「明るさが小さいブラックホール」という字面に「!?」と二度見してしまう人ならきっと楽しい本書。
そもそもブラックホール自体が(その名前の知名度とは裏腹に)多くの謎に包まれているわけだが、本書はさらに「巨大」とつくのである。いつできたのか、どうやってできたのか、最初から巨大だったのか、だんだん大きくなっていったのか、いままさに研究者達が血眼になって望遠鏡を覗き込んでいるとのこと。
本書でいう「巨大ブラックホール」があるのは銀河の中心。我々の住む天の川銀河に限らず、銀河の中心には巨大ブラックホールがあると見られている。となれば「銀河を銀河たらしめるもの」が巨大ブラックホールなのだろうか、と早とちりもしたくなる。巨大ブラックホールの引力で円盤であったり渦巻きであったりという銀河が形作られているのだろうか。
一般的なブラックホール(恒星質量ブラックホール)は「太陽の何十倍もある大質量星が寿命を迎えてできる」ということがわかっている。しかし銀河の中心にある巨大ブラックホールはまだよくわかっていない。ただ「銀河の質量と巨大ブラックホールの質量に相関がある」というマゴリアン関係が知られていて、これがヒントになるのではと目されているらしい。
いったい何をどうしたら銀河の質量が分かるのかもわからないのだけど、広大な宇宙のわずか一点である地球上で観測できる物理法則が全宇宙をあまねく支配しているというスケールの大きさがロマンを掻き立てるのである。
冒頭に触れた「ブラックホールの明るさ」とは、ブラックホールの中(正確には脱出速度が光速を超えるシュバルツシルト半径の内側)からは光も出られないが、ブラックホールへ落ちる最中の物質が放つ光(電磁波)は観測可能で、重力が途方もなく大きいために位置エネルギーが変換されて放出されるエネルギーもまた途方もなく大きなものとなり、したがって「ブラックホール(の周囲)が非常に明るくなる」というわけである。
ウィトゲンシュタインは「語りえぬものについては沈黙しなければならない」と言ったが、観測できるものを観測しつくすことで「観測できないもの」が見えてくるのである。