杉本圭三郎のレビュー一覧

  • 新版 平家物語(一) 全訳注

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    昔学校の授業で嫌々学んだことを今改めて学んでみると,案外楽しいじゃないかってことない?というコンセプトで,平家物語を一気読みしてみました。

    目で読むと迷子になるけど、口に出して読むと、受験時代の勉強の残骸で何とか全体の意味は取れる。これは逐語訳もついてるからわかんなかったとこはそこで補完!

    平家物語って戦闘シーンとそうじゃないとこがある感じがドラゴンボールとか幽遊白書と一緒だね!漫画だと戦闘シーン読み飛ばしがちだけど,平家物語は戦闘シーン好き。なぜなら馬が出てくるから。やれ連銭葦毛だの黒栗毛だの月毛だの,この馬はすぐ人のこと食べちゃうだの(全然関係ないけど、昔JRAに肉食の馬いたよね、、誰だっけ?ウサギヨウジンボウだっけ?鳩とか食べ散らかしてた。),4尺八寸の馬だの、ディテールが細かいの。あの馬は口が強いとか、腹帯緩んでたから締め直してたら遅れをとったとか、ありそうありそう馬乗りが書いてそう!!馬装もね、黄覆輪の鞍置いてとか言われたら、うわなんかこだわってそう!テンション上がるうってなるね!!

    戦闘シーンじゃないとあんまりテンション上がらないけど、でも、恋物語もガチムチお坊さんたちの肉弾戦政治闘争も面白い!ただね、みんな泣きすぎだわ。
    すーぐ「袖をしぼる」とか「なき沈みてものも言わず」とかいうけど、いやいや、いやいやいや、そんなに泣いた??現代社会におけるTwitterとかで「声出して笑った」くらい信用ならないんだわあ。しぼるほどは泣いてないでしょうよ、ぽろっと涙出ちゃったくらいでしょうよ!

    読んでいくと,あ,これ授業でやったわ,とか,これ教科書に載ってて音読させられたわってとこがあるんだけど,やっぱり先生は一番面白いところ選んでくれてたわ!!
    安徳天皇を抱いた二位尼の「波の下にも京のさぶろうぞ」
    義経のひよどり越
    那須与一のひょうふっと扇を射抜くやつ

    あたりはサビ中のサビ!!盛り上がるう。

    あと、出世争い頑張るおじさんたちを見るのも楽しい。おじさんと言いつつ年下なのがアレだけども。

    役職の打診を受けたけど断る時の歌とかも出てきたので、いつか使ってみようと思います。

    「けふまでもあればあるかのわが身かは、夢のうちにもゆめを見るかな」

    「夢のうちにも夢を見てるような気持ちですぅ」でなんとか!!香炉峰的察しでなにとぞ!!

    ところでわたしは木曾義仲と今井四郎兼平のBLが読みたいです。pixivにありますか?
    きっといにしえのオタクたちによる薄い本が、古いのは墨で描いたくらいの時代のやつからあるんだろうな。薄い本ていうか薄い巻物なんだろうな。

    こうやっていにしえのオタクたちから連綿と続くオタクの集いに加えてもらえる喜びが、こういう古典の読書の喜びなんだろうなって話でした!!

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    2025年06月10日
  • 新版 平家物語(四) 全訳注

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    巻第十~第十二、地図、系図、年表、解説を収録の最終巻
    主要エピソードは、巻第十の重衡海道下り、維盛入水、巻第十一の屋島の戦い、壇ノ浦の戦いです。

    前巻における一ノ谷合戦における大敗により、平家の滅亡がほぼ確定した状態から始まり、平家一門がそれぞれの最期を迎えていきます。
    戦場から逃げて出家・入水した維盛、合戦での敗北を悟って自害した二位尼、能登守教経、新中納言知盛、源氏に引き回された上で斬首された大臣殿宗盛、本三位中将重衡…
    総帥の器ではない凡庸な人物で、壇ノ浦で自害できない、全く潔さのない宗盛でさえ、最期には家族愛の強く同情を誘う場面がありました。

    一方、平家滅亡後も、平家残党狩りや源氏内部の粛清が続きます。
    平家を滅ぼした功労者の義経は、追っ手を差し向けられます。
    追っ手を差し向ける頼朝は、その台詞から恩や情誼に厚い人物として描かれる一方で、本人の立ち会わないところでガンガン殺していくというスタンスで一貫しています。
    『平家物語』は、歴史的出来事と登場人物の感情に焦点を当てる一方で、政治的な策謀とその理由を描かないという方針で書かれたために現れた頼朝像なのでしょうが、それが不気味な雰囲気を醸し出します。

    多分、貴族・平家、源氏は、お互いに価値観を共有していない。
    ときに和歌や管弦に興じる半貴族化した平家からすれば、板東武者はバーサーカーのように見えたからこそ、水取りの羽音で逃げ出し、倶利伽羅峠で崖から突き落とされる。
    源氏方で盛んだった先陣争いは、平家方においては描写されません。
    ただ、こうした異なる層のキャラが登場するからこそ、平家物語は、単に軍記物というにとどまらない、詩歌や法文を時々とりまぜた独特な文体、ジャンルをとりまぜた暗すぎず明るすぎないストーリーになったのでしょう。

    灌頂の巻も良かった。
    アニメではほとんど主役と言ってもいいくらい台詞の多い徳子ですが、大原作『平家物語』ではほとんど喋らない。それがこの灌頂の巻で急に話し出します。
    読んでいくと、アニメを徳子が折々話していた事柄と、この大原で話していた事柄とが繋がってくる。別な場面・台詞で、同じ熱量を表現していたことが分かります。


    巻第一から数ヶ月かけて読みましたが、感無量です。
    何百年も前に書かれ、琵琶法師によって語り継がれながら洗練されてきた文章だけに、ストーリーも修辞も楽しめました。
    声に出して読んで、こんなに気持ちの良い文章は、初めてかもしれません。

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    2022年09月18日
  • 新版 平家物語(一) 全訳注

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    アニメ『平家物語』が大変面白かったので、その原作の原作として読みました。
    巻第一~第三(アニメ第1話~第5話前半に相当)を収録しています。

    主要エピソードは、僧兵の強訴、鹿ヶ谷の陰謀、平重盛の死です。
    源氏はほぼ出てこないし、割と地味な事件なので、軍記物を期待している人には肩透かしかもしれません。

    ただ、その後のストーリーや解説を追うと、これらのエピソードを取り上げる必然性が分かります。
    平家の滅亡を描くには、その滅亡の原因を描かなければならないからです。
    仏教的な因果応報観、盛者必衰の理をあらわすための3巻です。

    文章的には、時に漢詩文を引用して格調高く、時にドラマティックに、文体を変えつつ緩急のある話運びで、長いのに飽きません。
    音読してこれほど気持ちいい文章は、現代文ではきっと誰も作れないでしょう。

    体裁は、講談社学術文庫おなじみの原文→現代語訳→語釈→解説の4区分掲載で、多少古文の読解に自信がなくても、辞書を引かずに読み進められます。
    原文も、底本にはないカギ括弧や改行により、かなり読みやすくなっています。
    『平家物語』は各社から出版されていますが、とりあえず1冊買うなら本書がベストだと思います。

    なお、地図、系図、年表、解説は、最終巻にまとめて収録されています。

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    2022年06月25日
  • 新版 平家物語(四) 全訳注

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    後半部分は平家絶滅の後の世の記述が中心になっています。清盛の悪行によって罪のない安徳天皇や女院などが壇ノ浦に沈んでいく様子やその後の源氏による平家に対する仕打ちは涙なしに読めません。4巻全体を通して登場人物が非常に多いので予め平家物語に関する予備知識を少しでも蓄えたり人物事典を手元において読むことをおすすめします。

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    2022年03月07日
  • 新版 平家物語(一) 全訳注

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    現代語と原文の両方が掲載されているので古典初心者の方も読み慣れてる方も楽しめます。解説や脚注もあり関連知識が身につくのもオススメポイントです。個人的には人物関係図が掲載されていないので関係を整理しながら読み進めるのが少し苦労しました。

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    2022年02月15日
  • 新版 平家物語(一) 全訳注

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    ネタバレ

    一巻は巻一~巻三が載っていて690ページとずっしり重くぶ厚い。原文、注釈、現代文、解説から成っていて、解説で背景、実歴史との差異なども述べられていて、薀蓄好きの私には合っているように思います。注釈も多く詳しい。登場する寺、寺院まで一つ一つ詳しく説明されていて資料として膨大です。現代訳は、きっちり正確にですます調で、全体に教科書っぽい。私は、この詳しさ、文体のカッチリ具合が好みです。

    読む中心は現代文で読んでいるのですが、面白いエピソード等は原文で読んだりできるのも、この版良いです。原文は源氏物語よりは読みやすく、かつ、声に出して音読すると気持ち良い感じ。五七調なのか?リズムが良いです。

    源氏物語より少しとっつきにくい。巻一~巻三が序盤で、ドラマの導入部分であるせいもあるでしょうけれど、段によって、読みやすく楽しめる段と読みにくい段がありました。

    読んで興味を惹かれたのは重盛の描かれ方。最初に良い男、立派な男だなあと思って読んでいたのですが、解説を読むと、どうやら史実、事実と変えて脚色されているらしい。悪いことは清盛がやったように、重盛は悪いことはしてないように、キャラクター付けをメリハリ付けて、かつ、清盛がこういう態度であったから因果応報で平家が滅びた、重盛が亡くなったことで平家の衰退が始まった、と理由付け、納得させるための役付けらしい。
    巻一の殿下乗合の展開、経過、摂政の方から実際は謝罪に出向いていたが、重盛が受け入れなかったのが実際らしい。別の文献との違いが詳細に述べられていて、ほほーと面白く読んだ部分です。

    エピソードや人物で印象深かったのは、鹿谷の陰謀の首謀者の一人、大納言成親。逮捕される際に、気づかず美しい衣装に着替えて華麗な牛車に乗って出かける場面とか、死罪から重盛の助けに寄り一旦は流罪になるものも、その先で殺害されてしまう場面は、かなりショッキング。しかし、その息子の少将成経は許されて流罪先から戻ることができるのですが、この親子間での思いを歌に歌う場面は心打たれます。

    少将が赦免されて戻るのに対し、共に流された俊寛は、遂に戻れず島で亡くなるのですが、この場面は、能や文楽などにもなっているらしい。文楽では、足摺の場面が、人形だからか、ちょっと笑える場面に見えたとも観た方から聴き、それはぜひ観てみたい、能でも文楽でも。実際には、3人が流され、2人が許されて戻り、自分だけが残るとなったら悲惨でしょうね、3人なら我慢できることも、1人では耐えられないでしょう。

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    2020年02月06日