシげなサプリやトンデモ系健康法などが跳梁跋扈しているのですから、治療法の確立していなかった時代の人々にとってはそれも無理からぬことだと思います。
本書には、マラリア、コレラ、ペストに赤痢と数多くの病名が出てきます。それどこの国…と絶句しそうになるくらい。
王朝文化咲き誇る鳴くよウグイス平安時代の裏側も、想像以上にシビアでした。
またそれ以外にも市井に蔓延した数々の流行り病や、糖尿病や胃がんなどに苦しめられた歴史上の人物についても解説されており、興味深い一冊です。

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2013年03月13日

Posted by ブクログ

ネタバレ

テーマ史もので「病気」がテーマのものをはじめて読んだ。
職業柄、非常に興味深く読ませていただきました。

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2013年01月12日

Posted by ブクログ

はっきり言って歴史は苦手だ。
でも、医学だとかそういう類いのものには興味があって
そこから切り込んだ歴史の読み物(しかも事実ときた!)は
苦もなく読めてしまった。

教科書には有名な人物の没年数は書いてあっても
その原因は載っていない。
人が生きて、そして死ぬという道筋の中にはドラマがある。
華やかな一面だけではなく、
遠いむかしの想像もできない様な世の中を
『病』を通じて想像し易いものにした本だと思った。

今の医学では簡単に治る病気も
昔は命取りになりかねないものだった。
『医者』には免許は無く
そう言った知識に優れていたものが頼られていた時代。

苦手だった歴史もこう言ったものならば
また読みたいと思いました。

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2011年12月28日

Posted by ブクログ

古代~現代まで、病と人々の関係をわかりやすく解説されてます。
歴史と病と、関係はあまりないと思っていたのですが、そんなことなかった。
文化と宗教と政治と、様々なことに関係していて、ともに生きていたものだったのだなあと。

なんだか、歴史を見る目が変わりそうです。
とても興味深く読みました。

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2011年11月03日

Posted by ブクログ

入院中に自宅の本棚から供給してもらった。何年か前に気になって購入してあった著者だ。
著者は1935年生まれ、この時代に女性で大学、しかも医学部を出るなんて相当レアなケースであるまいか。大学院で医学史を修めている大変研究熱心な方だ。
第一部の「病の記録」は面白い。天平、奈良、平安時代にどんな病気が記録されどのように病気をとらえて治療に当たっていたか、当然科学的アプローチはなくほぼ神仏への祈祷しかない時代だ。また病気による死が世継ぎ問題に直結している有様なんかも興味深い。よくこの切り口でまとめていただいたと思う一冊だ。

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2024年02月19日

Posted by ブクログ

いまだかつてない災厄に見舞われているかのような雰囲気が蔓延している2020年。でもさ、ずーっと昔から人は病とつきあわされてきたんだよね。

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2020年06月20日

Posted by ブクログ

なるほどね~。
だから痛風だったり破傷風だったりするのか ってのが判っただけでも
なんか忙しいなか読んだ甲斐があったよ。

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2012年12月19日

Posted by ブクログ

 古代から現代まで,日本人と病気のかかわりを読み解いていく。
 近代化以前はやはり病気についての知識も乏しく,史料も不十分なので,あとから分かることというのはそんなに多くない。それでも貴族や,戦国大名など,大人物については記録された病状から持病や死因が特定できることも。道長は糖尿病を患っていたそうだし,家康・信玄は胃癌で亡くなった可能性が高いようだ。清盛は瘧(おこり:マラリア)で死んだのかも知れない。
 このように偉人の病気を詮索するのもよいけれど,病気の種類ごとにその歴史をたどるのも興味深い。特に,欧米から病気の知識とともに病原菌も一気に入ってきた幕末・明治期は,日本医学史の激変期で,牛痘の導入,コレラ禍,ペストの防疫成功,脚気論争,など,様々な重要事が集中している。漢方から西洋医学へのシフトが急速に進んだのは明治初期で,病名は新しい翻訳漢語に読み替えられた。疝気や癪など広く使われた漢方の病名も死語となり,わずかに「中風(卒中風)」が「脳卒中」の中に名を残すくらい。
 著者は医学部を出た医史学者ということで,専門の医学に関することはおそらく万全なんだろう。けど,平清盛のところで,「実は白河院の落胤であった。」と断言してるようなところは少々迂闊かなとも感じた。

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2012年10月31日

Posted by ブクログ

著者が考察した歴史の解釈や専門でなさそうなところは、ツッコミどころ満載(特に近世・近代以前)だし、重複箇所が多くかったですが、その辺りは読み飛ばしました。その所為か評価はそこそこです。
著者の視座が歴史資料の病気の記述から日本史を見ていくという姿勢ではなかったです。それを期待すると肩透かしにあいます

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2010年05月31日

Posted by ブクログ

日本の歴史と病気との関わりを追った本。著者は医史学専門の人。いろんな学問があるものです。大まかに、縄文弥生時代から時代を追って、時代ごとの病気について述べられている。縄文・弥生の場合、骨や遺物から探ることになるため、外傷や奇形などにどのようなものが見られたかがわかる。古代になってくると、文書で残る記録から、誰は何の病気であったかの推測が可能になる。それもそれでおもしろいのだが、やはり時代がもう少し下って、感染症の話あたりがおもしろい。安政に流行ったコレラ。ペリーが来航して日米通商修好条約が結ばれる少し前、長崎港に入港したアメリカ船の船員がコレラに感染していて、ここから大流行が始まる(ちょうどジョン・スノウがコレラが経口感染することを突き止めた頃だ)。ペリーが来たり、大地震があったり、安政の大獄があったり、安政って大変な時代だったんだなぁ。天然痘も古くから恐れられていた病気であり、日本でも「もがさ」と呼ばれて恐れられ、もがさ封じのための錦絵などがあったという。ジェンナーの種痘が伝わるより前に、日本でも、病人の瘡蓋を粉にして未感染児の鼻に吹き込むなどの人痘接種法があったのだそうだ。それなりによい成績を挙げていたが、ジェンナーの種痘法には及ばなかったらしい。また、ペストの伝来は明治29年。防疫に努めた結果、日本ではヨーロッパほどの大流行には至らなかった。時代が下ってからの伝来であったことも幸いしたのだろう。

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2011年07月15日

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