馬場光子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
梁塵秘抄口伝集巻第一(断簡)と巻第十にその全訳注。
後白河院自身が語る今様熱狂の半生、乙前と出会い師弟の契りを結び、
彼女こそが今様の正統な継承者であることに紙幅を割く。
傀儡女たちの今様談義・正統争いの様を彼女らの口吻も交え生き生きと描写。
乙前の病気見舞いで今様を披露するところから、一周忌に際して院女房の夢に
彼女が現れ院の今様を褒めるに至るまでの場面は感動的。
熊野・賀茂・厳島参詣などでの今様奉納に対する神仏の様々な形態の示現談、
今様の徳、今様往生論などが続き、今様修行は仏道修行でもあることが分かる。
そして文字に残せない口承文芸の悲しさや皆伝すべき弟子がいないことを歎く。
『亡か