沖大幹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ研究者視点の水問題に関する本が欲しかったので、大阪で購入しました。
結構分厚く、内容も濃かったので読むのに時間がかかりました。
水問題の中でも水源地買収や河川管理など、自分が興味のある分野についての言及があったので非常に参考になりました。
水源地買収の一環で危険視される中国などによる森林買収については疑問に思うところがあり、自分なりの考え方の形成の役に立ったように感じます。わたしと著者ではレベルが違いすぎますが…
海外の水メジャーと呼ばれる企業の動向に関してはなるほどと思うところが多かったです。
文調自体はさらっとしているので文章として読むのにはまったく詰まるところはありませんが、水文学と -
Posted by ブクログ
「天文学」に対する「水文学」。
言われてみればその名前に「なるほどな」とも思うが
天の星々に多くの人々がロマンチックな何かを感じる一方で
水は何においても我々の生活と切り離せない重要な資源である。
不可欠な存在である水の様々な特性が
「どのように消費するか」「消費するためにどのように賄うか」
といった経路を通じて、経済や社会のあり方につながっていく。
温暖化等を起因とする水害の増加、
人権の1つとして数えるに相応な「水へのアクセス」の維持といった
身近な問題への指標以上に、多くの要素を含有する水文学の一端に触れ見つめ直すことが多くあった。 -
Posted by ブクログ
水文学という水に関する幅広い学問。人文社会科学にまつわる話を中心にわかりやすく説明、学者としての経験に基づいた話も面白い。
水は安いが上にローカルな資源。輸送費がそのままコストの大きな増大になる。水の問題は飲用でなく洗うためで、生きるか死ぬかだけでなく文化的で健康的な生活が送れるかどうか。水へのアクセスがないのはインフラの問題。水問題が国家間の戦争に繋がったことはなく、融和等に繋がる場合の方が多い。食料の輸入はその生産に必要な水「輸入しているようなものなので仮想水貿易VWTと呼ばれる。人口が今後指数関数的に増えることはない。外国資本に山林を買い占められることは別に水源を奪われるといったことでは -
Posted by ブクログ
雑誌の書評を見て、読んでみようと思った。環境問題に絡む話は、論者の主義主張に左右されて客観的事実に基づかないものもあるようだが、本書は、書評や実際に読んでの実感からは、科学的な内容のように思う。
本書のテーマを超えた著者の主張や科学者のエピソードなどに脱線する部分も多いが、水問題と聞いて思い浮かぶような一種の常識が次々と覆されて、とても面白い。例えば、節水は良いことだが、いくら日本で節水してもアフリカの水不足の役には立たないし、水源林のイメージで植樹すれば水が豊かになるとは限らず、むしろ植物が地中の水分を吸収し蒸散させてしまう効果も大きいといったことが書かれている。
中でも、仮想水貿易という考 -
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職場の本屋の平積みから購入。
いっていることが全う。
(1)地球温暖化、地球環境の問題は、手段と目的が逆転している。(p265)
本来すべての学問は、国民の命と生活を守り、改善していくためのも。それに対して、著者は、最近の地球温暖化ブームは、その目的を制限してまでも地球温暖化という手段を進めようとする意味で、手段と目的が逆転しているという。
そのとおり。しかし、それと同じことを河川工学者や河川関係者はやってきたのではないか。住民の生活と命を守るために行うべき手段の一つである河川整備を、それ自体を目的として進めてきたのではないか。
それが、今の被災地の海岸堤防の議論で