坂井榮八郎のレビュー一覧
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本書は現在のドイツに相当する地域の歴史を10章立てで概説している本です。著者も後書きで述べているように、著者が恣意的に重要と思われるイベントを中心にピックアップし、それに対して過去の先達の見解もふまえながら自分の見解を披露しつつ、歴史の前後関係を説明しています。このアプローチは良かった。特に著者も強調されているように、ヨーロッパの中のドイツという視点が一貫して取られているので、なぜその当時(例えば)神聖ローマ帝国がこういう行動に出たのか、ビスマルクはドイツ統一ができたのか、という点について、簡単ではありますが、初心者にも納得がいくように説明されています。
とかく歴史の本は浅く広く書くと、初 -
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ネタバレ期待通りの岩波新書的な出来具合。最高に読みやすく最高に面白い。
フランク帝国は教会=国家、という仕組みであり、民衆は帝国を教会と理解していた、という分析は専門家間では一般的なのだろうが、自分には目新しいものだった。その後は教会↔国家の対立という構造へと徐々に変わっていくが、最初から対立していたわけではない・・・という。中世ドイツは、教会↔国家という2つの中心を持つの楕円形で理解すべし、らしい。
神聖ローマ帝国時代の解説では、控えめではあったけど、オーストリアやプロイセン以外の領邦についても触れられていたのが良かった。教科書はこういう部分を端折るので、いつも全体像が見えづらくて困っていたから、あ -
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・ライン下流域からいまのベルギー、北フランス方面に、いくつもの支族の国に分かれて広がったフランク族は、五世紀末の481年頃に「フランク人の王」となったメロヴィング家のクローヴィスの下に統合されて統一王国を形成する
・ルターが問題にした贖宥状はサンピエトロ大聖堂の改修資金を集めるためのものであった
・ルター派とカトリック派諸侯の争い―プロテスタント諸侯・都市の「シュマルカルデン同盟」結成(1531年)→「シュマルカルデン戦争」(1546年〜47年)→「アウスクスブルクの宗教和議」(1555年)
・第一次世界大戦「シュリーフェン作戦」―まず主力を西に向け、中立国ベルギーを通過して一挙にフランスを叩 -
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ネタバレドイツには、1昨年、はじめていきました。ベルリンです。
最初の印象は、パリに一番近い都市だということです。
パリのような、世界の文化の中心を目指しているが、パリではない。
昨年、ミュンヘンに行きました。ドイツ博物館を訪問しました。
それからドイツに興味を持ちました。
本書では、アルミニウスがローマ軍をトイトブルクの森で破ったという、タキトゥスの話を最初に紹介しています。
神聖ローマ帝国、ハプスブルク家、ビスマルク、ワイマル共和国、ナチスについては、名前は知っていたが、関係はよくわかっていなかった。
3度目にニュルンベルグに行って,ドイツの歴史が立体的になったきがしました。 -
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ネタバレ第一次大戦後と第二次大戦のドイツ史を知るために利用した。
この本は歴史の流れと重要な登場人物を把握するのに非常によい上、歴史が明らかにする人間社会の問題について考えさせられると感じた。
簡潔に歴史上の事件の流れが述べられている上、当時の経済状況を失業率の数値で具体的にのべられていたのでイメージがしやすかった。またヒトラーの思想や政策についても解説されていた上、ヒトラーが独裁体制を確立していった経緯や背景のヒントが示されていて興味深い。特に当時世界で一番民主的な憲法があったにもかかわらず、なぜ独裁が成立したかという点に関して、当時の国民や政治家に民主的な議会政治が成熟していなかったことを指 -
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英仏は国家統一を進め、教会所領に国王が課税権を持った。ローマ教皇は英仏に手を出せない。一方、神聖ローマは世俗領邦は半独立、国内の教会も半独立。国内がばらばらで介入がしやすいため、ローマ教皇はドイツの教会を通じて金を吸い上げていた。ドイツは「ローマの雌牛めうし」。教皇レオ10は、サン=ピエトロ大聖堂の修繕費を賄うため、ドイツ人に贖宥状を売って金を儲けた。いい加減にしろ、ということでルターの95か条(1517)。
大衆動員をしたナチス。大衆民主主義の苦い経験。西ドイツは徹底した議会中心の間接民主にした。ワイマール時代に小党が乱立して政権不安に陥ったので、得票率が5%未満の政党に議席を与えないこと -
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▼ハンナ・アーレントさんの「エルサレムのアイヒマン」を読もうと思い。準備体操にドイツ史の本を何か読もう・・・と手に取った1冊。期待に違わずかなりドイツな気分にさせていただけました。ありがたい。
▼「ドイツ史10講」坂井榮八郎。岩波新書、2003年。坂井さんという方は、1935年生まれの歴史学者さんだそうです。無論、一般向けの分かりやすい歴史書、というコンセプト。印象に残ったのは、ルターとナポレオンでした。
▼ルター=宗教改革については、とにかくルター自身の腐敗したカトリック教会への勇気ある反論活動。それに教義などとはあまり関係なく、さまざまな思惑が絡んで、プロテスタントが成立した、という雰 -
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☆☆☆2017年12月レビュー☆☆☆
ドイツとは何だろう?現在のドイツは19世紀に生まれた新しい国で、歴史を遡ればその地域には「神聖ローマ帝国」があった。自分なりに解釈すれば、諸侯連合のボスといった存在だったのだろうか。諸藩連合のトップの江戸幕府のようなものか?
今回の読書で印象に残ったのは、オーストリアのヨーゼフ2世の改革だろうか。「啓蒙絶対主義」の国王により、農民開放や信教の自由がなされたというのは興味深い。
ドイツ統一から第一次世界大戦、ヒトラーの出現に至る歴史にも触れている。
ドイツを中心にヨーロッパの歴史を学ぶのに分かりやすい良著だと思う。 -
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「フランス史10講」にくらべ、少々著者の意見が多く含まれている本であった。しかしながら、マルクスやエンゲルスの「唯物史観」への多少の批判も含まれている。
イギリスとドイツは資本主義発達の比較対象として語られるが、その上では「イギリスやフランスは絶対王政を早いうちから確立したが(もちろん仏英はそれぞれ違うのが)、ドイツは封建制が色濃く残った。」とする議論である。しかしながら、三十年戦争が起こるまではそこまで分権的であったわけでもない、ようである。
またしばしばドイツの人口が3分の1が死んだとする三十年戦争という議論があるが、少し言い過ぎだそうだ。もちろんこれでドイツの発展がかなり遅れ、その