ガエル ファイユのレビュー一覧

  • ちいさな国で

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    宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』。堀辰雄の『風立ちぬ』。夏目漱石の『夢十夜』。連城三紀彦の『戻り川心中』等々。
    文章の美しさが印象的な作品はいくつかあるのですが、この『小さな国で』の文章も、それらの名作と同じくらい印象に残ります。

    本編である少年時代の回想に入る前に、語られるギャビーの追憶。自身と似た境遇の難民へ抱いた想い。故国を逃れたことによる居場所の無さ。
    その文章の詩的な儚さと美しさに魅せられると共に、その語りの奥に秘められた哀しさが、自分の中の琴線に静かに触れてくるような、そんな感覚を覚えます。

    『ちいさな国で』の著者、ガエル・ファイユはブルンジ共和国出身。ブルンジという国はこの小説を読

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    2020年07月24日
  • ちいさな国で

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    ネタバレ

    ガエル・ファイユの自伝的小説のようであり、デビュー作のようである。
    「ぼくは、ぼくの子ども時代を追われたのだ」この言葉がこの話の本質を得ているのではないかと思う。
    主人公は子どもから大人に変わる時期をはく奪され、両親も友達も近所の仲間も多くを失った。またその失った原因は外的要因である民族間の問題である。
    父が政治に興味を抱かせなかったのも、政治に関わることで民族というフィルターが貼られることを想ってであり、そのフィルターがなかったために、主人公はある意味では自然的に、ある意味では周囲の状況を理解できなかったのだと思う。
    また、主人公は何度も恐怖と怒りの天秤に関わるところは、民族間の争いが起こっ

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    2025年02月21日
  • ちいさな国で

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    フランスの高校生はすごい。
    高校生が選ぶゴンクール賞を受賞した本作は、「ある秘密」同様、戦争のやるせなさと、痛いほどの悲しみを描く。これは、こういうのを読まないと本当に戦争に反対できないなと、そう思った。

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    2023年12月15日
  • ちいさな国で

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    アフリカのブルンジ、おそらく初めて思いを馳せた国だと思う。
    ルワンダの虐殺だけではなく、隣国ブルンジでもツチとフツの争いが起きていたことに驚いた。
    人と人が争うことの醜さ。愛する人を失うことの受け入れ難さ。戦争が現実となった今、読まれるべき本だと心から思う。

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    2022年06月24日
  • ちいさな国で

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    舞台のブルンジは初めて名前をきく国だった。ホテル・ルワンダも映像としての衝撃があったけど、この小説は、特にお母さんの言動を通じて当事者としての体験が生生しく感じられる。
    中立に、平和主義で、事なかれ主義でいたい性格の主人公が、殺伐としていく状況から逃げたいけどどうしようもなく紛争に絡め取られていく様子が丁寧に描かれてた。少年時代とその喪失、家族の問題、特権階級として存在する白人たち、そして民族対立の憎悪と狂気と悲しみ。色んな要素がぐるぐると混ざり合う。主人公と同じく読者も、それらに翻弄されながら受け止めるしかない。できることとして、遠い異国の痛ましい話に関心を寄せ、心を寄せ、支援できることがあ

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    2021年11月04日
  • ちいさな国で

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    ブルンジ共和国でフランス人の父とルワンダ難民のツチ族の母の間に生まれた少年ギャビーの日常とそれを襲ったルワンダ大虐殺と内戦を描いた作品。そもそも無知すぎて作品背景についての知識があまりなかったので勉強になった。
    第二次世界大戦下イギリスの少年の日常を描いたロバート・ウェストールの『機関銃要塞の少年たち』を思い出したけど、大人から独立してドイツ兵を匿う子どもたちとは違って、自ら内戦に飲み込まれて子ども時代を奪われていく子どもたちの描写が苦しかった。その描写が瑞々しくあればあるほど。

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    2021年08月18日
  • ちいさな国で

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    ルワンダでのフツ族によるツチ族の大虐殺のニュースはたいへんショッキングだったのでよく覚えている。それ以前にも同じようなことが繰り返されていて、そのせいでルワンダから隣国のブルンジに逃れてきたルワンダ難民のツチ族の女性とフランス人男性の間に生まれた男の子が、少年期までを過ごしたブルンジでの日々を回想する形式で書かれた一作。ブルンジもルワンダと同じフツ族とツチ族で構成された国で、ルワンダで大虐殺が起こった後、元々政情が不安定だったブルンジでも民族間の戦争が始まったために、彼は父親の故国フランスに逃れる。
    虐殺や戦争が始まるまでの彼の日々は、両親の不和などの不安材料はあるものの、家族や親戚、友人に囲

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    2020年05月25日
  • ちいさな国で

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    アフリカの小さな国、ブルンジの日常描写が色鮮やかで印象的。明るい記憶に彩られた前半は瑞々しいが、潜んでいた暴力の暗い影が大きくなっていく後半は苦しい。ヒップホップアーティストの著者自身の体験を元に書かれたそう。美しい故郷の思い出、当たり前の日常が崩れていく様を刻一刻と追体験しているかのようだった。

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    2024年04月18日
  • ちいさな国で

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    アフリカの小さな国で、仲間たちと川で遊んだり、近所の家のマンゴーを取って笑い合ったりという日常を送る少年。
    そんな日常の中にも使用人や、奥地に住む貧しい人を見下す意識、民族差別が垣間見えます。
    やがて虐殺の嵐が近づいて来て、否応なく飲み込まれていく。ずっと続くことを疑わなかった日常が破壊される恐怖や悲しみ、苦しさが伝わってきます。
    そんなに昔のことでもなく、今なお取り返しのつかない心身の傷に苦しめられている人を思い切なくなります。

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    2021年09月04日
  • ちいさな国で

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    かの国の紛争の事は以前調べたことがあるから漠然とは知ってるけど、実体験した人が書くとリアルではある。

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    2020年05月01日