これは好い恋愛漫画だ。グッとくる恋愛漫画の条件は色々とあるだろうけど、あくまで、私が重視したいのは、作者が自分を曝け出しているか、だ
絵が巧いコトやストーリーの展開がしっかりしているに越した事はないが、作者が自分の「好き」を作品に籠めてないと、途端に嘘臭くなる。嘘臭いって表現が適切でないのであれば、
...続きを読む底が浅くなる、だろうか
自分の「好き」、つまりは、こだわり、趣味、嗜好だ。おっぱいやメイド、モンスター娘、それは作者で様々だろうが、自分を見せてくれる、読み手に隠さない漫画は読みたくなる
私もプロではないので、この『可愛い上司を困らせたい』(1)で、タチバナロク先生のフェチを全て見抜けている訳じゃ無いが、少なくとも、先生は年上の女性の困り顔に、得も言われぬ興奮を覚えるヒトだってのは感じ取れた
神経質で堅物、典型的な仕事人間“だった”ヒロイン・井羅恵(31)は、チャラいけど芯はしっかりしている新人社員・青木俊と上司と部下の関係を超え、男女の付き合いを始めた事で、自分の知らなかった自分に出会い、恋する楽しさと辛さを知っていく
交際のキッカケが中々に突飛ながらも、付き合い始めてからの展開には、読み手の興味を褪せさせないリアリティがある。二人っきりの時にだけ下の名で呼ばれる嬉しさや、相手が自分との交際に本気ではないのか、と不安になってしまう心境などは共感できる読み手も多かったんじゃないだろうか?
この(1)では、次巻へ波乱が持ち越しになっていないので、ホッとした。引きの巧さも大事だが、収めるべきトコは収めてもらった方がいい。だらだら引き延ばされると気持ちが冷める
恵の恋愛初心者らしいピンクな妄想や、ざまぁないテンパリ方は実に微笑ましく、俊が骨抜きになるのも頷ける
しかし、これから恋人だけに許される行為は幾つもあるのに、今からこんなにパニックを起こして大丈夫なんだろうか。イイ歳ぶっこいているってのは、些か失礼にしろ、キスするまでに、どんくらい、俊は焦らされるのだろうか
また、そんな付き合い始めの二人の仲を掻き乱す、ゴシップハンターたる兎耳山寧々や、俊にぞっこんな従妹・しおりなどのキャラも個性豊かで、活躍が期待できる
この台詞を引用に選んだのは、分からんでもないな、と思ったので。確かに、俊のやった事は女々しく、男らしくない。ただ、俊ほどの男にこんな無様なマネをさせたのは、恵の悪気のない、ちっぽけな自己保身の念。案外、男ってのは繊細なんですよ、女性陣。周りに知られたくないための努力は大事かも知れませんけど、そのキモチを男に伝える時は笑顔は見せないように。好きな顔と嫌いな顔が一緒になると、男は苦しいんで