ガエル ファイユのレビュー一覧
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宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』。堀辰雄の『風立ちぬ』。夏目漱石の『夢十夜』。連城三紀彦の『戻り川心中』等々。
文章の美しさが印象的な作品はいくつかあるのですが、この『小さな国で』の文章も、それらの名作と同じくらい印象に残ります。
本編である少年時代の回想に入る前に、語られるギャビーの追憶。自身と似た境遇の難民へ抱いた想い。故国を逃れたことによる居場所の無さ。
その文章の詩的な儚さと美しさに魅せられると共に、その語りの奥に秘められた哀しさが、自分の中の琴線に静かに触れてくるような、そんな感覚を覚えます。
『ちいさな国で』の著者、ガエル・ファイユはブルンジ共和国出身。ブルンジという国はこの小説を読 -
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ネタバレガエル・ファイユの自伝的小説のようであり、デビュー作のようである。
「ぼくは、ぼくの子ども時代を追われたのだ」この言葉がこの話の本質を得ているのではないかと思う。
主人公は子どもから大人に変わる時期をはく奪され、両親も友達も近所の仲間も多くを失った。またその失った原因は外的要因である民族間の問題である。
父が政治に興味を抱かせなかったのも、政治に関わることで民族というフィルターが貼られることを想ってであり、そのフィルターがなかったために、主人公はある意味では自然的に、ある意味では周囲の状況を理解できなかったのだと思う。
また、主人公は何度も恐怖と怒りの天秤に関わるところは、民族間の争いが起こっ -
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舞台のブルンジは初めて名前をきく国だった。ホテル・ルワンダも映像としての衝撃があったけど、この小説は、特にお母さんの言動を通じて当事者としての体験が生生しく感じられる。
中立に、平和主義で、事なかれ主義でいたい性格の主人公が、殺伐としていく状況から逃げたいけどどうしようもなく紛争に絡め取られていく様子が丁寧に描かれてた。少年時代とその喪失、家族の問題、特権階級として存在する白人たち、そして民族対立の憎悪と狂気と悲しみ。色んな要素がぐるぐると混ざり合う。主人公と同じく読者も、それらに翻弄されながら受け止めるしかない。できることとして、遠い異国の痛ましい話に関心を寄せ、心を寄せ、支援できることがあ -
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ルワンダでのフツ族によるツチ族の大虐殺のニュースはたいへんショッキングだったのでよく覚えている。それ以前にも同じようなことが繰り返されていて、そのせいでルワンダから隣国のブルンジに逃れてきたルワンダ難民のツチ族の女性とフランス人男性の間に生まれた男の子が、少年期までを過ごしたブルンジでの日々を回想する形式で書かれた一作。ブルンジもルワンダと同じフツ族とツチ族で構成された国で、ルワンダで大虐殺が起こった後、元々政情が不安定だったブルンジでも民族間の戦争が始まったために、彼は父親の故国フランスに逃れる。
虐殺や戦争が始まるまでの彼の日々は、両親の不和などの不安材料はあるものの、家族や親戚、友人に囲