アニメ『平家物語』が大変面白かったので、その原作の原作として読みました。
巻第一~第三(アニメ第1話~第5話前半に相当)を収録しています。
主要エピソードは、僧兵の強訴、鹿ヶ谷の陰謀、平重盛の死です。
源氏はほぼ出てこないし、割と地味な事件なので、軍記物を期待している人には肩透かしかもしれません。
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ただ、その後のストーリーや解説を追うと、これらのエピソードを取り上げる必然性が分かります。
平家の滅亡を描くには、その滅亡の原因を描かなければならないからです。
仏教的な因果応報観、盛者必衰の理をあらわすための3巻です。
文章的には、時に漢詩文を引用して格調高く、時にドラマティックに、文体を変えつつ緩急のある話運びで、長いのに飽きません。
音読してこれほど気持ちいい文章は、現代文ではきっと誰も作れないでしょう。
体裁は、講談社学術文庫おなじみの原文→現代語訳→語釈→解説の4区分掲載で、多少古文の読解に自信がなくても、辞書を引かずに読み進められます。
原文も、底本にはないカギ括弧や改行により、かなり読みやすくなっています。
『平家物語』は各社から出版されていますが、とりあえず1冊買うなら本書がベストだと思います。
なお、地図、系図、年表、解説は、最終巻にまとめて収録されています。