赤攝也のレビュー一覧
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公理系から初等幾何を展開する
この教科書は、「点」からはじまる7つの無定義用語をさだめ、これらから公理系をつくるのだが、その公理系の対象は座標平面とすることから出発する。この公理系を選ぶところで大切なのは、その公理系から初等幾何がたやすく展開できることであるが、この展開が大変わかりやすく丁寧に説明されている。
練習問題は「証明を完結せよ」というような形式で、学習者が自分で公理系からユークリッド幾何学の定理を考えるようにできている。具体例では定理「相異なるどのような2点に対しても、それらを通る直線がただ1つ存在する。」の証明のあとに出題された問。
この問を考えることで、直線の定義と定理とのつながりを自分でたしかめ -
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大袈裟かもしれないが数学世界全体のエッセンスを一気に得たような気になった。おそらく、数学の本質を述べている書なのだと思う。現代数学というものまで分かったような気になった(実際は門の前に立ったくらいだろうが)。それくらい読んでいい気分にさせてくれる。書いてあることは難しいのだけど、じっくり読めば理解できるくらい優しさがあふれる解説である。中学生か高校生くらいの時に読んでいれば、大学では数学科を選んだかもしれない。いや、そんな人は実際にいるだろうと思う。脳みそは使ったけれど、楽しい読書でした。
文庫版の初版は2020年2月だけど、本自体は1988年のものである。コンピュータについての解説は古いと -
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ユークリッド幾何、微積分から数学基礎論まで概念的なところから数学とは何かを解説する。数学の学問としての面白さに触れることのできる本。
大学で数学を学ぶとあれよあれよという間に抽象化の度合いが高まっていく。新しい概念を手に入れると何とも言いようのない高揚感を感じることができる。その一旦を初学者にも何とか理解してもらいたい、そういう思いで本書は書かれているように思う。高揚感を感じるには一定の努力は必要だ。だから、教養としての数学云々…と帯にはあるが、この教養は、昨今、流行のお手軽で日々の生活に役立つような教養ではない。もっと重厚で役立たずでそれでいて理解するためには読者に努力を強いる教養だ。
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数学基礎論についての入門書的な本みたいです。
第3章の「証明論」はちょっと話が急すぎてついていけなかったですが、全般的にわかりやすく、分量も多くなく、読みやすい本だと思います。
■読もうと思った動機:
・ウィトゲンシュタインの「論考」を深く理解するうえで、論理学に関する知識をおさらいしたいと思い、タイトルをパッと見で買ってしまったので読むことにした。
・もともと数学基礎論に興味があった。
■読んだ結果・感想:
・個人的には、予想外の良書だった。お気に入りの本になりそう。
・デカルト座標系みたいな考え方で幾何学を代数的に考えることができるのは、幾何学の公理系と代数の公理系との間に同型写像が存 -
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はしがきにもあるように、古典確率論からコルモゴロフ以後の公理的な確率論への橋渡しとしての役割をもつ良い入門書です。
全体の議論は(最終章を除いて)有限加法的な事象に限定されています(一応最後の章に無限個の確率事象の和・共通部分への拡張が言及されており、ルベーグ積分や測度論への導入がされていますが)。より専門的な公理的確率論の本を求めているのであれば、この本の内容だと大分物足りなさを感じるかもしれません。未読ですが、同じちくま学芸文庫で出版されているコルモゴロフ『確率論の基礎概念』などをこの本の後に読むと良いかもしれませんが、そこまで買うならちゃんとした確率論の教科書を一冊買って読み込んだ方が -
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現代数学が何を目標としているのかが良く分からなかったが、本書のおかげで、数の構造の解明を目指しているということがようやくわかった。過去に集合論や群論の本を読んだものの、数学的な難しさとは別に、なぜそのような考えが必要なのか、そのようなことをするのかが理解できなかったが、集合や群という道具だけを見ていたからだった。
本書では一つずつ考え方を積み上げ、拡張するという構成となっている。また、記号の定義、説明もしっかりしているので、いきなり意味不明な式が出てくることもない。集合論は大体理解できたが群論に入るとさすがに難しく理解が追い付かない。しかし構造を定義しているということは分かるし、先行して定 -
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集合論を、かなり高度な情報も含めてコンパクトにまとめた入門書。集合論の入門書には、位相空間などの内容を含めたものも多いのだが、この本は、集合論だけで一冊の本にしている。カバーする範囲も広く、集合論だけにしぼってそれなりの深さで知りたい、という向きには定番的な入門書だと言えるだろう。例もそれなりにあり、基本的にはわかりやすい。
ただ、記述を簡潔にするあまり、作者にとって自明なところがこちらにはわからなかったりもするので、おそらく数学プロパーでない人にははっきり意味を測りかねるところがたまにある。こうしたところは気長に取り組む構えが必要でしょうねぇ。 -
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中学だか高校だかの数学で、確か集合論の超初歩は勉強した気がする。あの、Uみたいな、「カップ」というやつ。
さてこの本ではそういう基礎から入るが、瞬く間に私はつまずいた。「濃度」という用語が出てくるのだが、これが、「塩分濃度」などの一般的な「濃度」とはまったく違う意味で、なぜ何一つ共通点の無い表象に同じ日常語を用いるのか? と疑問になってしまった。良質な高校教師とかだったら、「これをどうして濃度と呼ぶかというと・・・」と説明してくれるにちがいないが、この本では割愛されていて、私の疑問は疑問のまま、もう真剣に読解を進める気が失せてしまった。
集合論は完全に数学の世界なので、どんどんどんどん話はやや -
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んー普通です。
が、大学の工学部では解析学は(当然のことながら)数学基礎論は学ばないため、証明論を学ぶ機会は少ない。
しかも、証明論を平易に語る書籍が少ないのだ。本書はその数少ない書籍なのだろう。
第1章は公理とは何か、第2章は数学の基礎(実証主義、直観主義、形式主義)、そして第3章が証明論である。
目標はGödelの不完全性定理なのだろうと読み進めていくと、自然数論を含まない公理(例えば群論)系に対する無矛盾性を示して終了。
証明方法は大学の教科書に載っている方法である。
自然数論を含む公理系に関してはGödelの不完全性定理から、無矛盾性及び完全性は否定されている。それをもって証明論