村田久のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
簡にして要という他ない、夢枕獏氏の序文からしてまず、いやが上にも期待は高まる。
本編を繰っていくと、そこで展開されるのは、まさに「釣りキチ三平」のような世界。
東北地方の深山幽谷ほど、幻想譚がよく似合う舞台はないだろう。
かつて都から逃げ延びた落武者がひっそりと構えた里の系譜に連なる集落が多いと聞くが、そのような経緯も、種々の伝説が生まれることになった素地として見事な出自であると推察できる。
しかしながら、描かれているような空気が満ちていたのはおそらくは昭和までで、今は規模の大小こそあれど、隅々に至るまで開発という名の悪手が伸ばされ、沢の主が潜んでいたはずの淵も、無粋で醜いコンクリートの護岸 -
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